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パリの吉本新喜劇:Mr.ノープロブレム


パリのオペラ地区で
ムール貝で有名なお店に行った時の事。

お店に入ると、
「ハロー!」
珍しく英語の挨拶で、
陽気なギャルソンが対応してくれた。
「予約されていますか。」

「いいえ、していないとダメですか。」

「ノープロブレム!
(No,problem.)」明るく笑って、テーブル迄案内してくれた。

隣のテーブルには、
中国人カップルがいて、
この店看板メニューのムール貝(ポテト付)と、
何かもう一皿食べていた。

メニューを見るより、
実物を見る方が確かだ。
彼らが注文したものはどうなのか聞いてみた。

「ここの売りの"ムール貝は美味しいよ。」
「パエリアも頼んだけど、それほどでもないわ。
二人ならムール貝だけで十分よ。」と、
親切にアドバイスをもらった。

ムール貝ココット蒸(ポテト付)
二人分

さっきの陽気なギャルソンが注文を聞きに来た。

まず飲み物から。
私:「彼はビールで私は白ワイン。ワインはグラスでもいいですか。」

ギャルソン:「ノープロブレム。」

私:「二人だけど、注文は
ムール貝だけでもいいですか。」
中国人アドバイスに従った。

ギャルソン:「ノープロブレム。」
そうにっこり笑って厨房の方へ消えて行った。

何を言っても、
「ノープロブレム」の連発だったので、
私は勝手に彼を
「Mr.ノープロブレム」と
名付けた。

料理が運ばれた。
結構な量だ。
中国人カップルにお礼を言う。

美味しくいただいてるうちに、
飲み物のおかわりが欲しくなった。

ガイドブックによると、
フランスでは、
注文をする時は、日本の様に声をかけて呼んだりしてはいけないそうだ。

それを守ってテーブルに来てくれるのをじっと待つ。

"こっちを向いてくれないかな。"
と、その時目が合った。

「Mr.ノープロブレム!」
私は思わず声をかけてしまった。

彼は、
ちょっとおどける様に、
テーブル迄来てくれた。

「はい、はい、私の事かな?
いいね。その名前。
ありがとう。」とにっこり。

お気に召していただけた様。

無事にワインのおかわりを注文し、また食事を楽しんだ。

会計時は、
たまたま近くにいたので、
もう当たり前の様に、
「Mr.ノープロブレム!」と声をかけた。

彼はふふっと笑って、
「そうです。
私はMr.ノープロブレムですよ。問題な〜い。」と、
まるでラッパーのようにおどけた。

そして、
旦那サンに向かって、
「あなたはMr.プロブレム、
問題有〜る。」
と返して来た。

そう来たか。
さあ、どう返そうか。
こっちも負けてはいられない。

私はすかさず、
準備してあったチップを渡した。

「ああ、それなら
Mr.ノープロブレムね!」

三人で大笑い。

「ここはパリの吉本新喜劇か。」と、
ツッコミ入れて、
コントみたいな時間を過ごした。

「ノープロブレム」の一言だけで、盛り上がったパリのひと時だった。


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