「世界のミクニ」 と 「上京区のニシヤマ」
2013年の晩秋、滋賀県の「蔓ききょう」さんがイベントをされるとのことで、出てもらえないかと西澤さんご夫妻からお声がけをいただいた。
その企画がなんと、三國さんとのコラボだという。
無論、ぼくは自分の耳を疑った。
西澤姐さんのお店では、その人脈を活かし高名な料理人さんを招かれこういったイベントをよくされていたので、三國さんの登場はまだわかる。
ところがコラボの相手がぼくとは。冗談かとも思ったけれど、西澤さんご夫妻は本気も本気である。
それにしてもよくこの企画で三國さんにご承諾いただけたなと驚き、その寛大な心に感銘を受けると同時にぼくは、「みんな、どうかしてるぜ」と思わずにはいられなかった。
きっと西澤さんご夫妻がぼくを驚かせ、喜ばそうとお気遣いをいただいたとしか思えない。これほど光栄なご依頼をいただいておきながら、お断りする理由が「恐縮至極で」では却って申し訳ないと思ったぼくは、深い感謝とともに快諾した。
「世界のミクニ」 と 「上京区のニシヤマ」かぁ、と深い感慨に打たれる。
というか、「オマエ、そんな分不相応な依頼をよく引き受けたな」という向きもあろう。そう思われるのも当然である。ぼく自身もちろん憚られる気持ちはあったし、「引き受けて本当に大丈夫なのか!?オレ」と、忙しなく何度も頭に浮かんでは消えた。
普段の仕事と違い、特にこういったものはかなりの緊張感を伴う。
失敗することだってあるかもしれない。それでも萎縮せずやった方がいいとぼくが考えるのは、必ずそれが何ものにも変え難い経験を得ることなると知っているから。
猪木さんがよく引用されていた「危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし・・・」っていうあれだな。
こういった機会に恵まれた際、大切なのはそれを「おもしろがる」ことだと思っている。これもその人の資質や能力によるけれど、かく言うぼくは、そんなもの皆無だったと言っていい。それもお相手が畏敬の念を抱く三國さんとなれば尚更のこと。そんな資質や能力を持たないぼくが「おもしろがる」ためには、つまるところ” 慣れ”しかない。
仕事などで多くの人前に立つことのある方ならおわかりいただけると思うけれど、場数や経験による”慣れ”というは相当大きい。
先述の通り、幸いにもぼくはこのイベント以前にプライベートでの会食と、結婚式で三國さんと仕事をご一緒させていただく機会を得た。そのおかげで、三國さんとのコラボという僭越さを重々承知しながら、ぼくにはイベントを楽しめる予感があった。そしてその ”慣れ” をぼくが経験できたのも、それ以前に機会をつくってくださった西澤さんご夫妻のおかげなのである。
ありがとうございます。
イベント当日の担当は三國さんが料理を、ぼくがアミューズ(先付け)と料理ごとに違うパンを。最後のデザートは西澤姐さんとぼくが一品ずつ作り、お茶菓子はオテル・ドゥ・ミクニさんから送られてくる3種類のマカロンということになった。
つづく
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