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蝉が鳴いていない


床に転がる蝉の死骸を踏み潰してしまった時に
人で良かったと思ってしまう自分がいて
心の小ささに反吐が出る

人の事情を全て悟り、受け入れるようにして
それを優しさと偽り、考えないようにして
果たして僕は大人になったと言えるのか

そもそも大人ってなんだ
年下に煙たがられ、偉い人に怒られて、
傘はささないほうがいいくらいの小雨に打たれながら
温暖化に加担する犯罪者の部屋に戻り
コンビニ弁当を発泡酒で流し込む
この生活は誰の権利なのか

壊れないように、優しくするのと
離さないように、冷たくするのと
どっちもあまり変わらない気がして、
自分のことが嫌になる

また悪事を働いて、壊してしまうのか
それでも大事なものは、変わらない気がして、
別にいいやって思えてしまう

間取りが見えない暗い部屋
朝の音と寝息
寂しさだけを寄せ合って朝になる

そういえばもう、蝉が鳴いてない


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