有り余る
大切に思えることは
いつも両手に有り余る
どうでも良く思えることは
いつも心に有り余る
素敵だと思えることは
風の中に季節を感じ取り
好きだったお店が潰れたり
先が気になる漫画が打ち切りになったり
失ったこととの境目に有り余る
人は、なくしたものに想いが有り余る
そばにあるものには、
どうしても心を預けられない
桜が咲くのが遅かったり
暑い日がまとわりついたり
紅が短かったり
雪が降らなかったり
未来を過去に期待する
人が思い付く事は、あまりに多く
それに十分な容量を持たない
だから崩れ、壊れ、剥がれ落ちるはずなのに
重くドス黒い心にある球体が
世界の中心になってしまうほど大きくなる
どこまでも果てしなく広がる海に
どこまでも果てしなく広がる空に
似たように憧れて
似たように美しいはずの
どこまでもみすぼらしく縮まる心が
邪魔なはずなのに
思い付く事は全て心に有り余る
頭でもなく、胸でもなく、急所でもない
時に口に、時に足元に、時に手のひらに
上手く隠れてしまうのがじれったく
いつも飼い慣らそうとするが
1人では無理で
でもこの心の形も場所も
1人しかわからない