見出し画像

ライター日記/10月28日~11月3日

10月28日:
レギュラー仕事を一本仕上げて送付。スペシャルな内容だったので、それに沿って原稿もちょっとだけアレンジ。

高円寺のブランチ・カフェ、funny mealで開催されている大橋裕之監督の「変哲の竜」、そろそろ上映が終わってしまうということで、ごはんも兼ねて訪問。なんだかんだでmmmライブ以来で久々。結局食べたのはアップルパイ。ぎっしりと詰まったりんごから幸せが漂いますね。コーヒーも美味しい。

さて、「変哲の竜」ですが、記憶と気配、その中に潜む懐かしさについて思いを寄せる15分の短編ながら、大橋イズムがしっかりと根づいた作品に。ゆるやかだけどじつはテンポが良く、素晴らしい俳優陣(豪華!)による会話劇としての面白さもあり、幕引きにはほんわか余韻を残す。
シチュエーションは公園、2階建ての友達の家、焼き鳥屋という限定されたものだけど、忘れていた淡い記憶や風景をくすぐっていくセリフのチョイスはさすが。終盤、主人公があるものを取り出そうとし、思い直して結局ポケットにしまうシーンがあるのだけど、その「何気ない」振る舞いにこそ面白さが宿っている。大橋さんの漫画っていつだってそうだけど、突拍子もない出来事の前後や周辺にある何気なさに無二のおかしみが感じられて好きなのだ。
それは小ネタっぽくも見えるのだけど、独立した内輪ネタやカルチャーマウントにならず、その風景やシーンの中でなくてはならないものとして昇華させているところが、やはり大橋さんの作家としての特性であり魅力と言えるのではないか。
脚本集も購入し、仕事場へ。別件の仕事をしなやかに終わらせ、帰宅。

10月29日:
朝からリモート会議。対策を練る。
昼食を食べつつ、原稿の修正に取り組む。

雨が強くなる中、夜は恵比寿LIQUIDROOMへ。
この日は ライブナタリーpresents
「サニーデイ・サービス×betcover!!」へ。
チケットは見事ソールドアウト。
先攻は予想に反してサニーデイ。近年のサニーデイは若いファンも増え、しかもそれが「春の風」「コンビニのコーヒー」「風船讃歌」といった2020年以降の新しい楽曲を待ちわびているのが最高に良い。伝説でもカルトでもなく、現役として迎え入れられる30年戦士。確かにそのボルテージは破格だ。
そこに「さよなら!街の恋人たち」や「魔法」「白い恋人」など、解散前の名曲たちも散りばめていく。そして「桜SuperLove」に象徴されるように、サニーデイはいつだって不在を歌っている。その不在とライブの中で向き合ったり、この瞬間だけは強引にでも埋めようとしたりする姿が美しい。「セツナ」のアウトロにおけるカオスに、今日もまた気持ちよく飲み込まれた。

ただ、「白い恋人」がはじまった瞬間、恋人の腰に手を回しはじめた目の前のカップルの男! ここは家ではない

後半はbetcover!!。
この日はメインギター不在、サックスありの編成。
安易に拍手する隙すら与えない、性急で切迫感の塊たるサウンドは不変。ムード歌謡をリファレンスとした怪しげなメロウさに、ハードコアの肉体性とダイナミズムを組み合わせるという発明を、
発明で終わらせない柳瀬二郎の存在感。
生活するうえでの苦みを纏った、それなのに心が洗われるような、清濁併せ呑む歌心の世界がある。言うなれば生と死のまどろみの果て。
特に、
「火祭りの踊り」〜「バーチャルセックス」のつなぎ、
「フラメンコ」の“地獄の門が開く”、のフレーズ終わりに放たれたギラついた照明が印象的な夜だった。

LIQUIDROOMを出たらば、そこには高校生カップルが。このライブをチョイスする素晴らしさに感心する。これだよ、これ。


自宅に戻り、「いろはに千鳥」久々の武将様回を見る。この牛歩のようにストーリーが進んでいかない感じ、懐かしさすらある。

10月30日:
お昼から打ち合わせ。デザイナーさんも同行。
いつもながら泰然自若としていてありがたい。
11月の計画を立てつつ、近々の案件から取り掛かる。

この日は坂本真綾さんのロングインタビューが掲載されたan・anが発売。新曲のリリースタイミングですが、ご本人の創作に迫った内容になったのでは思います。撮り下ろしもあり。写真は持田薫さん。
WEBでも読めるようになりました。


Who's Hot?というモノクロ枠3ページです

夕方、友人の編集者から、ある取材が正式決定したので、ライブを見に行ってくれということで、急遽豊洲PITに。めくるめく展開、難解なリズムや構成をあっさりと乗りこなしてみせる演奏力、そしてパワフルなボーカル。不思議な音楽だが、3000人近いオーディエンスを熱狂させるエモーションが宿っていて興奮した。

10月31日:
この日も打ち合わせに向けた資料作り。構成を作り直すのは一から作るよりも簡単ではあるが、細部の調整にはどうしても時間がかかる。原稿のチェックバックを二ヶ所ほど入れて、いざ打ち合わせに。
4時間ほどの打ち合わせで洗い出された箇所を修正する作業に。なかなか難易度高いけど頑張ろう。軽くごはんをたべ、その後近所のレコードバーに。マスターといろいろ話せて良かった。

11月1日:
レイアウトの修正作業を進めながら、ロングスパン仕事も進める。もうちょとスムーズに行くと良いのだが、そうはいきませんね。
事務所から自宅に戻り、レビュー仕事を一本終えて提出。
年明けにあるロキノンソニック、一応予定は空けていたが、シガレッツアフターセックスの出演が決まったので2日間行くことに。Wednesday、セイントビンセント、プライマル、パルプ、デスキャブなど、ロックバンド勢に特化したフェスとしては、良い塩梅のメンツになったと思う。

11月2日:
夕方から楽しみにしていた取材。大雨だし、取材がはじまるまでの間になかなかネガティブなニュースが届いたりしたものの、なんとか取材&撮影が完了。反省点は多々あるが、とりあえず原稿にはできそうでホッとする。こういう取材ができるのはホントありがたいよねー。別媒体の人とも軽く情報交換できて、貴重な時間だった。自宅に戻って妻とごはんを食べ、事務仕事をいろいろ終わらせ、ちょっとだけ仕事をして就寝。

11月3日:
早起きして荒川に向かう。この日は、荒川ロックゲートで行われる『Arv100(アーヴ・ワンハンドレッド)』にシンバラーのひとりとして参加。
東大島の駅で、同じくシンバラーとして参加するおとぼけビ~バ~のよしえさん、アニメーターの浅野さんと合流し、BORE世代のBORE会話を交わしながら(よしえさんは年下だけど)、荒川沿いを12~13分程度歩いて会場まで。昨日の雨天とは打って変わって快晴で本当に良かった。
現地に到着後、シンバルと事前購入していたスティックを受け取り、リハーサルに。参加者は事前にA~Dグループに振り分けられており、一緒に行った妻も含む4人は全員別のグループに。私はAグループに参加。ズブの素人なので緊張するも、AグループのリーダーがLOLOET、花園ディスタンスのhamachiさんだったので、安心する(ギターにもLOLOET、ZIONの吉澤さんが参加していた)。もしかしたら偶然にフジロックで会って以来かも?
11時からはリハーサル。参加者には開催前から演奏前の映像が送られてきていたが、初の実践。クレーンで吊り上げられた∈Y∋さん(なんとフルフェイス仕様!)の指揮(ハンドサイン)に合わせ演奏する。なかなか思い通りにはいかないものの、サインに応じて強弱や叩き方を変えたりするのが楽しい。そして11月なのに日差しが眩しい。
休憩後、本番へ。思いの外オーディエンスも増えてライブっぽい雰囲気に。本番は40分だったけれど指揮を見ながら懸命に叩いているとあっという間。明らかに轟音のギターのみならず、途中、荒川側のゲートが開いて屋形船(with和田晋侍)が入ってきたのにはテンションが上がったが、それに見とれている暇もあまりなかった(笑)。
後半になるとガンガン叩いて良いフリータイムもあり、力いっぱい振り下ろすクラッシュにも遠慮がなくなっていって、増していく解放感! ∈Y∋さんの位置が上がるたびに司祭感も増すのだが、アート感と初期衝動、そしてディテールへのこだわりといった個別に存在するものが、太陽の日差しと荒川の空気の中で綯い交ぜになって「音楽」へ帰結する、この流れこそ重要だし、惹きつけられるものだと思った。音響のNancyもお疲れ様! 
しかし、コンセプトやシチュエーションも含めてなかなか得難い経験だった。この壮大で無二のプロジェクトを成立させる∈Y∋さん以下、周囲の人たちの実行力は素晴らしい。

荒川ロックゲート会場
供与されたシンバル
∈Y∋(体幹の良さを感じる)
シンバルリーダー・はまちさん。明るい


打ち上げも兼ねて新小岩で飲み、その後みんなとは解散し、妻と渋谷へ。荒川で真っ赤に焼けた顔のまま、面影ラッキホール『メロ』再現ライブに。TレコードのIさんや、旧知のSさんとも再会できて嬉しい。
面影のライブは、O.L.H.名義での下北沢Garden「天国まであと数回の夜」以来。今回は『メロ』再現ライブということで、今は音楽以外の仕事に就いている人も含めて極力、30年前と同じメンバーを揃えたとのこと(SNSで所在を探していた女性コーラス隊は結局見つからなかったそうです笑)。ギター担当、Wash?の大さん(ラブリーサマーちゃんバンドでもおなじみ)ですら28年ぶりの参加!
メジャーデビュー以降やO.L.H.以降も演奏されている楽曲たちも、アレンジが『メロ』仕様に先祖返り。ホーン・セクションよりもギターとバンド感が全面に出る、破壊的でガッツがある演奏が印象に残った。aCKyはというと、変わらぬピンクの出で立ちとねっとりとした話術で責めまくり(痩せなかったからロリポップ・ソニックをクビになった話とか! とはいえ、オザケン「LIFE」再現ライブが、今回のライブに繋がったというのはあながち嘘じゃなさそう)、歌い出せば見事な妖艶ボーカルを響かせる。電話での小芝居付き「ピロートークタガログ語」、ナマで聴くのは二回目の「ラブボランティア」あたりはやっぱり良かったなー。
アンコールでは「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」「俺のせいで甲子園に行けなかった」と「好きな男の名前腕にコンパスの針で書いた」もやって終了。それでも鳴り止まぬアンコールで出てきたaCKyが挨拶に。
亡くなったバンドメンバーのことをMCで語るaCKyが、「ここ泣くところだから」と冗談まじりで言うんだけど、それがなんだか切なかった。ただ、久々にライブを観られて感動もした。今回のTシャツにイラストを提供した根本敬の名言を出すまでもなく、やれる時にやるしかないんだよな。

常に脱ぐのがaCKyスタイル
CUT UP STUDIO超久々だった

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集