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暮代 樹
2018年11月3日 17:25
「やっぱり志羽家は姉さんが後を継げば良いんだ」「それは出来ないんだって、何度も話したでしょう」「わかってるけどさ……」 志羽千鶴と志羽秀一、この姉弟のこのやり取りを飛代子が耳にするのは三度目ぐらいになる。 夏季休暇に入ってすぐ発った旅の途中で、飛代子は従姉妹の霧子、盟友の安奈と共にこの熊本の志羽家に数日逗留させてもらう事になった。 その数日の間に言葉とニュアンスを少々変えながらも繰り返し
2018年11月30日 05:19
「猿(ましら)家は『大坂の陣』ば落ち延びた西軍ん方の“忍者”ん家系だ」 猿飛代子が一人旅に発つ夏の日、柄にもなく見送りに来た父がそう言った。 飛代子はそんな荒唐無稽な話を信じるも信じないもなく、どう受け止めていいか困惑するばかりだった。 そんな娘に父は続けて言った。「猿飛佐助って名前ば聞いたことあろうが、お前はそん子孫たい」と。 馬鹿げているとこの時、一笑に付せたらどんなにか楽だったろう
2018年11月30日 05:12
慶長二十年五月七日。世に言う大坂夏の陣。ところは大坂城天守閣。 その最上階で真田大助幸昌は豊臣軍総大将、秀頼の傍に付き従っていた。 本当は天王寺で父幸村と共に最後まで戦いたかった。だが、父から秀頼様をお護りしろと命を受け、大助は今ここにいる。 父幸村は退却中に茶臼山で戦死したととうに報せがあった。 その秀頼の傍らには千姫がいる。いずれも死装束である。姫の侍女が二名従っている以外、他の近従