「原稿用紙一枚分の物語」#13 大人になること
「納得できません!」
「だったら営業成績上げてから言え!」
食い下がるオレに、ついに部長がキレた。
なおも反論しようとすると、
同期のマサトが割って入ってオレをその場から連れ出した。
人気がいないところまで来ると、
「大手のほとんどが同じことをやってるんだ。
お前もちょっとは大人になれよ」
マサトはそう言った。
なおも、
「汚れなく大人になんかなれないよ」
そうオレのためを思って言ってくれている友人のために、
“だったら大人になんかならなくていい!”という言葉を何とか飲み込んだ。
それからは、精一杯大人になろうと努力した。
愛想笑いも覚えた。
お世辞も少しずつ言えるようになった。
言わなくていいことを隠しても、何とか自然体でいられるようになった。
そして、それに伴って営業成績も徐々に上がってきた。
そんな大人の階段を上りながら半年が経った頃、
オレは壊れた。