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友人を見送った、11月14日
11月13日の午前10時。
いつものように慌ただしい午前中を過ごしていると、1通のLINEが届きました。
それは、学生時代の同級生・Aの訃報でした。
一瞬、夢でも見ているのかと思いました。
Aとは学校を卒業してから一度も会っていませんでした。
ですが、数年前に同級生と結婚して、お子さんにも恵まれたという話を聞き、家族3人幸せに暮らしているんだろうな、と思っていました。
確かお子さんは、うちの息子と歳が近いはず。
久々に会えたら、今度はママ同士で色々と共感できることもあるんだろうな。
Aは関西に住んでいるからなかなか会えないけど、いつか会えたらいいなぁ。
いちど連絡、してみようかなぁ。
そんなことを考えていたのに……。
もうにどと、Aに会えないということ?
たまたま夫の仕事が連休だったので、息子を預けて、お通夜に参列できることになりました。
慌ただしく準備を始めたわたしは、必要なものを買い出すため、近所のショッピングモールへ。
買い物をしながらも、心の中ではAへの問いかけが止まりませんでした。
A、なんで?
なんでなの?
***
Aとは同じクラスで、帰り道の方向が一緒だったので、学校生活も放課後も、よく話した記憶があります。
本が好きだったA。
休み時間は食堂で、膝の上に本を開いていた姿をよく覚えています。
わたしも読書が大好きだったので、よく本の話をしました。
無精なわたしが、本をさかさに開いたままでいると「本が傷む!やめなさい!」とよく叱られました。
クールぶっていましたが、本当は恥ずかしがり屋で、時たま、はにかみ笑いをしているのが可愛かった。
辛辣だけど、嘘をつかない。
時々ふっ、と軽やかな優しさをくれる。
そんな子です。
***
会場に着き読経を聴きながらも、ぐるぐると「?」が回り続けていました。
祭壇には微笑むAの写真が飾られていて、いまにも話しかけてくれそうで。
参列者のすすり泣きも、御住職の説法も、みんなみんな信じられない。
「いや、嘘でしょ?Aが?」
Aが逝ってしまったという実感よりも、その事実の理不尽さが買ってしまい、悔しさに涙が滲み出てきました。
お通夜が終わり、Aのお顔を見せてもらうと、綺麗な顔をしたAの姿が。
「A、来たよ。会えたね、一体どうしちゃったの?」
と、棺を撫でることしかできませんでした。
喪主であるAの夫と言葉を交わし、その腕に抱かれている幼い息子さん。
Aの夫は気丈に振る舞っていました。その姿は、とてもとても立派でした。
***
お通夜の後、精進落としが行われました。
Aの人徳でしょう、お通夜にはたくさんの同級生が駆けつけ、はからずも同窓会のような雰囲気に。
その中には、ずっと音信不通になっていた友人の姿が。
彼女は泣きながら「ずっと連絡してなくてごめんなさい」と言ってくれました。
その手が震えていて、思わず手を取り合いました。
彼女とは帰る道すがら、会えなかった時間を埋めるように、たくさんの話をしました。
Aがふたたび引き合わせてくれたのです。
**
集まった同級生たちとは、全員と話をしました。
みんないい意味で変わっていなくて、それぞれに今を必死で生きていて、お通夜の席だというのに、すっかり元気をもらってしまいました。
そしてAの夫と話したり、ご家族が一緒に過ごしていらっしゃる様子を見ていると「Aは彼と結婚し、家族を作って、本当に幸せな日々を過ごしていたんだ」と感じました。
と同時に、Aと過ごした日々は、しっかりとわたしの中に根付いていることにも気がついたのです。
わたしたちの中でAは生きている。
だから、Aの思い出を抱えて、しっかりと生きていこう、と。
***
「そのうち会いたいな」
「会いたいけど、今は忙しいし、また今度」
そんなことを考えているうちに、もうにどと会えなくなってしまうことは本当にあるんだ、と痛感しています。
意地を張って会わないでいる人、会うのを先延ばしにしている人がいたら、そんなことはしないで、会いたい時に会わなくちゃ。
そしてAの旅立ちはもうひとつ、大切なことを教えてくれました。
それは「生きていればなんとかなる」ということ。
日々生きている中で、いくつもの悩みはあります。
特に子育てが始まってからは、目先の小さな不安や悩み、問題に押し潰されそうになることも多かったです。
だけど、わたしは生きている。
当たり前のように今日を迎えている。
だから生きている限り、ぜったいになんとかなる。
だって、生きているんだから。
A、あなたのことを書いたら、あなたはちょっと恥ずかしがるかな。
「余計なことしないでよ」って怒られるかも。
でもさ、あなたに教わったことを書くことが、あなたが生きていた証になるって思うんだ。
わたしには書くことしかできないけれど、それがわたしなりの、あなたを悼む方法なんだ。
だから、許してね。
面倒見の良いAはきっと、呆れたように肩をすくめながら、あのハスキーボイスで言うのでしょう。
「ほんまに、しゃあない奴やなぁ」って。
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