愛だの恋だの、ではないのだよ
孤独感と不安が止まらないので久しぶりに書き殴る。
ついに休職した。2週間前のこと。
たった2年。独身で自分のために使える時間が毎日24時間あって、
その中の毎日12時間前後くらいを費やす。
ただそれだけのことが、気がつけば、とても苦痛になっていた。
もともとは、自分の希望した仕事だった。第一希望の会社だった。
誰もが知っている大手の出版社ってわけじゃないけれど、私にとっては十分すぎるくらいすごい人たちが働いている会社で、とてもたくさんの素敵なサービス・キャンペーンなどを企画している会社だった。この会社の社員として働いていることは自分にとってとても誇りだったし、早くこの会社の一員として一人前になりたい気持ちでいっぱいだった。社長に認められたい気持ちもあったし、この会社である程度「できる社員」になれば自分自身の生きる力にも自信がつく。人生がより豊かになる。そう思っていた。担当している一つひとつの仕事はどれも面白かったし、28歳という社会人としてはまだまだ未熟な自分には十分すぎるくらいの仕事に日々取り組ませてもらっていた。とても貴重な経験を積める環境だったし、やりたくてもできない人がたくさんいる仕事を私はさせてもらっていたと思う。これは大げさじゃなく、本当にそうだと思う。でも、私は気がつけば仕事が「辛いこと」になっていて、結局逃げるようにして「休職」してしまった。
なんでこうなったんだろう。理由は色々あると思う。まず、私のキャラクターはうちの会社では良くも悪くも浮いていた。うちの社員はクールな人が多い。感情的なコミュニーケーションを積極的に取ろうとする人はほぼいない。だからもちろん、感情のまま怒鳴られるとかそういうことはないし、そういう意味ではすごく建設的な会話ができる人たちだった。しかし私にとってのそれらは多分「建設的すぎ」だったように思う。必要最低限の言葉。次から次へと作業的に振られていく仕事。評価制度が特に明確にあるわけではないから、とにかく業務を淡々とこなす日々。ある一定のクオリティを保つことができなければ外には出せないから、先輩や社長からのダメ出しはある。だが特に褒められるということはない。褒められたかったという話ではないのだけれど、そういう馴れ合いのような文化が一切ないこの会社の中で私は、誰よりも素直で純粋な性格(本当の私がそうであるかは置いておいても、そのようにしか振舞うことができなかった)であったために、気がつけば先輩からはどんどん適当に扱われてしまうようになった。特に言い返したり、仕事を闇雲に断ることをしないし、なんとか納期までには何かしらの形で返していたから、仕事を振りやすかったのかもしれない。どんな言葉を使って進めても、ボールを返していた。ただそれが良くなかった?のか、あまり大事にされなくなった。「考える力がないから、人一倍考えろ」「あなたの言葉は信用できないから行動で示せ」「君の経歴と似たような人を他にも見てきたが、その中で優秀な編集者になった人を僕は見たことがない」「単刀直入に言えば、全体的にダサいと思った」などと、なんというか直球ストレートな言葉を日々浴びるようになっていった。それらの言葉に慣れてはいったものの、自分でも気がつかないうちに精神的にどんどんと削られていった。「ああ、私は会社のお荷物なんだ」と次第に思うようになった。他の社員に比べれば案件数は少ない。けれども日々の残業がなくなることはなかった。休日の稼働も多々あった。有給はタイミングの良い時にしか取れないし、有給の日が本当の意味での「休み」だったことはほぼ無かった。
そのうち、仕事のことしか考えられなくなった。「あれやってない」「これやってない」と頭の片隅で常に考え続ける。頭が休まるタイミングがなかった。そこに重ねて、先輩や社長から「この企画、全然面白くないね」と連絡が入る。ああ企画も再考しなきゃ。でもあの原稿も確認して、あのメールも返さないと。私はもともと、全くマルチタスク型の人間ではない。基本的にひとつのことにしか集中できない性格だ。「頑張らないと」と気合を入れないと、仕事ができない。頭が回らない。
社長や先輩とのコミュニケーションレス(最後の方は、とにかく「怖い」気持ちが強くなっていった)、業務内容の不和、業務量の多さ、慢性的なストレス、将来への漠然とした不安(仕事内容・金銭面など)が日々膨れ上がり、気がつけば心を病んでしまっていた。自尊心が底をついた。その自覚すらあまり無かったが、人からの勧めで「休職」の選択をとった。これからのことは、何も考えられていない。
結局私は、何者なんだろう。大学生の頃から、漠然と、編集者という仕事に興味と憧れがあった。自分に向いているかどうかは正直あまり自信がなかったけれど、世の中にある自分が知っている仕事の中で、最も面白い仕事だと思っていた。今もその気持ちは変わっていない。だから、その仕事に就けた時は本当に嬉しかったし、しばらくは楽しい気持ちしかなかった。時間外の残業も気にならなかったし、とにかく目の前で進んでいることにすべてワクワクした気持ちがあった。
取材をする。原稿を書く。企画を作る。クライアントへ確認をする。社内や社外の制作チームとの打ち合わせ。諸々の進行管理。予算管理。抱えているすべてのタスク管理。さまざまな仕事を並行させて進めることも楽しかったし、毎日違う仕事をするのも飽き性な自分には合っていたように思う。
ストレスを感じていた部分としては、第一に社内の人間関係。第二に、日々異なる仕事が降ってくることに対する不安感、重ねて毎日のタイトなスケジュールにあったと思う。基本的に同じ仕事をしている人員は社内で誰もおらず、自分が持っている仕事のステータスは自分のみぞ知る。その中で毎日、「今日までにやらなければいけないこと」が必ずある。そしてさらに言えば、その「やらなければいけないこと」は、社長が見て、「面白い」というラインに乗っているものでなければならない。そうでなければ1からやり直しとなる。その確認タイミングは、社長の気まぐれによるものだった。
人間性を否定されているような感覚があった。もちろん、そんな意地悪心は誰も意図していなかったと思う。この会社やそれぞれの案件に起因していることもたくさんあるけれど、すべてを何かのせいとして「自分は何も悪くない」と開き直ることもきっと違う。私がこのようになってしまったことの半分は、確かに外部的要因にある。ただ、もう半分はきっと自分自身のせいだ。後者に対して、きちんと向き合う必要がある。でないと、これからの人生がものすごく大変になる。
私はおそらく、誰かに嫌われることをとにかく恐れている。また、「自分はユニークではない」という自覚がある。だからこそ、先輩には基本的に合わせるし、突飛押しのないアイデアは出さない。それは社会人をする上で概ね良いこととして機能する。でも、すべてのことに対してイエスマンになるのは、結果として自分の首をしめることになる。また、最初は難しいにしても、一番自分の意見が言いやすいたった1人の先輩に対してだけでもいいから、やっぱり自分の本音は言うべきだ。今の会社に対してであれば、「勤務時間はやはりどうにかして記録する仕組みを作って欲しい」と伝えるべきであったし、「土日の稼働が発生した場合は、必ず翌週休暇を取れるよう仕組み化して欲しい」「有給は有給として、極力緊急の連絡以外は入れないで欲しい」などのようなことも伝えるべきだった。仕事の性質上仕方がない、自分はまだ年次が浅く勉強中の身だから仕方がない、と思っていたけれど、言葉にしないまま在籍し続けることは組織のためにもならず、かつ自分もその悪循環に加担している側になってしまう。とにかく伝える。伝えるところまでが1人の社員ができること。そうした上で会社が変わらない場合は、会社の責任になる。「ただの会社員」だからこそ、まず声を上げるべきだった。私をダメにしたのは、私自身のせいでもある。
会社の環境。仕事のうけかた。社員の仕事の仕方。お給料。これらのことは、雇われる上でとても大事なこと。2回の転職経験でわかったつもりになっていたが、「夢」とか「憧れ」のようなものに現を抜かして、一番大事な大前提の部分を十分に考慮できていなかった。入社時、見事に社長の言いなりで諸条件を決め、急ぐように今の会社の一員になったことは私の判断ミスだった。入社を決めるにしても、もっと慎重に、自分が「?」と思ったことは言葉にして、すべて確認しておくべきだった。最終的に、自分のことは自分でしか守れないのだから。社会の常識、年功序列、経験値の少なさ。色々なことがある。けれど、自分の人生だ。私が考えて、私が決める権利がある。そこに偉い・偉くないは存在しない。私の人生の責任は、私にしか取れない。会社にどれだけお金があり知名度があり権威があり、どれだけ有能な人材が働いていたとしても、それは私自身がへりくだる理由にはならない。私は確かに平和主義だ。万人とできれば仲良くしたい。ただ、仕事となるときっと考えを改めた方がいい。誰もが友達を作るために仕事をするわけではない。さまざまな対価が発生する。私の時間や体力や経験値は、私がどんな場所でどんな仕事をするかによって大きく左右される。そのことを、より自覚した上で、前に進む必要がある。
朝になってきた。ここまで書くと少しだけ、心が落ち着いてきたかもしれない。これから私は、どうするのか。また会社員をやるのか、それともフリーターやニートになるのか、何もわからない。これまではなぜか東京勤務にこだわっていたが、その気持ちも今となっては薄い。28歳というタイミングでこれからの人生を見直すとすると「ただの仕事」としては考えられない。どこで何をどのように誰とするのか。それによって、人生のパートナーがきっと変わる。まあ、変わらないかもしれないけど。だけども、今までよりは少しばかり、慎重に決めていきたい気持ちがある。
そもそも、今の会社を辞めるのか続けるのかについても、定かではない。いや、まあでも、この記事に書いたことが私の正直な気持ちであり現在自分が置かれている状況のすべてであるから、きっと辞めることになるんだろう。2年前の自分が選んだ「最上」の職場を自ら手放すことは、過去の自分に対して少々罪悪感のあることになるけれど、まあそれも人生か。たった2年でも、人の気持ちは変わる。私の選択を側からみた人はみんな「自分に甘い」「辛抱強さがない」と思うかもしれないけど、そうは言ったって私がそう思っちゃったんだから。仕方がない。別にただ、会社を辞めるだけ。親には少々迷惑をかけることになるかもしれないけれど、まあ死ぬわけじゃないし、もしかしたら5年後には億万長者になるかもしれないから、その時にたっぷりと親孝行すればいいよね(お母さん、いつもごめんなさい)。
と、まあそんな感じで、私は2年続けた編集プロダクションを辞める。自分の性格や自分なりの幸せの形についてゆっくりと整理して考えながら、これからのことについてはゆっくり決めていく。ここまで走り続けたぶん、ゆっくりいくぞ。over the sun的な「負けへんで」の精神で。よーし。やっと少しモヤモヤが晴れてきたので、寝ます。おやすみなさい。