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【インタビュー02】アメリアジャポニカ | 子供の着物専門のブランドを立ち上げた「和裁士」の覚悟

itonowaの入居者インタビュー企画のお2人目は、shop1のアメリアジャポニカです。少し長いですが是非ご覧いただければと思います。現在、新型コロナウイルスの影響で、入居者のみんなは「休業」もしくは「営業縮小」せざるを得ない状況が続いていますが、より良いお店にするためにの時間捉え、通常の営業に戻るまで、力を合わせて何とか乗り切ります!

・はじめに

itonowa管理人がイトノワを作ろうと考え始めていた頃から、どうしても“着物”のお店が必要だと考えていました。かと言って当てがある訳でもなく、ただただweb検索で調べる毎日。そんな感じで店探しを始めましたが、しばらくして目に留まったのが「アメリアジャポニカ」

ポップだけどレトロな雰囲気もある子供の着物に僕は目を奪われました。確かに着物のお店を探してはいたけれど、まさか「子供の着物専門」というカテゴリーに巡り合うなんて想像もしていなかった。それで居ても立っても居られず、コンタクトを取らせてもらったのを覚えています。

あれからもう5年ぐらい。いま思うと、よくぞこんな人/こんなお店を見つけて来られたなぁと。僕が言うのも何なのですが、それぐらい「彼女」も「アメリアジャポニカ」も順調に歩まれています。

今回のインタビューでは、itonowaを選んでくれたきっかけや、和裁士の道を選んだ理由も聞いてみたいと思います。


・「アメリアジャポニカ」について

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――:はじめに「アメリアジャポニカ」のことを教えてください。

アメリアジャポニカは「普段でも着たくなるようなかわいい着物」をコンセプトにした子供の着物の企画・制作・販売・レンタルの着物ブランドです。普段着のお着物から産着、七五三などの特別な装いの着物をご用意しています。

――:では、いきなりだけど「起業」のきっかけは、何だったの?

えっ、めっちゃ前の話しから聞くじゃないですかー?やだー(笑)

――:でも、そこは聞いておかないと、仕事のお話しにつながっていかないから。ごめん、協力して。

(ちょっと照れた感じで)まぁまぁ、わかりました(笑)

――:じゃ、改めて。大学を卒業して一度就職してますよね。そこから起業に至るまでの経緯を教えてもらえませんか?

そうですね、大学を卒業してブライダル業界で働いていたのですが、手短に言うと、着物に触れることが多くなって、着物って素敵だなぁと思って、そこで自分が着たい!っていう感覚より、自分が作る側になれないかなぁ?というのが、きっかけです。まだ在職中でしたが、京都で和裁の学校を探したりもしていました。それで自分のしたいことを見つけたので、会社を退職しました。

・社会人から一転、和裁の学校へ

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――:作りたいという気持ちになったのもビックリだけど、行動も早い!和裁の学校には何年通ったの?

私は「和裁技能士1級」の資格まで取りたかったので、5年コースでした。

補足1 「和裁技能検定」は和裁に関する唯一の国家資格で、3級から1級まであります。

――:マジ!?5年も勉強するなんて、正直辛くなかったですか?

作るのは本当に楽しかったので、全然“苦”では無かったです。ただ最初の2年間は、基礎を学ぶために浴衣や襦袢の制作が中心だったので、いま思うと多少はあったかもしれません(苦笑)

――:子供の着物(専門)で行こうと思ったのは、いつぐらい?

3年目から袷の着物や変わった着物を本格的に作り始めた頃から考え始めるようになりました 。実は、在学中から自分で製作した子供用着物をインターネット上で少し販売をしていたんです。はじめは、ただ単に大人の着物をつくる練習として、時間を短縮して作ることができる小さなサイズの子供用着物を作っていたのですが、徐々に反響をいただくようになって、 子供の着物のニーズ(マーケット)もあるのかなぁって思いはじめました。

――:確かに子供の着物は大人用よりは少ない生地で作れるし、仕立てにかかる時間も少なく済むよね。でもそこから子供の着物に注目して行ったのが大きい!

補足2 管理人はサラリーマンを退職後、家業でもあった呉服の仕事をしていたので、ちょっとは理解できる(その後、廃業)

この説明だと何となく効率が良いとかだけで、子供の着物を選んだの?と思われちゃいそうですが、決してそういう訳ではなくて、初めて自分で作った子供の着物をご注文いただいた時は、震えるほど嬉しかったんです!またご購入後に喜びのご感想をいただいた時は、『一生この仕事をしていきたい!』って思うほど感動もしました。

――:そういう思いがあって独立(起業)に繋がっていったんだね。具体的に卒業後はどんなイメージをしていた?

最初からやりたい事すべてを決めていた訳ではなくて、和裁のお仕事をいただきながら、自分でも(子供の)オリジナル着物の企画・制作・販売を出来たらなぁという感じでした。

――:いやいや、実際には相当固まっていたと思うけど。それで僕がitonowaにお誘いしたのは、独立してどれぐらい?

確か起業して1年目とかぐらいですね。当時、自宅の一室で着物を作っていたのですが、いつかアトリエが欲しいなぁって思ってました。ちょうど、そのタイミングで管理人さんから「いきなり入居者を探してます!」「とりあえず改装中の現場を見に来て下さい!」みたいな“怪しい”メールが送られてきて…。でも誘ってもらえた嬉しさだったりとか、なんとなく興味を持ったのを覚えています(笑)

――:確かに怪しかったかも?実際に空き家を見学した時の印象は?

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初めてitonwaに来たときは、まだ改装の作業中で、床や壁の無いところや扉の付いて無いところなどもあり、工事の方がたくさん作業している感じでした。出来上がっているものをポンと渡される感じではなくて、一緒に作っていく感じがして、すごくワクワクしたのを覚えています。

見学したその日のうちに好きな扉を選ばせていただき、床の色などの相談をさせていただきました。どんな自分のお店にしようかなと考えながら、他の入居者さんはどんな方なのか、どんなお店ができるのか楽しみになりました!!

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――:そうでしたね、僕も決めてもらえるのかな?と思いながらどんどん話しを進めていきました。最終的にSHOP1の部屋に決めた理由は?

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大きな窓から自然光がたっぷり入ってくるのがいいなと思いました。作業机を窓のすぐ横に配置しているので、季節や自然を感じながら作業できるのでお気に入りです。

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――:声を掛けたタイミングが本当に良かった!それと興味を持ってもらえた理由の一つに、当時、京都リサーチパークが拠点の「京都職人工房」に在籍してたのも影響してるのでは?

確かにそうかもです?!職人工房の拠点は京都リサーチパークだったので、JR丹波口駅周辺はもちろんのこと、itonowaのある「島原あたり」も観光したことがあって、静かだけど歴史が感じられる素敵なエリアだと思っていました。

補足3 「京都職人工房」とは、伝統産業をはじめとする地域産業の担い手が次のステップを踏み出すためのプラットフォーム

――:オープン前の心境はどんな感じでしたか?

初めてお店を持つので、どこまで出来るか正直不安もありましたが、itonowaと共に地域の方と寄り添える場所づくりや、着物やモノづくりに興味を持ってもらえるような場にしたいという思いが強くなったのも大きかったと思います。あとDIYも楽しかったですー。

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――:ここからは、普段のお仕事のことを聞かせて下さい。着物を作る時に気をつけている点は?

アメリアジャポニカの商品を気に入ってくださって、ご注文いただいたと思いますので、それに応えられるよう丁寧に作ることは、もちろんなのですが、こだわっている点は、ミシンでは無く手縫いでお仕立てしているところでしょうか。ミシンを使えばすごく楽なのでしょうけど、仕上がりを比べた時に、そこはやっぱり違うかなぁ~と思っています。付け加えて言うと、気持ちを穏やかにして仕事に向かうことを大切にしています。

平常心を保ち続けれる能力

――:今のところ、大切なポイントが詰まってましたよね?僕はいつも起伏が激しいから…

いえいえ、わたしもずっと平常で居るなんて出来ないですよー。どうしても気持ちが揺らいだりすることがあるので、そこはお昼休憩の時とか、スタッフのⅠさんと色々なことを話して気分転換をしたりしてます。ひょっとして聞かれるとマズイことも言ってるかもしれません(笑)逆に集中すると朝からずっと部屋に閉じこもることも多いです。

補足4 「itonowaの和室」は、普段ご飯を食べたり打ち合わせに使用できる共有スペースとして入居者に開放しています

――:itonowaに入居してプラスになった点があれば教えてください

先ほども言いましたが、島原あたりって静かなところだし、程よく便利だし、とても快適にお仕事ができるすごく良い場所なんです(まだあまり人気が無いエリアですけど)あとはやっぱりお店を構えると信頼にもつながりますし、itonowaには個性的なメンバーが集まっているので、その点も良かったと思います。

――:お仕事の中身とか方向性とかの変化はありました?

いえいえ、基本は毎日着物を仕立てているので、そこは特に変わらないです。でも、わたしが起業した頃から比べると、子供の着物を販売される方も増えてきましたので、同じものばかり作っていてはダメだと思い、商品のラインナップを増やしたり、レンタル事業も開始しました。あと個人のお客さま以外では、全国の和装関係の企業様(フォトスタジオ)からお仕事をいただく機会もかなり多くなっています。一度にかなりの枚数の着物の注文が入る場合もあるので、その時は部屋の中が結構すごいことになるのですが、そんな時に限って、急に管理人さんから視察のお願いがあったりして…。あと昨年は「阪急うめだ本店の七五三フェア」にも初めて出店させていただいたり本当に1年中忙しかったです。

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――:視察の協力、ホントに助かります!確かに去年はめちゃくちゃ忙しそうでした!それと最近、itonowaで「撮影プラン」とか企画してますよね?

補足5 第1回京都市「空き家活用×まちづくり」モデルプロジェクトに採択された関係で、行政・民間・大学問わず視察の依頼があります

そうですね、撮影プラン(撮影会)含めて色々企画している段階です。itonowaはレトロな感じの場所も多く、重宝させてもらっています。

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――:最後にこれからのことを聞かせてください。

先行きが不安な業界ですが、着物のファンを増やしていきたいです!和服を着ると“ぱっ”と華やぐ気持ちになる、そういう想いをたくさんの方と共有できたら嬉しいですし、大切な記念日のお手伝いを衣装を通してできるなんて、とても幸せな仕事だなと感じています。あと管理人さんからは、よく“卒業”のことについて聞かれますが、まだ正直わかりません…というのが、本当のところです(笑)もちろんチャレンジしたいこともありますが、やっぱりそこは欲張らずに自分たちの出来る範囲でお仕事をさせてもらえたらと考えています。だから、しばらくはitonowaを拠点として活動していく感じだと思います。いま温めている企画もあるので、またお話しできればと思います。以上です!

――:ありがとうございました!引き続きこれからもよろしくです!!


・管理人の編集後記

「もし和裁士の道を選択して無かったら?」の問いに、迷いもなく「考えられません」と言い切ったのが、とても印象的だった。ここに来るまで色々なことがあっただろうに、さらりと言ってしまう。僕は、彼女のそういうところが大好きです。日々自分を律して仕事に取り組まれている。それは和裁士になった覚悟と誇りのように映ります。そして自分の信じた道を着実に歩まれている。そんな彼女がお仕立てする着物には“愛”が詰まっています。ありきたりな言葉になってしまうけれど、これからの活躍をもっと見てみたい。


・店舗DATA

【SHOP1】アメリアジャポニカ -コドモノキモノ‐

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住所:〒600-8364 京都市下京区突抜2-357 itonowa1F
営業時間:11:00 – 17:30(アトリエ) 
定休日:平日のみ営業(見学は予約制・予約の場合は土日も可)
web:http://ameria-japonica.com/
問合せ:info@ameria-japonica.com


・インタビュアー / itonowa代表(管理人)





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