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夏の身体



閉ざされた
誰からも見えない蕾のなか
             
黄昏を迎える前
ほんの束の間
太陽を孕んだ白熱の夢を引き入れる

眩しさに唆され
わたしはその一部に齧りつき のみ込む

うたた寝をしていた鼓動が飛び起きて
そわそわしながら 
もくもくする入道雲をこしらえた

胸に夕立
窓を叩くように 白雨が打ちつける
そして ちいさな虹ができた

のみ込んだ白夢が
身体の中で七色へと変わった

言葉を発しない夢は
何も語らない夢
身体を介して 
ただ感じる その存在を

わたしたちの間
呼吸とともに 近くなる
熱が 勢いよくうごいてゆく
のみ込んだわたしが
のみ込まれてゆくように

蕾の表面が藍色の世界に沈む頃
わたしはきっと 七色に発光する
もう一枚の皮膚を手に入れているだろう

もう 世界に月がなくても輝いて
昼も夜も歌うように夢を見る
哀しみが聴こえない世界で
希望の輝きは 心拍数に応じる

虹色の鱗を纏うわたしは 夏の真ん中
耳を澄ますと
焼けた喉がカラカラといいながら 鳴いている
瞼をそっと開いていくように 
花弁が開いてゆく


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