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消えゆくものたち


いつか終わる
そう 知っている

そして始まるんだ
でも 忘れてしまうの

何度も何度も 

そよ風が横切ったとき
身体のなかをかすめていく
いつかの光景や思い出

フラッシュバック

出来事も 気持ちも 
まるで風のように通過してゆく


なみだが作った海に
両足が捕らわれそうになった夜

消えたくなった朝

だれかと共によろこんだ夕暮れ
初夏 まだあかるい宵だった

眠れないとき
天井を空に見立てて
願いを放った日の境目
夜の真ん中 なのにまぶしかった

こうやって思い返すと 
通り過ぎた出来事が
まだすぐそこにあるようで不思議だ

記憶も 思いの数々も
そこらじゅう砂のように 散らばっているみたい

ある人たちは それらを集めてお城を作り
なるたけ高く 見栄えよくしたいと精をだす

うれしいが集まった栄光を
かなしいで作った悲劇の城を

わたしは?

わたしは 
何もこしらえたくないわ

砂に触れることなく ただ感じる
胸の奥で その存在たちを思うことが好き

あるいは

風が吹いたときに 偶然のように思い出すことや
消えていった思いが 風に乗って向かった先を
自由に描くのもいいわね

時に なつかしんで
時に怒って 笑って
そしてまた すぐ忘れるの

それは誰にも手が届かない
わたしという小宇宙のなかで
くり返されてゆくこと

そしていつか
この自分であった記憶さえも消えてゆくの

きっと それは 想像もできないほど
とてもとても美しい消えかたなんだわ

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