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#自由詩

きみは雨音のなかに

三日月から雫がこぼれ 雨へと変わる 音が音を追いかけていく調べが この部屋のなかを響き渡って 壁にもたれるわたしの背後をくすぶる 頬杖を伸ばし 過去をそっと折りたたんで 淡い胸の奥へ仕舞う 雨は生命のように 飽和した空気のなかから飛びでて 世界を震わす、鼓動のように それはまるで雨音のなかに君が居るようで この部屋とこの身体(なか)を通過しながら いっしょに溶けてゆくのだ

宙の成分

夜の帳に頬杖ついて 
手繰り寄せる過ぎし日
 鼻先をかすめる風の匂い 
遠くに響く虫の音 掛け合って 
時間の扉 ひらいてゆく 夕暮れ 
地図を飲み込んだ身体
 ここに在るのに、ここに居ないあたまを携え 
幻影の中こころは玉虫色に瞬きだす 歩きながら君を想い 
わたしを思い出してゆくの
 身体のなかを釣糸のように上下しながら
呼吸を用いて わたしがわたしであることの覚えを 地球に比べたら花粉よりちいさな私たちの体 なのにこの内側で わたしはわたしを掴みきれないでいる ふと

表出

「大好きとか愛しているとか、
 そういう眩しいことばはなかなか扱えない。 
それはわたしにとって宝石のようなことばだから。 それに、いざ口から出た瞬間、 
元の分量より少しだけ、
軽くなっている気がするの。 
不思議よね、
いったい何によって掠め取られたのか。 

それとも本当は体内に残っているのか、
 いや、気化してしまったのか。

 そんな僅かに消えた体積の行方が気になって、 
わたしは発したことばそのものに
 言ったそばからくるりと背を向けてしまうの。
 可笑しい

ボクたちの時間

「世の中のいう時間なんて 本当は存在していないんじゃないかな。 なのに、わたしらはめーいっぱい 誰かが決めた枠の中に今日を詰め込み、 まだ存在していない未来を思索し、 もう存在していない過去を思い、耽ったりするんだよ、 そのなかで目まぐるしく。 あと何日、もう何年、何歳とかって そんなふうに時間は区切れるものじゃないんだ。 数字じゃないんだ。 だって時間は、その人の命だから。」 そう言う、君と共に過ごすボクたちの時間、 気づいているかな。