彼女はとにかくバンソウコウを貼りたい
娘が絆創膏にハマり出した件。
それは、数週間前、血が出ている娘の腕だか足だかに絆創膏を貼ったのがきっかけだった。以来、
どこかにちょろっとぶつかっただけで「バンソウコウはってぇ」だの
私が絆創膏を指に貼っていたら「トトちゃんもバンソウコウはりたい」だの。
絆創膏の在処も把握していて、一度隠したことがあったけど無駄、なぜか見つけ出してくるのだった。欲しいものへの探索力。執着心。
絆創膏にハマり出した頃、
「絆創膏は、血が出てるときに使うんだよ」
と言ったけれど、そんな理屈が通じるはずもなかった。断固として絆創膏を貼りたい娘に理屈を言ったところで、かなり高確率で平行線になるのは目に見えていた。
以前の私なら、「だからぁ、怪我してないのに使ったらもったいないってば!」なんて言って、「やだ」と言い続ける娘に対して「もう……」となっていただろう。
でももう数百円の絆創膏のために、嫌な雰囲気になるくらいなら。思う存分使ってくださいと。使い切ったら、それこそきっと諦めがつくだろうと。そんなかんじで、毎回、
「じゃ、1枚だけね」
と言っていた。幸い、娘もそれ以上を求めてくることはなく、
それでも結構なペースで消費していたら、ついこないだ買ったばかりの25枚入りのBAND-AIDは、残すところ5枚となった。
◇
今朝、どこにぶつけたのか、例の如く「いたぁい。バンソウコウはってぇ」と、擦り傷の「ス」の字もない綺麗な足を私に見せてそう言ってくる娘に、「いま朝ごはん作ってるから、パパに貼ってもらって」と言った。
すると、娘からのお願いを受けた夫が絆創膏を1枚取って、半分に切り始めた。
「1枚丸々使ったらもったいないからね」
節約家の鏡。
「ほっっそ!」
半分に切った絆創膏の細さに思わず笑った。その幅、約5mm。
ていうか原形を留めていないけど、これで満足してくれんのか?という私の心配をよそに、
絆創膏を貼った瞬間、痛いのは治ったらしく、娘はにっこりしていた。
なんて単純なの。
母は、あなたの満足ポイントが理解できないときがあります。
絆創膏としての「機能」はどうでもいいんだね。
「絆創膏を貼っている」という事実が重要なんだね。
幅5mmの絆創膏が貼られたプニプニの足は、とても滑稽だった。
……って、こんなことがあったんだよ、と将来娘に話すのが楽しみだ。
そろそろ新しい絆創膏買っとこうかな。