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エラリー・クイーンの悲劇④更新しました

 小説サイト「NOVEL DAYS」にて、「ストーカーレポート」第2話エラリー・クイーンの悲劇④を更新しました。
 よろしければ続きは、小説サイトでご覧ください。

 シノザキが住んでいたのは、新宿にあるアパートだった。新宿だからといって、家賃の高い住宅ばかりを想像してはいけない。
 築何十年の老朽化したアパートだってあるのだ。シノザキが住んでいたのは、そういうアパートだった。
 私は二階建ての木造モルタル造りのアパートの前に立ち止まり、深呼吸を一つしてから、共有玄関の敷居をくぐった。木造の集合郵便受けが目についた。昼間なのに、多くの郵便受けには朝刊がさしこまれたままだった。階段を上っていくと、きしきしと音をたてて軋んだ。トイレは共有のようだ。
 シノザキの部屋は、立ち入り禁止になっていた。
 しかし、ドアの前に警官は立っていなかった。ドアはもちろん、ロックされていたが、私にとってドアをあけることなど、お茶の子さいさいなのだ。
 一瞬にしてドアがあいた。
 シノザキの部屋は八畳一間だった。部屋の大きさに対して不釣合いなほどの大きな書棚が三つあった。本がぎっしりとつまっていた。読書家だったらしく、部屋じゅうに本が山になって積み重なっていた。大部分は小説だ。好きなのだろう。
 レコードラックやCDのそれはなかったが、FAIR WEATHERのCDは、書棚の本の背表紙に写真立てのように立てかけて置いてあった。
 ジャケットには、デイジー、イッチ、シノ、タクの四人が写っていた。
 四人とも暗く陰鬱な顔をして、世界にたいして挑発的な目つきをして立っていたが、さすがに若かった。二十歳前半だろう。当然だ。
 過ぎ去った時代を感じさせる。
 シノザキがいま、どんな仕事をしているのかは知らないが、音楽に興味を持っていないことはたしかなようだった。
 デスクの上には、二つのブックエンドにはさまれて、数十冊の本が整然と置いてあった。イッチのいったとおりに。充電器はあったが、スマホ本体がなかった。パソコンもなかった。警察に押収されてしまったのだろう。
 デスクの引き出しは、三つ。いちばん上の引き出しには、消しゴムやボールペンなどの文房具類、二段めには健康保健証や郵送で届いた請求書などの書類、三段めには、年賀状や手紙などが輪ゴムでくくられて、どっさりと置いてあった。
 過去、数十年分がまとまっているようだ。全部出してみると、底のほうにカセットテープが一つ入っていた。まるで隠すように。
 当時はまだ、音楽を録音するメディアの主流はカセットテープだったのだ。





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緒 真坂 itoguchi masaka
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