「アナログガール」 あとがき
下記の文章は、私の書籍「アナログガール」(櫻門書房)のあとがきです。「アナログガール」は、2014年の5月に出版されました。
小説そのものが作者の世界観を語る。それに水をさすような作者のあとがきは、鑑賞の邪魔である、という考え方もあると思いますが、私は、あとがきが好きです。松尾スズキさんの戯曲本など、あとがきが読みたいばかりに購入しているくらいです(もちろん、それだけではなく、その戯曲がすばらしいものであることはいうまでもありませんが)。また、私自身、あとがきを書くことが好きです。
そのような気持もあり、ここに再録しました。もし読んでお気に召すようでしたら、ぜひ手に取ってみてください。
ネット書店のamazon、めがね書林、中野ブロードウエイ3Fのタコシェで取り扱っています。
この小説集は「スズキ」につづく本だ。「スズキ」を出してからおよそ半年。二冊目を出す気になったのは、「スズキ」を楽しんでくれたリアルやネットの人々がいたからだ。感謝しています。
「だって二十九といったら就職する年齢としては、ぎりぎりでしょう?」は、ある日ふとアイデアがすっと頭に浮かんで、一息に書いた小説である。夢を持つとはどういうことなのか、というテーマは日ごろからよく考えていた。私の周囲には芸術家志望の人間がたくさんいる。バイトをして生活費を稼いでいる。ストーリーはフィクションだが、実感はノンフィクションだ。夢を持つことは天国と地獄が同居しているようなものだと思う。自分のなかにモンスターを飼育するようなものだと思う。
「コクー」に出てくるカバという名前は私の知り合いから取っている。キャラクターをちょっと似せたが、モデルというほどではない。小説を書きあげると、かれに読んでもらって意見を聞いた。かれは自分の名前が出てくると、ほかの原稿よりも真剣に読んだ。熱心に読んでもらいたいばかりに、いくつかの作品に私はかれの名前を登場させたくらいだ。池袋にあるラーメン二郎で、いっしょにラーメンをたべたのが最後になった。かれはいまいったいどうしているだろう?
「アナログガール」の原型になった小説を執筆していたのは、作中に出てくるようにいまは廃業してしまったレコードショップ、CISCOが新宿アルタの六階で営業していたころだ。思い出がしみついている店だったので、設定の変更はせず、残すことにした。アルタのCISCO店を思い出すと、当時の新宿の風景を思い出す。
新宿の風景は変わり、私の思いも変わった。それがいいことなのか、悪いことなのか、わからない。
私はいま、私立高校の隣に住んでいる。窓のそとにはテニスコートが見える。早朝からラケットでテニスボールを打つ音が聞こえてくる。かけ声も響く。その時間まで私は小説を書いている。私がボールを打つには、それしかないからだ。
私の打ったボールはあなたに届いているだろうか?
「アナログガール」に出てくる法制度については日本大学法学部の南部篤教授にご指導いただきました。ありがとうございました。また桜門書房の社長、この本に関わった印刷会社の方々、お世話になりました。
そしてこの本を手に取って、あとがきまで読んでくださったみなさま、心からありがとうございました。
緒 真坂