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「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇③を更新しました。

 小説サイト「NOVEL DAYS」にて、「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇③を更新しました。
 よろしければ続きは、小説サイトでご覧ください。

 由比信之助は、大学を定年退職してから、それまで住んでいた都心のマンションを売却し、一ヶ月前にこの土地に引っ越してきた。
 東京のはずれで話題になることもない土地だったが、私は八十六歳の男がどんなたそがれた生活を送っているのか、興味があった。
 ところが(当然のことだといえば当然だが)、何の驚きや発見もなかった。
 大学の名誉教授だから面白い余生を送っていると勝手に想像していたのだが、ぜんぜんそんなことはなかった。極端に行動範囲が狭いのだ。引越し先のアパート、コンビニ(私が店長をしているコンビニだ)、スーパー、レンタルビデオショップと駅前にあるちょっと大きめの書店、そして近所の公園。その点と点を結ぶ線を歩くだけだった。
 これでは、自活しているパソコンヲタクの大学生と変らない。パソコンヲタクは、それでもときどき秋葉原まで出かけるから、かれらのほうが行動範囲が広いといってもいいくらいだ。
 自宅のアパートにいるときは、本を読むか、レンタルしてきたDVDを観ていた。テレビ番組はニュース以外、観なかった。研究論文は書いてはいないようだ。
 というわけで、由比の張り込みは、何の面白みもなかった。歩くスピードは遅いし、私に気がついて逃げ去る危険性もない。あの足腰では、とうてい走ることができるとは思えなかった。




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緒 真坂 itoguchi masaka
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