見出し画像

あらためてキッチン

「料理はほとんどしないです。家にいるときは、外食かデリバリーで済ませています。」

大学生の頃から一人暮らしで、社会人になって海外で暮らすようになってからも「家で料理はする?」と聞かれるたびにこう答えていた。

健康にもいいし節約もできるよと周りにどんなに言われても頑なに自炊することを拒んできた。10年以上ほとんど自炊をせずにいた。住んでいる部屋のキッチンは全くと言っていいほど使っていなかった。

それなのにここ6ヶ月くらい、家で何かを作って食べる習慣ができてきた。家でさっと食べれるものや自分で簡単に作れるものをスーパーで買ってくるようになった。

ヨーグルトと冷凍ブルーベリーを買ってきて朝ごはんに食べるようになり、自分で作ったゆで卵が朝ごはんに追加され、鶏肉と野菜を買ってきて市販のソースで炒めるようになり、休日にはホットケーキを作ってベーコンを焼くようになった。

キッチンを使うようになってから少し経って、炊飯器やノンフライヤーも買った。

自分の変化に自分が驚いている。周りの人たちが言っていた通りだ、健康にもいいし節約もできるし、何より自分で自分の体を作っているものをコントロールできている感覚が気持ちいい。

料理を作ること、それを美味しく食べること、それから洗い物をすること。

デリバリーで頼む時はプラスチックの箱に入れられた食べ物を割り箸やプラスチックのスプーンで食べていて、そのまま捨てられるから楽だなと思いつつも毎食沢山のゴミを出していることに少し罪悪感を持っていた。

きちんとお皿に盛って、自分の箸やスプーン・フォークで食べて、洗い物をする。この過程も意外と面倒に思わないことに気づいた。

***

私が自炊をするようになったのは、去年まで一緒にルームシェアをしていたフランス人の年上の女性、Kさんの影響がある。

Kさんとは2ベットルームのアパートで少しのあいだ一緒に暮らしていた。彼女は料理が好きで、家にいる時はいつも夜ご飯一緒に食べようと言って料理して私に食べさせてくれていた。(私が料理をほとんどしないこと、外食やデリバリー任せなことを知っていた)

すごく凝った料理を作るということはないけれど、自分で食べたいと思うものを時間をかけて作ったり(グラタンとかパスタとかお肉がのったサラダとか)、友達がくる時にはケーキやお菓子を焼いたりしていた。

Kさんは基本遅起きで、週末は11時頃起きてゆっくりコーヒーをいれる。それから卵を焼いたりオーブンでパンを温めたりして食べながら午後1時くらいまでキッチンでゆっくりしている。

そんな彼女を毎日のように見ていて、こういう暮らしの仕方もあるんだなということを教わった。それまで私は住んでいるアパートをシャワーを浴びて寝るだけの場所くらいに思っていたけれど、彼女はそこで”暮らしている”という雰囲気が感じられた。

そしてそれをすごくいいな、と思っている自分に驚いた。

Kさんはフランスに帰って、私は今彼氏と一緒に住んでいる。彼女の影響を受けて、少しずつキッチンを使うようになっている。食器や料理道具もだんだん増えてきた。

料理をして食器を使って食事をし、洗い物をしているとKさんのようにきちんと”暮らしている”という感じがして気分が良くなる。

自分が好意をもっている人から受ける影響はこんなにも強いんだなとあらためて感じている。この自分の中の自炊ブームが続く限り、キッチンでの時間を存分に楽しんでいきたいと思う。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?