「著作権法改正(20/6/5成立)」って、あたしに、どんな影響があるの?
こんばんは。IT企業法務の狼です。
前回の自己紹介で書かせていただいた流れで、わかりやすい内容を心がけますね。
さて、今回は「著作権法改正(2020/6/5成立)」です。
1.インターネット上の海賊版対策の強化
『海賊版は、ぜぇったいにゆるしませんぞ!!』っていう改正です。
①リーチサイト対策(施行日:2020年10月1日〜)
【改正前】
「海賊村」のような、著作権者の許可のない著作物(以下、侵害コンテンツ)をアップロードすることはこれまでも違法でしたが、「はるか夢の址」は違法として実刑判決(その後、損害賠償)を受けたものの、侵害コンテンツのリンクを提供するようなリーチサイト※1を規制できるような内容になっていませんでした。
【改正後】
以下の2点が、法律で規制されることになりました。
(ア)侵害コンテンツへのリンク提供行為
(イ)リーチサイト運営行為・リーチアプリ※2提供行為
※1、※2「リーチサイト」「リーチアプリ」ってなに?
●公衆を侵害コンテンツに殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト・アプリ等
● 主として公衆による侵害コンテンツの利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト・アプリ等
→私は、ざっくりと「悪質なリンク等のサイト・アプリ」といったイメージでとらえています。
【罰則】
リンク提供者:三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金(親告罪、故意犯のみ)
サイト運営者又はアプリ提供者:五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金(親告罪)
②侵害コンテンツのダウンロード違法化(施行日:2021年1月1日〜)
【改正前】
音楽や映像の侵害コンテンツのダウンロードについては、私的使用目的であっても違法でしたが、その他の著作物は法律上明記されていませんでした。
【改正後】
今回の改正で、音楽や映像だけでなく、漫画・雑誌・新聞・コンピュータプログラムなど、著作物全般の侵害コンテンツのダウンロードが、私的使用目的であっても違法と、対象が拡大されました。私は、ざっくりと「侵害コンテンツのダウンロードはほぼダメ」という理解でいいと思います。
ただ、侵害コンテンツのダウンロードであったとしても、刑事罰か民事措置かどうかを判断する際に、軽微なもの等を対象外とする例外等もあるので、参考程度に、以下、掲載いたしますね。
2.その他の改正事項
『いんたーねっととかで進歩したよ、合わせよーよ』って改正です。
①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大(施行日:2020年10月1日〜)
【改正前】
写真撮影・録音・録画を行う際の写り込みのみが認められていました。
【改正後】
デジタル化・ネットワーク化の進展などに的確に対応するため、スクリーンショットやインターネットによる生配信などを行う際の写り込み等、規定の対象範囲の拡大を行うことになりました。私は、ざっくりと「悪質な写り込みは全部ダメ」というイメージで、まずはいいんじゃないかと思います。
②行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法を追加)(施行日:2020年10月1日〜)
【改正前】
特許審査手続等においては、迅速・的確な審査等に資するよう、権利者に許諾なく必要な文献等の複製等ができました。
【改正後】
(ⅰ)地理的表示法(GI法)に基づく地理的表示の登録、(ⅱ)種苗法に基づく植物の品種登録についても、同様に必要な文献等の複製等ができるようになりました。
③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入(施行日:2020年10月1日〜)
【改正前】
著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利に関し、著作権者が譲渡人に著作権を譲渡した場合、利用者は譲受人に対して対抗できませんでした。
【改正後】
著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利に関し、著作権者が譲渡人に著作権を譲渡したとしても、利用者が安心して利用を継続することができるよう、譲受人に対抗できる制度を導入対抗すること(利用の継続を求めること)ができるようになりました(特許法では同様の仕組みを設置済み)。
④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化(施行日:2021年1月1日〜)
【改正前】
著作権侵害訴訟においては、裁判所は、原告からの申立てに基づき、侵害立証や損害額計算のために必要な書類を保有する被告に対して、提出命令を発することができることとされていますが、提出命令を発する必要性の有無を判断する前に実際の書類を見ることができないため、提出命令の可否について適切な判断ができない場合がありました。
また、被告は、裁判所が提出命令を発する必要性があると判断したとしても、正当な理由がある場合は、書類の提出を拒否できることとなっていたので、裁判所はその正当な理由の有無を適切に判断するために、実際の書類を見ることができますが、専門性の高い書類については必ずしも十分に内容が理解できない場合がありました。
【改正後】
平成30年の特許法等改正と同様、①裁判所が書類提出命令を発する必要性の有無を判断する前の段階で、実際の書類を見ることができるようにするとともに、②実際の書類を見て判断する際に専門委員(大学教授など)のサポートを受けられるようにしました。
⑤不正使用防止のためのアクセスコントロール技術に関する保護の強化(施行日:2020年10月1日〜)
【改正前】
近年、コンテンツの提供方法が、パッケージ販売からインターネット配信に移行していて、シリアルコードを活用したライセンス認証が普及しましたが、現行の著作権法では、定義があいまいで、不正なシリアルコードの提供等が規制できていませんでした。
【改正後】
①ライセンス認証も、技術的利用制限手段のひとつとして定義
②不正なシリアルコード等を著作権侵害とみなす規定、が定められました。
⑥プログラムの著作物にかかる登録制度の整備(プログラム登録特例法)(施行日:公布から1年を超えない範囲内で政令で定める)
【改正前】
プログラムの著作物については、これまで特例の法律によって登録をしていました。
【改正後】
プログラムの著作物の登録のほか、訴訟等になったとき、①著作権者等が自ら保有する著作物(訴訟等で係争中のもの)と、事前にプログラム登録をしておいた著作物が同一であることの証明を請求できることになりました。(これによって、登録による事実関係(例:創作年月日)の推定効果を確実に享受できるようになりました。)
また、国や独立行政法人は、その登録の際の手数料が無料でしたが、②民間企業と同じ(手数料の支払い義務がある)になりました。
著作権法については、以上です。
上記の図は、1.①②の改正前・改正後の表を除き、文部科学省のこちらの資料から、一部抜粋させていただいております。ご参考までに。
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