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「選ぶ」ができることが大事

今日は銘木について学ぼうということで、東西線「南砂町」駅に降り立って公益財団法人「日本住宅・木材技術センター」へやってきた。銘木というのは木材の中でもすこし別格の扱いを受ける、建材としてというよりは、その「木」そのものに内在する価値を伝えるものとして扱われると思っている。


建材として扱ってしまえば、それはなんというか部材なのであって、愛でる対象のものでもなければ、宝物にもならず、愛着を持つ対象にもならない。

だが銘木は「宝物」になり「愛着の対象」であり、ひいては「信仰の対象」にもなり得るものであるということを感じることができたように思う。


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一見すると木材倉庫であるが、これは紛れもない銘木の保管庫。雑然と置かれてしまっているけれど、「木」を宝物にすることができると信じて生きた人の中で一番有名になったのが「長谷川萬治」という銅像になっている人。

ちょっといまはこんな感じで倉庫に置かれているような雰囲気で雑な扱いを受けている感じはするけど、これから日本で必要な価値観は、彼がずっと前から取り組んできたようなことなのではないかと思っている。


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とはいえ、現状は倉庫な感じが否めない。

ここにきて感じたのはこのセンターの人たちこそが、ものすごく大切な宝物を扱っているということの意識がないのかもしれない、ということだ。

時代背景から、この銘木たちが必要とされていく可能性があることに、ここのスタッフの人たちは気づいているだろうか。林業に関わるひとたちほど、ここにある宝物たちが、お金という増幅可能な交換手段ではどうしようもない価値をもって、ここに存在していることに気づいているのだろうか。


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ざっと並べられたように見える木材たちの大きさはハンパないものがあり、それだけの大きさに至るまでにかけた年月と、逞しく生き抜いてきたという事実そのものが、その木が持つエネルギーの大きさを示すことになる。


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ここにはそんな存在感がある木たちが並んでいて、ただしかし今日も雑然とそこに置いてあることに、木材に関わる人たち、いまを生きる多くの人がここにある木に対する期待を失ってしまったこともまた感じられる気がした。


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それほどたくさんの種類の木があったわけじゃないが、国産の銘木を揃えており、比較してみることができた。その中でぼくは複雑な木目を持っている「トチ」や「ケヤキ」や「クリ」のような銘木に心が惹かれるのだ、という自分の感性を見つけることができた。


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いまにも混ざり込んでいくような色合い。溶かそうとした、絵の具がまだまだ全体で溶け合っていないときに見えるグラデーションのような感じか。

それらはじっくりと年輪となるために栄養分が注がれ、命が生まれようとして、途中でなんらかで成長が止まり、さらにほかでさらに命が生まれ、またどこかでそれが終わり、を繰り返した結果として生まれたもの。


こちらはケヤキ。

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遠くから見て複雑な木目。これを近づいてみると、同様に複雑であって。


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さらにズームインしてもやっぱり複雑。フラクタル。


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切り株がでかいのがなにせ、いい。これを僕の家の庭に置いてあったら、ここで座ってゆっくり大事な話をしたいよね。寝てるけど。笑


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長谷川萬治さんはこの人。



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何が大事かって、木が宝物だってことを信じる力が大事。木は生きてきた歴史そのものであって、それは石にも言えることなんだけど、木はなんというかそれがいい時間軸で表現されていることがある。大きさもひとつの表現。


自分の生き方や人生にフィットした、大切な思いを表現している木に出会うとしたらそれは運命を感じるに決まっているだろうし、それは誰にもわかるものではなかったとしても、それでも信じられる人がそれを保有すべきだ。


そこはもう不思議さ満載で、感動をもたせ続けるストーリーが、時には何千年を超えて自分のところにたどり着いてくれたのだということを感じさせるかもしれない。木に関わる、ということはそういうことなんだとわかった。


そのことを語るに足り得る知識を、好奇心をもってまずは持つことが大事だし、そのうえで人に深い話を聞かせてもらう信頼感とコミュニケーション能力が必要だ。そしてなによりも、その存在と存在がなぜ出会ったのかということについて運命的なつながりを感じる感受性と、そのストーリーを語れる言語能力もしくはパッションが必要だ。

それは単価の問題を超える。むしろ一定の価格でお譲りすることがない限りは失礼にあたるほどのことだ。大事なものだからちゃんと支払いをもらう。


それって、高付加価値型のビジネス。まさに効率化で生み出す利益ではなくて、高付加価値化のビジネスなんだってこと。これから本当に求められる。


そういうことなんだなとわかった。
でもそれはこうして並んでいたからわかること。


そういう意味では全体から個を把握することがいかに大事かを、また認識させてもらったような気もする社会見学だった。

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よこたいたる(お葬式研究家/呼吸の習いごと主宰)
急に読者の方からサポートもらえてマジで感動しました。競馬で買った時とか、人にやさしくしたいときやされたいとき、自暴自棄な時とか、ときどきサポートください。古民家の企画費用にするか、ぼくがノートで応援する人に支援するようにします。