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インディゲームの「よい試遊」と「悪い試遊」について考える

この記事では、いちゲーマーである僕が感じる、インディゲームの「よい試遊」と「悪い試遊」について考えます。

先日の東京ゲームショウ(TGS2024)で僕は、インディゲームエリアを回って、様々な作品の試遊を楽しみました。

その中で、その作品の特長や魅力を効果的に伝えている試遊ブースと、伝え損なっているブースがあることに気づきました。
おそらく「客にどんな試遊体験をさせるか」をきちんとデザインすることは、ゲームそのものを作り込むことと同じくらい大切なことなのだと思いました。

ここでは、3つのポイントに分けて、今回のトピックを整理します。


その1:試遊の時間は短く、製品版への期待を持たせて

まず、インディゲームにおいては、試遊の適切な所要時間は、製作者の方の多くが考えているよりもはるかに短いのではないかと思います。

10分もかかるのは論外ですし、作品によっては5分でも長いかもしれません。

製作者の方は、そのゲームのことを誰よりもよく知っていて、そのゲームに世界一熟練しています。だからこそ、「あの要素もこの要素も紹介したい」とか「試遊のステージがこれだけしかなかったら、早く終わりすぎちゃうんじゃないか」などと考えて、サービス精神を発揮してくれているのだと思います。

でも、試遊にやってくる客のほとんどは初見プレイですし、僕のようにあまり上手ではないプレイヤーもいます。

なので、試遊は可能な限り短くして適度な達成感をプレイヤーに持ってもらうことで、「もっとこのゲームを遊んでみたい」という製品版への期待感を持たせるのが良いのではないかと思いました。

人によって感覚は違うとは思いますが、個人的には「チュートリアル」と「ほどよいスリルが味わえる簡単な実戦ステージ」の2ステージ分くらいがちょうどよいと感じます。

『SKY THE SCRAPER』の試遊は、構成と分量が適切で、ゲームの魅力を端的に伝えていて、好ましく感じました。帰宅してからもSteamで体験版をダウンロードして遊んでいるくらい、気に入っています。

その2:紹介は明快に、そして、コントローラーはよいものを

その次に大事だと思うのは、「ゲームの魅力がわかりやすく伝わるように、試遊ブースの環境を整える」ことです。もう少し具体的には、「ゲーム紹介は明快に、そして試遊用のコントローラは良いものを使う」ということだと思います。

TGSでは、作品によっては、まず目につくのが「ウケの良さそうなイメージイラストとタイトル」だけで、「どんなジャンルでどんな遊びをさせてくれるゲームなのか」が分からないケースがありました。

2Dドット絵なのか3Dグラフィックなのか、RPGなのかアクションなのかパズルなのか、カジュアルなのかハードコアなのか…などなど。「自分が試遊をしたいかどうか」を判断するためには、そういった情報をすぐに知りたいと思いました。

この問題を解決するための方法はシンプルで、それは「目立つところにゲーム画面を映す」ことです。ゲーム画面は雄弁に語ってくれます。それをやっていたブースは、僕が興味を持てそうなゲームかどうかを瞬時に判断できたので、とてもありがたかったです。

『DUNGEON INN』のブース。このように、試遊するプレイヤーが見るディスプレイとは別に目立つ位置に大きいディスプレイが設置されていると、どのようなゲームなのかがとても分かりやすかったです。

また、試遊のためのコントローラーも大事だと思いました。

PC向けに定評のあるXBOXコントローラーを用意している作品だと、それだけで高品質なゲームに思えてくる一方で、ノンブランドの安いコントローラーを使っていると、本来は関係ないはずなのに、なんとなくゲームまで安っぽく思えてしまいました。

インディゲームの場合、一部の有名タイトル以外はほぼ初見の状態でブースを訪れることになるため、「試遊ブースをいかに整えるか」というのはとても重要なことなのだと思いました。

その3:できてなくても、寛容な心でしばらく見守っててほしい

その1でも書きましたが、製作者の方はそのゲームのことを誰よりもよく知っていて、そのゲームに世界一熟練しています。

ですので、試遊するプレイヤー下手くそでイライラしたり、自分がデザインした通りにゲームを進めてくれなくてヤキモキすることもあるかもしれません。そんな時でも、寛容な心でしばらく見守っていただると、とてもありがたいです。

TGS2024では、ある学生作品を試遊した際に、そのことを強く感じました。

その作品は、同時に様々な要素のことを考えながら的確に操作をし続けなければならず、かなり複雑なゲームでした。チュートリアルでは、それぞれの要素を無理やり別個に切り出して説明していたため、「複数の要素を同時に考えながら進める」ということが、本作の核となるゲーム性なのだとは、なかなか気づけませんでした

そのように混乱した気持ちを抱きながらなんとかプレイしている状況で、横にいる説明員の学生の方が、かなり細かく「いまはこれをした方がよい」といった指示をしてきたため、正直、少なくないストレスを感じました。

本作に関しては、チュートリアルの作り方や試遊として切り出す部分にそもそも問題があったような気もしますが、説明員の方には寛容な心で見守ってほしかったと思いました。

試遊に来るプレイヤーの中には、必ずしもそのジャンルに習熟していない人もいるでしょうし、僕のようにあまり上手でないプレイヤーもいます。

そのような人でもその作品の面白さの一端が分かるためには、製作者サイドの心のハードルを下げておくことも大事なのかもしれないと思いました

おわりに

この記事では、先日のTGS2024にて様々なインディーゲームの試遊をする中で感じた、「よい試遊」と「悪い試遊」について言語化しました。

率直にいって、いちゲームプレイヤーに過ぎない僕のような人間が、プレイヤーを楽しませようと努力しているゲーム製作者の方々にものを申すなどおこがましいことであることは、十分に承知しています。

それでも、僕のようにゲーム製作に関わったことがない人間サイドからの「素朴な」意見が、もしかしたら何かの役に立つかもしれないと思い、今回の記事を書いてみました。

少しでも楽しんでいただけたのであれば、とても嬉しいです!

(了)

2024.10.13
Itaru Otomaru

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