見出し画像

それは、「ゲーム」と「現実」を地続きにした…不朽の名作『かまいたちの夜』について

今から30年前、1992年に初代『かまいたちの夜』がスーパーファミコン(SFC)向けに発売された時、僕は12歳の小学6年生でした。

当時の僕は本作に大きな衝撃を受けました。
本作は、自分のそれまでのゲーム観を一変させ、その後のゲーム人生にも少なからぬ影響を及ぼしました。

今回、現行機(PS4 / Nintendo Switch / Steam)向けに発売された『かまいたちの夜x3(トリプル)』を遊んでいると、その当時の衝撃や本作にまつわる思い出が記憶の底から甦ってきました。

本記事では、『かまいたちの夜』30周年に寄せて、僕が初代作を初めて遊んだときに受けた衝撃、そして、本作が今なお色褪せぬ、時代を超えた名作であることを力説しようと思います。


初代『かまいたちの夜』の衝撃

30年前に本作をプレイした瞬間、それは僕の中で「ゲーム」と「現実」が地続きになった瞬間だったということができます。

初代『かまいたちの夜』より。記念すべき最初の画面。(画像は『かまいたちの夜 ×3』Nintendo Switch版からキャプチャ。以下同じ)

当時小学生だった僕がそれまでに遊んできたゲームは、いうなれば「ファンタジーの世界の遊び」でした。『マリオ』にしろ『ドラゴンクエスト』にしろ、描かれているのは、現実の世界とは全く関係ない出来事でした。

しかし、本作『かまいたちの夜』は違いました。

当時、前作『弟切草』は既にプレイしていましたが、文明社会から隔絶された不気味な洋館が舞台だった『弟切草』とは違って、『かまいたちの夜』の舞台は、何組もの宿泊客で賑わう洒落たペンションでした。

グラフィックが実写取り込みであることや、舞台となるペンションが実在することも相まって、「本作は、自分が今暮らしている現代日本と地続きである」という強いリアリティを感じました。

本作の舞台となるペンション『シュプール』。ロケ地である白馬村のペンション『クヌルプ』に、一度は訪れてみたいと思ったものでした。残念ながら、今のところその夢は実現していませんが。

他にも、リアルで凄惨な殺人事件を扱った本作のストーリーも、当時小学生だった僕にとっては衝撃的でした。
前半の温かく楽しいペンションの夜から、急転直下、後半では宿泊客やスタッフが次々に殺害されてゆく展開のコントラストは、当時の僕にとってはとても恐ろしく、忘れられないものになりました。

また、本作のゲームシステムも斬新で個性的なものに感じました。

前述の通り、『弟切草』はプレイ済みでしたので、「文字でストーリーを読んで選択肢で自分の行動を選ぶ」という形式自体は、既に知っていたものでした。

ただ、本作の行動選択はそれに留まらず、推理パートでは犯人の名前を直接入力する必要があったり、とある場面では特定の画面で〇〇(一応伏せます)をする必要があったりと、選択肢以外の形式が採用されていました。

また選択肢においても、ちょっとした選択の違いでまったく異なるストーリーに分岐するので、ただ「ストーリーを読む」という以上に、まるで広大な道の世界を手探りで探索するような感覚を持ったのでした。

このように、僕は本作から「ゲームの世界に『現実』が侵食してきた」という強い衝撃を受けました。それと同時に、本作は僕のアドベンチャーゲームの原体験にもなり、のちのゲーム人生の少なからぬ影響を与えたのでした。

本作を「不朽の名作」たらしめているもの

30年前の僕に強い衝撃を与えた初代『かまいたちの夜』ですが、今回改めて遊んでみると、本作の魅力は全く色褪せておらず、時代を超えた「不朽の名作」になっていることに気づきました。

というのも、当時の製作陣が意図的にそうしたわけではないと思うのですが、本作からは、時代の変化によって古びてしまう要素が巧妙に取り除かれていて、いつの時代も成立する普遍的な物語になっているからです。

まず、「舞台が街から遠く離れた雪山のペンションであること」が秀逸でした。街中の描写を入れてしまうとどうしても時代性が出てしまうところですが、人里離れたペンションであれば、その違和感がかなり小さくなります。
(登場人物のほぼ全員がスマホはおろか携帯電話すら持っていない、という、若干の違和感はありますが)

作中で携帯電話を持っている人物は会社社長の香山さんだけ。現代の視点だとかなり違和感がありますが、許容範囲かなと思います。

他にも、「登場人物のグラフィックがシルエットであること」も、時代性を取り除くことに成功していると思いました。具体的なグラフィックを書き込んでしまうと、どうしても、そのファッションから時代を感じ取ってしまうわけですが、シルエットであることによって、キャラクターの姿を自由に想像することができます。(一方で『街』は、人物を含めて実写取り込みであるがゆえに、「当時らしさ」をもろに背負ってしまっています。この辺りはとても対比的だと感じます。)

元々は、SFCのスペック上の制約によって生まれた表現ですが、期せずして、本作を不朽の名作たらしめることに貢献しているといえます。

このように、本作の表現からは時代によって古びてしまう要素が取り除かれているからこそ、いつの時代のプレイヤーも、本作の物語が持つ、普遍的な面白さを感じ取ることができると思いました。

おわりに

本記事では、シリーズ30周年を記念作品『かまいたちの夜 ×3(トリプル」の発売に寄せて、初代『かまいたちの夜』に関する僕の思い出、そして本作を不朽の名作たらしめている要素について書きました。

ちなみに、2以降のシリーズ作品はというと、一通りプレイしてはいます。
特に、PS3とPlayStation Vitaで発売された『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』はトロフィーコンプリートするまで遊びました。

PlayStation Vita版『真かまいたちの夜』。かなりやりこんだはずなのに、どんな物語だったか、ほとんど忘れていたりします。

ただそれでも、僕の中で初代の存在は圧倒的です。
少年期に繰り返しプレイしたおかげで、そのストーリーは細かいところまで頭に刻み込まれており、深い思入れがあります。

今回のように、たまには子供の頃に好きだった作品を再訪して、その思い出を取り出してみるのも良いかもしれない。
今回は、そのように感じました。

(了)

2024.9.27 Itaru Otomaru


いいなと思ったら応援しよう!