![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/89962102/rectangle_large_type_2_ccb889cd7662a80c87b6318d9b4892c5.jpg?width=1200)
アクションラーニングが最強だ
プロジェクトチームをコーチしたり、組織開発を行うために何を学んだら良いかと聞かれたら私が迷わずお勧めするものが二つあります。
一つがT Group、もう一つはアクションラーニングです。
どちらもGroup Processを扱うものなのですけれど、正反対と言っても良いくらいアプローチが異なって見えます。しかし目指しているものは同じですし、二つはうまく統合できるはずのものでもあります。
T Groupに関しては別のnoteで語らせていただくことにして、今回はアクションラーニングについてなぜ私が推すのかを述べてゆきますね。
アクションラーニングとの出会い
始まりは2007年でした。今から15年前ですね。
前職の3MでL&D(Learning and Development)を担当していた私は、米国本社で開催される役員候補生向けのリーダーシップ開発プログラムにコーチとして参加をすることになりました。
まだコーチングを学び始めたばかりの私でしたが、360°フィードバックは日本語だけでなく英語でもできる状態ではあったので、本社の先輩コーチから色々と教えてもらおうと思い渡米しました。
プログラムにコーチとして参加するにあたり、事前に課題図書を指定されました。
こんな本で、俗に赤本と呼ばれていました。
ご覧の通り英語の本で、日本語訳はいまだに出ていないと思います。
飛行機の中で読んだのですが、これとコーチがどう結びつくのかがさっぱり分からないというかイメージできない状態で合宿所入りをしました。
このリーダーシップ開発プログラムについての詳細は、また機会があるときに触れますけれど、どんなことをやるかだけお伝えしておきましょう。
12名の選ばれた幹部候補生がCEOから経営課題を一つ与えられ、二週間合宿所(ウォールーム)に缶詰になって調査やディスカッションを繰り返して作った提案をCEOに提示するというものです。提案が採用されれば部門が作られたり人事異動が発生して、すぐに提案の実行に向けて会社全体で動き始めます。
このスタイルのリーダーシップ開発はGE(クロトンビル)でよく行われていたもので「ワークアウト(Work Out)」とも当時は呼ばれていました。
このプログラムの中でのコーチの役割は、この経営課題プロジェクトにいるチームメンバー全員と関わってそれぞれのリーダーシップを引き出し伸ばしつつ、メンバー間の関係性を作り上げ、提案の内容のレベルを上げるチャレンジをし、最終的には無事CEOに素晴らしい提案ができる状態にするというものです。
これだけ聞くと、なんかすごいことをする感じがしますよね。
プログラムの全容をコーチを集めて行う事前ミーティングで聞いた私は大いにビビりましたが、一緒にコンビを組んだベテランコーチが頼りになる人だったので自分は一歩引いて学ばせてもらおうくらいに思っていました。
いざプロジェクトが始まると、側からみていると「なぜそこで邪魔をするのか」と思えるような介入をチームがディスカッションをしているときに何度もしてきていて、みていて不安になる場面が何回もありました。
しかし、それが続くにつれてチームが急速に一つにまとまって結束してゆき、最終的には素晴らしい提案がCEOを唸らせるところまで行きました。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/89988337/picture_pc_eb03ba1c6b288f1c6ba0fb994378bc52.png?width=1200)
終わって振り返ってみて、コーチは一体何をしていたのか、その行動にどのような意味があったのか、何が起きていたのか全くといって良いほどわからないままに私は日本に戻ることになりました。正直、感動していましたし、圧倒されていました。
新米コーチとしてなんとかその場をやり過ごした私には、先輩コーチから「次はお前がアジアに戻って同じことやるのだ」と言われ、これは真剣にアクションラーニングを理解しコーチができるようにならないとまずいと感じ、日本に帰ってから基本から学び直そうと決意したのでした。
学び直しで感じた違和感
日本に戻ってからすぐに調べたところ、日本でアクションラーニングを推進している会社があることを知りました。
日本アクションラーニング協会というNPOで、トレーニングのプログラムは株式会社ラーニングデザインセンターというところが提供しています。
まずは基礎講座に早速申し込み、一から学んで最終的にはコーチの資格まで取ろうと意気込んでいました。
ところが、基礎講座で行われたのは私がアメリカで体験してきたプロジェクトのコーチングとは全く異なるもので「質問会議」と呼ばれていました。
当時の私の理解では、質問会議は問題解決手法の一つであり、一人が提示した課題について他のメンバーが意見を言うのではなく質問のみを行なってゆくことで、課題の真因と取り組むべきアクションが明確になってゆくもので、コーチはそのプロセスと仕切ってゆく役割…のように見えていました。
質問会議については、本が出ていますので、詳しく知りたい方は読まれてみると良いかと思います。
正直「あれ?おかしいな?これは自分が本で読み、体験してきたアクションラーニングとはかなり違うぞ」と疑問がよぎりました。
でも途中から「これは組織の質問力を鍛えるトレーニングなんだな」と割り切って、個人のコミュニケーションスキルアップのために続けようと考えました。
質問力が上がれば、コーチングだけでなくいろいろなところで応用範囲が広いですし、おそらく今は自分が分かっていないだけで資格をとって使って行くうちにきっと役に立てる方法がわかるだろう、くらいに考えてることにしました。
いろいろ学んだからこそ見えてきた凄さ
その後アクションラーニング・コーチの資格取得した私は、その後も継続的に質問会議(セッションと呼ばれます)を行う機会があれば、できるだけ時間を作って参加するようにしていました。
最初のうちはリアルのみでしたけれど、やがてzoomやTeamsでリモートでできる環境ができ、かなり便利に手軽に参加できるようになりました。
その一方で、組織開発分野にも傾注してゆき、T GroupやらGroup Processに関する他のトレーニング、組織開発について学びました。
この辺りは以下のnoteで書かせていただいています。
いろいろ学んでいる中で、何度も想起されたのがアメリカでのプロジェクトコーチ体験と日本で学んだ質問会議型のアクションラーニングでした。
そして、私は次第にアクションラーニングの凄さがわかってきたのでした。
というのも、組織開発やGroup Processを学んでゆくとわかるのですが、グループへの関わり方、人と人とのパワーダイナミクスを解き明かして、関係性を変えてゆくような取り組みには汎用性のある「正解」や「型」のようなものが存在しないのです。
結局その場をみて柔軟に対応をしてゆく必要があり、コーチでありファシリテーターは組織の中に深く入っていってその一員となってゆくような形にどうしてもなりやすいのです。それの良い悪いは別として。
もちろん、組織開発にもAI(Appreciative Inquiry)やOST(Open Space Technology)のような手法はありますが、これらは組織開発のある段階で行われるワークショップに過ぎず、組織開発の全体的な構造を理解して介入を行うようなものとは異なる異質なパッケージだと私は考えています。
ところが質問会議型のアクションラーニングは、終日のワークショップなどを設定しなくてもせいぜい60分でGroup Processについて体験し、学ぶことができます。
しかも、スクリプトに書かれている通りにやれば結果が出てしまうのです。これはすごいことですし、今のところアクションラーニング以外でこんなことができるものを私は知りません。
なぜアクションラーニングを推すのか?
具体的にアクションラーニングとは何をしているのか?
質問会議に限らず広義のアクションラーニングは、具体的経験→省察的観察→抽象的概念化→実践的試みをサイクルとして回し続けてゆくことで問題解決を通じたチーム学習を促進し、学習する組織をつくりあげるところに目的を置いています。
シンプルな言葉で言えば、アクションラーニング・コーチは学習する組織を作り出すための場づくりしているとも言えるでしょう。
そして、コーチという役割を持たないでもアクションラーニングに参加することで明らかにその人の質問力は向上し、コミュニケーションスキルやリーダーシップが改善されることになります。
実際、企業への導入事例ではアクションラーニングという言葉を使わずに「リーダーシップ開発」として行われていることの方が多く、大学の教育にもそれと同じ目的で取り入れられてもいます。
言ってみればこれは「学び方を学んでいる」とも言えるのです。
何よりもアクションラーニングがすごいと私が思うのは、Group Processを知らない、組織開発って何?みたいな人でも、60分程度の短いセッションを体験することでその片鱗を知ることができるところにあると思います。
もちろん、そこで起きていることを理解するにはそれなりの時間はかかるでしょうけれど、コンパクトなので何回もやってみて失敗しながら次第に上手くできるようになってゆくものだと思います。そう、アジャイルなアプローチでもありますね。
また、アクションラーニングは実践と振り返りの場ですので、実験的に他で学んだGroup Processやコミュニケーション手法を試してみることもできるでしょう。
このことは最近私がセッションの中で意識的に行なっていってることなのですけれど、本当にコーチの関わり方(Intervention=介入)というのは奥が深いものだと毎回毎回必ず学びが得られています。
コーチとしての質問力、人間関係の俯瞰的観察力、心理的安全性の作り方、プロジェクトをマネージするファシリテーション力…
私がアクションラーニングから学んだことを挙げてゆくとキリがないようにも思えますし、全てがそこにつながってゆくことができるものでもあると思っています。
素晴らしいチーム、学習する組織を作るような介入があなたにもできるようになるとしたらどうでしょうか?
興味が湧いた方はぜひ体験してもらいたいと思います。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/89989935/picture_pc_f92ea1f1bb0eef4dffb10efa107c3b49.png?width=1200)
いいなと思ったら応援しよう!
![いたる | 外資系人事の独り言](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169921833/profile_82b4bb6a2ba303799251210b4c2c23c3.png?width=600&crop=1:1,smart)