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「頑張り」の源泉

何かをやり遂げようとして途中で壁に当たったり、続けることが辛くなってきたりすることってよくあることだと思います。「やりたい」と思ったことがいつの間にか「チャレンジ」になり、それが「苦難」や「苦痛」に変わるのです。
そういったチャレンジを乗り越えてゆく人と、乗り越えられない人がいます。いったい何が違うのでしょうか?

信念を持っているから続けられるのだという人がいます。確かにそういう人もいるかもしれませんが、誰もがそんな強い信念を持てるものではないと思います。
経験や自信があるからだという人がいます。でも、そういうものがあることの方が稀であり、あったらチャレンジではないのだと思います。
GRITだという人もいます。成功した人たちは「やり抜く力」や「粘り強さ」を持っているのだ、と。

そうかもしれませんが、ではそれはどうやったら得られるのでしょうか?
何があると、あるいは何がないと人は粘り強くなれるのでしょうか?
本当に知るべきはそこではないかと思うのです。

どんな人でも頑張れることがあるし、頑張ることができると私は思っています。
そして、それを可能にするのがアイデンティティ(自我あるいは自己認識)ではないかと考えています。しかし、非常に残念なことに、多くの人はそれに気付いていないと思います。
つまり、「自分は何者であるか?」を。

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15年ほど前にNLPを学んだとき、Neuro Logical Levelと名付けられた概念(モデル)を知りました。NLPの第三世代の基底を作ったと言われるRobert Dilts氏によるものです。
レベルの中のどこに変化を起こすかによってそれが及ぼす効果が大きく変わってくるということがこのモデルで説明できます。

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Neuro Logical Levelについて
Robert Diltsが人類学者Gregory Batesonが提唱した「学習のレベル」をさらに体系化して人の意識のレベルを六段階に分けたモデルです。単に「Logical Level」と呼ぶ人もいるようです。通常の解説だと一番下から解説していますが、ここでは一番上から順に説明してゆきます。
Spiritual(自己を超えたもの)
ここでいうスピリチュアルというのは精神世界というよりも、自分自身の外の世界でありそことの関わりを指しています。組織のVisionであったり、家族であったり、コミュニティであったりです。「社会」という言い方をしても良いかもしれませんね。
Identity(自我・自己認識)
アイデンティティは「世界の中で自分が何者であると認識している」です。例えば、家族の中では父親や母親、組織の中ではマネジャーや経営者。でも肩書きの話ではなく、コミュニティの中で「サポートする人」と言った役割で語られることもあるでしょう。
Value/Belief(信念・価値観)
信念・価値観は、自分にとって大切なものです。何かのやるときの理由となるところであり、人に譲れない部分かもしれません。通常自己認識が定まると、複数の価値観がそこにくっついてきます。
Capability(能力)
価値や信念を実行してゆく上において必要となる知識やスキル、あるいは戦略といったものがここでいう能力です。一つの信念を遂げてゆくためには複数の能力が必要になってくるでしょう。
Behaviour(行動)
そして能力が表に見える形で発現したものが行動となります。能力が表に出るときにはいくつかの異なった行動、あるいは行動のセットになることが多いです。
Environment(環境・状況)
最下層にあるのが環境・状況です。環境や状況が変わったときにいつも行動が変わるとは限りません。逆に一つの行動はいくつかの状況において有効に働くことがあるはずです。時と場所と相手が環境・状況だとすると、それらが変わっても一貫して同じ行動を取るということは可能だというわけです。

Neuro Logical Levelは上位レベルで作られたものが下位レベルと一貫性があると効果的であるという説明でよく使われています。逆にそれがズレているとチグハグな行動や状況に合わないことになり、うまくいかなくなります。
つまり、上位レベルが変えることでとてもパワフルにもなれますし、チグハグが起きることもあるということです。

ここで仮説ですが、「人が頑張れるのはアイデンティティの危機が訪れたとき」ではないかと私は考えています。例をあげてみましょう。

あなたは自分の小さな子供と二人で川でボートに乗っていました。
最初は緩やかな川の流れだったのですが、支流から猛烈な流れが入ってきて、たまたまボードの上に立ち上がっていたあなたの子供はバランスを崩して吹っ飛ばされるように川の中に放り出されてしまいます。あ、という間のことでした。
川の流れが急に早くなりあなたの乗っているボードは子供からどんどん離れていきます。
泳げないあなたの子供は、川の波に飲まれないよう踠いていますが、今にも溺れそうです…

あなたが父親であっても母親であっても、きっとこういうときは川に飛び込むのではないでしょうか。あれこれ考えず、ほとんど衝動的に。
それは、あなたが親だからでしょう。ここで子供を見捨てたら自分は「親」ではない、という無意識的にせよ意識的にせよ強制力のあるアイデンティティがあるのです。
つまり、自分自身のアイデンティティの危機だから自分の子供を助けるために夢中で行動を起こせるのではないでしょうか。

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達成感があるとか、他者から認めてもらえるとかの報酬系のインセンティブでは、その報酬を放棄する(諦める)ことが簡単にできてしまいます。
しかし、自分のアイデンティティを捨てることは簡単にはできません。なぜならばそれがなくなるとあなたはあなた自身をあなたの考えている「世界」や「社会」から一旦消さないといけなくなるからです。
だから、そうならないように頑張れるのだと思います。

一方で、いくらアイデンティティがあってもそれを本人が強く自覚していなければ機能しません。
自分自身が認識しているアイデンティティでもそれが揺らぐことはありますが、それが人から与えられたアイデンティティではそのままでは無理が出てくることがあり得るのです。
だから、アイデンティティをその人にフィットさせる、あるいは自分でアイデンティティを見つけるということが必要になってきます。

組織開発や能力開発を行うときも、実はこのアイデンティティにアクセスするととっても強力です。それは「パーパス(Purpose)」とか「志」を確認することであり、それを自分自身を結びつけ直すことでもあります。
アイデンティティといきなり言われても日頃意識しているものでなければ、そう簡単に出てくるものではありません。よって、ワークショップでアイデンティティを扱うときはかなり時間をかけ、自分自身と向き合い時間や対話の時間を多く取ります。そして、それがしっくりとその人に馴染むまで待ちます。

旅に出て自分探しする、なんて人たちは一昔前は結構いました。自分には本当にやりたいことが他にある、あるいは、自分のやりたいことを見つけるために広い世界に出てみる、と言う動機がそこにはあったように聞いています。
しかし、本来の自分というのは外ではなく自分の中にしかありません。自分が何者であるのかを自分自身で強く意識してみる…それが本来の「自分探し」ではないでしょうか。

さて… あなたは誰ですか?あなたは何者ですか?

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