見出し画像

「アウトカム」とはどういうことか?

アウトカム(outcome)」という言葉があります。
心理学やセラピーを学んでいると時々出てくる言葉で、私が最初に聞いたのはNLP(Neuro Linguistic Programing=神経言語プログラミング)を学んだときでした。Outcomeの意味は分かるのですけれど、目標(Goal)でも目的(ObjectiveやPurpose)でもない言葉を使うんだなと不思議に感じたのを覚えています。

最近になってなぜかまたこの言葉をよく聞くようになってきました。
それも人事や組織開発の分野で。
コロナの後からかもしれません。ウェルビーイングについて語られるときに時々この言葉を使う人に出逢います。
もはやセラピストの間で使われる特殊な言葉ではなくなり、一般的になってきたのかなと思っていますけれど、よく聞かれるのが似た言葉や概念との違いです。

Outcomeを英和辞書を引くと、
結果とか、結論とか、成果が出てきます。
それって、ResultsとかConclusionじゃないの?
Outputと同じような考え方でいいの?
みたいに疑問を感じる人がいるわけです。

言葉の意味を考えるときには、その言葉の周辺にある言葉との差異を明確にしてゆくと言葉の輪郭のようなものがはっきりとしてきます。
Outcomeについての私の感じるところ、ちょっとまとめてみます。

アウトプット(Output)との違い

OutputとOutcomeってどう違うんですか?
は最もよく聞く質問かもしれません。

私は言語学者でも、英語の先生でもないので、自分が会話の中でどのような意味で使い分けているのからかしか語れませんけれど、分かりやすいかもしれない例から入ってみましょうか。
例えば、スタバに入ってフラペチーノをオーダーして、飲んだとします。

夏の暑い日、ちょっと疲れたから冷たくて甘い物が飲みたいというときにフラペチーノは最高に美味しく感じられるかもしれません。
その時、フラペチーノというインプット(厳密にはフラペチーノだけでなく夏の暑さもインプットですが)に対して、自分の中から出てくるものが「美味しーい」と言葉というアウトプットになるでしょう。

では、フラペチーノ飲んだときのアウトカムは?
「はー、幸せー」
という実感になります。
それは別の言い方では、やや固い表現ではありますが、清涼感であり、安らぎであり、満たされた感じかもしれません。

つまりアウトカムは、自分の力で自分の中から出てくるものではなく、何かの行動をした後などに自分にもたらされるものということです。

アウトプットについて言い方を変えると、インプットがあってアウトプットがある。機械に何かを入れてその機械から出てくるものがアウトプット。
フラペチーノの例で言えば、フラペチーノが体内に入ったことで、飲んだ人から出てくるのが「美味しーい」という言葉ということです。

反対語から考えてみる

言葉の反対語を調べてみると、より言葉の輪郭はよりはっきりしてきます。
Outcomeの反対語は何でしょうか?
Income」ですね。

Incomeで最も認識されている意味は「収入」とか「所得」でしょう。
辞書を引いてもそれ以上は出てこないかもしれませんが、「入ってくるもの」という意味があります。
どこに? 「自分の中」に。
外から自分の中に入ってくるものがIncomeで、Come inが逆になってる考えると分かりやすいかもしれません。

ではその反対語としてのOutcomeはどうなるでしょう?
やってくるものには違いはないけれど、自分の中にまで入ってくるわけではなく、自分の手の届くところにある状態になる、それに包まれている状態になる感じでしょうか。

そうですね。
何かの物が入ってくることをOutcomeとは言わないかもしれません。状態であったり、状況であったりのことを指している事がほとんどだと思います。

Outcomeはどう使うものか?

だいぶOutcomeの言葉の輪郭がはっきりしてきたでしょうか?
アウトカムとは自分の外側にもたらされる状況なのですが、それは自分が何かについて努力した結果とそれに対する周りの影響もあってこそ自分にもたらされた結果になる、というのが言葉のもつニュアンスだというのが私の解釈です。

だから、何かをやればこうなるという機械的なものでもありませんし、そこに何らかの因果律がある訳でもありません。
そういう意味ではOutcomeはかなり生成的な結果であるとも言えると思います。

では、この言葉をどのように使ったら良いのでしょうか?
特にビジネスにおいてこの言葉を使うとしたら、他の言葉とどのように区別できるでしょうか?

例えば、プロジェクトなどにおいては、プロジェクトの目的(Purpose)があり、その目的の達成基準となる目標(Goal)があると思います。
では、Outcomeはどのように表現されるでしょうか?

述べてきたようにOutcomeに一対一で対応する日本語訳はありませんので、もうちょっと柔らかい言葉になると思います。
「このプロジェクトの結果、どうなったらいいと思いますか?」とか
「このプロジェクトの成功によって、何が持たされると思いますか?」とか
「このプロジェクトの成功の評判は、どのように語られると思いますか?」
のように。
「望ましい状態」について外的なものと内的なものの両方を表現してもらうための問いかけから出てくるものがOutcomeです。

その表現には色々な形があり得ると思います。
人の感情や熱狂であったり、少し先の未来のビジョンであったり…
いずれにしても、それは少しポジティブで皆が前向きになれるようなこと。

プロジェクトによってはそれをStatement(宣言文)のようにまとめることもできるでしょう。それを目にしたときに皆がやる気を鼓舞されるスローガンのように働くはずです。
こう言うとビジョン(Vision)のように思えるかもしれませんが、ビジョンと違うのはアウトカムが個人個人の心の中に外からもたらされる幸福感のようなものを内包しているところではないかなと私は思います。

Outcomeを設定すると、問題解決型のアプローチになりにくいと言うメリットもあるかもしれません。
ビジネスの世界で行われることには、常に目的や目標があり、それを阻害するものをなんとかする問題解決型の思考に陥りやすいです。一旦問題解決型に入ってしまうと、原因解析や犯人探しが始まり、前向きな気持ちになりにくかったり、ストレスを感じ続けることになりかねません。

求めているOutcomeの状態、望んでいる状態をできるだけ鮮明にすることで、そこに近づいてゆくためのドライブを作るとともに、人やモノを原因にするのではなく、それを作り出してゆくための構造や仕組みにも目がいくようになりますし、そうすべきだと思います。

目標や目的を振りかざして人を鼓舞するのは限界があります。
その先にあるもの、その先にもたらされるアウトカムを考えてみる、対話してみることで人はもっと前向きに協働していけるのではないかな、と私は思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました ( ´ ▽ ` )/ コメント欄への感想、リクエスト、シェアによるサポートは大歓迎です。デザインの相談を希望される場合も遠慮なくお知らせくださいね!