世界のLGBT映画の秀作を楽しむ映画祭が今年も東京で開催!
東京では28年間に渡って、毎年開催されているセクシャルマイノリティの映画祭があることを、あなたは知っていましたか?
日本のLGBT関連のイベントで間違いなくもっとも長い歴史を持つ
「第28回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」
が、今年も7月に開催されます。
この映画祭は、セクシャルマイノリティを題材にした世界各国の映画の中から、その年の話題作・秀作の数々が選出され上映されています。
昨年から今年にかけて大きな話題をよんだ「ゴッズ・オウン・カントリー」は昨年の第27回で日本初上映されました。また短編映画として異例のロングラン上映となった「カランコエの花」は一昨年の第26回のコンペティションに出品、観客投票でグランプリに選出されました。
今年も昨年に引き続き、東京ウィメンズプラザとスパイラルホールの2会場を使い、2週続けて週末の6日間にわたり全12プログラムが上映されます。
発表された今年の開催概要とラインナップをご紹介します。
■第28回レインボー・リール東京
会場:東京ウィメンズプラザ、スパイラルホール
会期:
東京ウィメンズプラザ 2019年7月5日(金)〜7月6日(土)
スパイラルホール 2019年7月12日(金)〜7月15日(月・祝)
主催:NPO法人レインボー・リール東京
各作品の上映スケジュールは映画祭公式サイトでチェックしてください。
レインボー・リール東京だからこその楽しみとは?
1)二度と見られない映画たちと一期一会の出会い
昨年の第27回で上映され、その後イベント上映を経て劇場公開にこぎつけた「ゴッズ・オウン・カントリー」という特例はあるものの、レインボー・リール東京で上映される作品はメジャーの配給会社が扱わないものがほとんどです。つまり、日本では劇場公開も、DVDなどで発売される可能性も非常に少ないのです。この映画祭で見ない限りは(特に海外作品の場合は日本語字幕がついた状態では)一生見る機会がない作品がほとんどであると言っても過言ではありません。そんな一期一会の状況で見た映画が感性にフィットしたなら、そこで得られる感動はあなたの心に深く刻まれること確実です。
2)幅広いラインナップが創る映画を満喫する興奮
メジャーな配給会社が扱わない小さな作品=アート系の難しそうな映画、と思い込んでしまう方も多いかもしれません。でもレインボー・リール東京で上映される作品の幅はとても広いのです。LGBT当事者だからこそ実感できる心の痛みを共有するものから、ミュージカル、家族との関わりを描いたドラマ、みずみずしい青春時代を描くロマンス、興味深いドキュメント、秀作短編映画まで実に多種多彩。とりあげるセクシャリティも、また様々です。当事者はもちろん、当事者の気持ちを理解したいと考えるアライの皆様にも興味深く見ていただける作品が多いです。
3)同じ感覚・感性をもつ仲間たちと感動をシェアする喜び
例えば海外の映画の字幕版を劇場で見た時に(字幕を読んでいるだけでは)ちっとも笑えない場面で、場内の外国人が爆笑していた経験はありませんか? 生活環境や経験が異なると理解できないスラングやパロディなどがあるのは当然のこととはいえ、そんな時はなんだか悔しい思いを抱いてしまいますよね。レインボー・リール東京で上映される映画には、LGBT当事者やアライだからこそ理解できたり、爆笑できる場面が必ずあります。その感覚を多くの人とシェアしながら楽しむ映画体験は、この会場以外ではなかなか味わうことができない、レインボー・リール東京ならではの喜びと言えるでしょう。
今年も2会場で開催されます
昨年に引き続き、今年も東京ウィメンズプラザとスパイラルホールの2会場での開催となりました。海の日を挟む連休(7月12日〜15日)に行われるスパイラルホールでは4日間に渡って全プログラムが上映されますが、その前の週末(7月5日〜6日)東京ウィメンズプラザでは6プログラムが先行で上映されます。
スパイラルホールに連日通って見たい作品を全部見るのもありですし、東京ウィメンズプラザとスパイラルホールの上映作品を上手くチョイスして分散して見るのもありです。
なるべく多くのプログラムを見たいなら、両会場を組み合わせて見ることをおすすめします。正直、スパイラルホールで3〜4プログラムを続けて見ていると首とか腰とかが結構しんどくなってきますので。
注目の全25作品ラインナップ
今年も世界の映画祭で話題となったセクシャル・マイノリティを題材とする珠玉のドラマやドキュメンタリー全12プログラムが揃いました。上映される作品の多くが日本初上映であり、ワールドプレミアとなる作品(QUEER JAPAN)もあります。
今年のラインアップを見ると、例年以上にドラマチックな作品が目立つと感じました。LGBT映画だから、と構えることもなく純粋に物語を楽しめそうな作品が多そうで、実に楽しみです。
また、毎年注目が集まる短編映画集は、アジア・太平洋地域でのLGBT映画支援を目的に2015年に設立されたAsia Pacific Queer Film Festival Alliance (APQFFA)に加盟する映画祭が推薦する5本の作品が『QUEER×APAC 〜APQFFA傑作選2019〜』として上映されます。
全12プログラム16作品のすべてをご紹介します。
『マリオ』
[英題]Mario
[監督]マルセル・ギスラー
2018|スイス|119 分|スイスドイツ語、ドイツ語
スイスのジュニアチームで一部リーグへの昇格を目指すサッカー選手のマリオ。ある日、ドイツからストライカーのレオンが移籍してくる。
ツートップとして息の合ったコンビネーションを見せる二人は、フィールドの外でも心を通わせ、いつしか恋に落ちていく。しかし噂がチームにも広がり始め、マリオは決断を迫られることになる。プロサッカー界のホモフォビアを鋭く描いた本作は、スイス映画賞 2018 で主演男優賞・助演賞を受賞。
『ソヴァージュ』
[英題]Sauvage
[監督]カミーユ・ヴィダル=ナケ
2018|フランス|99 分|フランス語
22 歳の青年レオは街娼として小銭を稼いでいた。定住する場所もなく、次から次へとやって来る男たちに身体を差し出し、慰めを求める。そんなレオの孤独な人生は、同じ男娼として働く男に恋をしたことで転機を迎える。長編処女作ながらカンヌ国際映画祭批評家週間 2018 でプレミア上映された後、各国の映画祭を席巻した問題作。主演のフェリック・マリトー(『BPM ビート・パー・ミニット』)の繊細ながらも生々しい演技に目を奪われる。
『カナリア』
[英題]Canary
[原題]Kanarie
[監督]クリスティアン・オルワゲン
2018|南アフリカ|123 分|アフリカーンス語、英語
アパルトヘイト下の南アフリカで、18 歳のヨハンは徴兵制のため軍の聖歌隊に配属される。新しい仲間と共に過酷な訓練に耐え、ツアーで全国を巡るなか、ヨハンは宗教や軍隊の意義について自問し、自身のセクシュアリティとも向き合うことになる。聖歌隊の美しい歌声と共に、芸術の力と個人の尊厳を描いた感動の青春ミュージカル映画。ほぼワンシーン・ワンショットで撮影されたカメラワークが見事。
『1985』
[英題]1985
[監督]イェン・タン
2018|アメリカ|85 分|英語
1985 年のクリスマス、広告マンのエイドリアンはニューヨークからテキサスに帰郷する。心に重い秘密を抱えたまま、保守的で信心深い両親、年の離れた弟、高校時代のガールフレンドに再会するが…。エイズが流行しつつある時代を背景に、静謐なモノクロ映像で語られる感動の家族ドラマ。TV ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』のコーリー・マイケル・スミスが
主演、ヴァージニア・マドセン、マイケル・チクリスら実力派俳優が脇を固める。
『アスリート~俺が彼に溺れた日々~』
[英題]Athlete
[監督]大江崇允
2019|日本|89 分|日本語
妻子持ちで元競泳選手の航平は、ある日突然、妻に離婚届けを突きつけられる。ショックの余り、酒に溺れて迷い込んだ新宿二丁目で、ゲイの美少年・悠嵩との運命的な出会いが訪れる。男性相手にチャットボーイをする傍ら、アニメ作家を夢見る悠嵩は、病に倒れた父親にカミングアウトできずに思い詰めていた。それぞれに大きな悩みを抱える二人は、互いを必要とし支え合うかのように、戸惑いながらも惹かれ合っていく…。
『ジェイクみたいな子』
[英題]A Kid Like Jake
[監督]サイラス・ハワード
2018|アメリカ|92 分|英語
ニューヨーク在住のアレックスと夫のグレッグは、アクションフィギアよりもディズニーのお姫様に興味がある息子ジェイクの小学校選びに奔走している。そんな折、幼稚園の園長からジェイクの性自認について見解を述べられ、夫婦は子供のためにベストな選択は何かと苦悩し対立していく。クレア・デインズ、ジム・パーソンズ、オクタヴィア・スペンサーら豪華キャストが共演する、サンダンス映画祭 2018 出品の話題作。
『クィア・ジャパン』
[英題]QUEER JAPAN
[監督]グレアム・コルビーンズ
2019|日本|101 分|日本語
現代の日本における LGBTQ+カルチャーは、万華鏡のようで、様々なジェンダー/セクシュアリティの人々が、型にはまらない生き方が選択できる社会になりつつある。3 年をかけて日本各地で撮影された 100 本を超えるインタビューを厳選した本作では、ヴィヴィアン佐藤や田亀源五郎、マーガレット、上川あや、レスリー・キーら錚々たる登場人物が、セクシュアル・マイノリティとして生きる上で抱える喜び、苦しみ、葛藤などを、自身の言葉で語っている。
『花咲く季節が来るまで』
[英題]Between the Seasons
[原題]계절과 계절 사이
[監督]キム・ジュンシク
2018|韓国|98 分|韓国
小さな町でカフェを経営するヘスは、ひょんなことから常連客の女子高生イェジンをアルバイトとして雇うことになる。やがてイェジンはミステリアスな雰囲気のヘスに密かなときめきを覚え、自らのセクシュアリティに気づく。しかし、ヘスには誰にも言えない秘密があった。それぞれ事情を抱える女性同士の関係を、繊細な感情表現と巧妙なストーリーテリングで描いた傑作ヒューマンドラマ。釜山国際映画祭 2018「Korean Cinema Today」部門出品作。
『ビリーとエマ』
[英題]Billie and Emma
[監督]サマンサ・リー
2018|フィリピン|107 分|フィリピン語、タガログ語
1990 年代半ば、フィリピンの田舎町。マニラから転校してきた問題児のイサベル(愛称ビリー)は、厳格な女子校になじめずにいた。優等生のエマはビリーを遠巻きに見ていたが、学校の課題でペアを組んだことをきっかけに二人は急接近する。そんな時、エマの妊娠が発覚して…。『たぶん明日』(RRT2017 上映)のサマンサ・リー監督最新作。ティーンの妊娠、キリスト教と同性愛といったテーマを扱いながらも、瑞々しい青春
映画に仕上げている。
『トランスミリタリー』
[英題]TransMilitary
[監督]ガブリエル・シルヴァーマン、フィオナ・ドーソン
2018|アメリカ|92 分|英語
軍務中のトランスジェンダーの存在を長年無視してきたアメリカ軍。
2016 年、ついに国防長官から公式にトランスジェンダーの入隊受け入れ方針が発表される。その背景には、軍高官や政府機関と粘り強く対話を続けた 4 人のトランスジェンダー軍人がいた。SXSW 映画祭 2018 長編ドキュメンタリー部門観客賞を受賞した、“今”必見の一作。現トランプ政権下、トランスジェンダーの軍での立場はいまだ不安定で、平等のための戦いは進行中だ。
『エミリーの愛の詩』
[英題]Wild Nights with Emily
[監督]マデリーン・オルネック
2018|アメリカ|84 分|英語
19 世紀半ば、10 代のエミリーとスーザンは親友となり、やがて愛を交わす仲に。のちにスーザンはエミリーの兄と結婚するが、二人は隣人となり、生涯にわたり密かに関係を続ける。個性派女優モリー・シャノンを主演に迎え、詩人エミリー・ディキンソンの知られざる一面をコミカルタッチで描いた伝記映画。通説では隠遁生活を送っていたとされるエミリーだが、スーザンへの手紙から情熱的な生前の姿が浮かび上がる。
QUEER×APAC2019~アジア・太平洋短編集~
アジア・太平洋地域の新作短編映画を紹介するプログラム。今年は「ビタースイート」をテーマに、ヴェネチア国際映画祭受賞作を含む 5 作品をセレクト。
『ブラックリップ』
[英題]Black Lips
[監督]エイドリアン・チャレラ
2018|オーストラリア|15 分|英語、北京語
密漁されたアワビを高値で売りさばく中国系移民ホン。ある日、アワビの供給元のダイバーを訪ねたホンは、そこでダイバーの恋人の男に出会い、二人の壊れかけた関係に気づく。
『ヒジュラーの恋』
[英題]Duality
[原題]Dvita
[監督]ヴィシャル・ヴァサント・アヒレ
2017|インド|15 min|ヒンディー語
インドで第三の性とされる「ヒジュラー」のコミュニティーに属するラッジョ。町で見かけた女性にひと目惚れしたラッジョは、コミュニティーと社会の両方から許されない恋に悩む。
『ジェントルマン・スパ』
[英題]Gentleman Spa
[原題]癡情馬殺雞
[監督]ユー・ジーハン
2019|台湾|18 min|北京語
ゲイ向けマッサージ店で清掃員として働く青年ハオ。店の客カイと知り合いになったハオは、カイに水泳を教えてもらうことになる。次第にカイへの気持ちを募らせていくハオだが…。
『最高のプレゼント』
[英題]Gift
[原題]Kado
[監督]アディティア・アフマッド
2018|インドネシア|15 min|インドネシア語、マカッサル語
男の子の服を着て男友達とつるむ少女イスフィ。親友ニタの誕生日が近づき、イスフィはニタを喜ばせるプレゼントを考える。ヴェネチア国際映画祭 2018 オリゾンティ部門短編映画賞受賞。
『帰り道』
[英題]A Blind Alley
[原題]골목길
[監督]オ・スヨン
2017|韓国|27 min|韓国語
下校中に見知らぬ男に胸をつかまれた女子高生ムニョンは、いつもの通学路を避けるようになる。親友ウンジェは様子のおかしいムニョンを心配するが、ムニョンは理由を話そうとしない。
各作品の上映スケジュールは映画祭公式サイトでチェックしてください。
あなたの感性にフィットしそうな作品はありましたか?
まだレインボーリール東京を体験したことがない方は、ぜひ一度会場に足を運んでみてください。映画祭特有の高揚感や楽しさを実感したら、毎年通いたくなること確実です。
例年、前売りでチケットが完売になる人気作品もあります。興味のある作品のチケットは早めにゲットしたほうがいいでしょう。今年のチケット発売情報は6月中旬に映画祭公式サイトで発表予定とのこと。そちらもチェックしてください。
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