75.コロナで日本人観光客がいなかったとき
ブラッチャーノのタワマンに引っ越したのが2019年5月半ば。
6月からはコンスタントにお客さまが来て順風満帆な移住生活になるはずだったのに、その年の10月を最後に日本人観光客は誰もブラッチャーノにやってきませんでした。
コロナ前、最後の一時帰国
誰にとっても同じことでしたけど、翌年からコロナでひどいことになるなんて全く予想することもできず、2019年11月の一時帰国ではイベント盛りだくさん。
港区海岸のマンションは売ってしまっていたので、友人のお店を借りて各種イベントを実施しました。
1ヵ月ちょっとの滞在に予定をたっぷり詰め込んで家族時間をそんなに作らずブラッチャーノに戻ったのは、翌年2月に再び日本に帰るつもりだったからです。
そのときこそ、もう少しゆっくり過ごそうと思っていたのですが、航空券を買おうかと思った1月終わりごろから事態は急変していきました。
イヤな予感がして2月の一時帰国は見送ります。
そのあとすぐ空港封鎖になったのでそれで良かったです。
ブラッチャーノの日常を満喫する
日本に行くどころか、ブラッチャーノから出られない日々が続きました。
お客さまも来ないし、やらなければいけないことは就労ビザへの切り替え手続きだけ。
それ以外にあの頃の私にできたことといえば、免疫力を高めてコロナ感染しないようにすることぐらいです。
3月10日から始まったロックダウンは4月3日までの予定が13日までに延長され、それがさらに伸びて5月3日まで続きました。
5月4日から「コロナと共に生きていく」というキャッチフレーズの元に第2フェーズに突入します。
移動制限もゆるやかに解除され、隣町の友だちとも会えるようになり、しばらくすると少人数のホームパーティーもできるようになりました。
この頃から私は、友人たちと有機農法の家庭菜園を始めています。
ちょうど日本からタネを持って来ていたので日本菜園を作ってシソや小松菜を収穫したり、それをイタリア人にふるまったりという貴重な経験もできました。
もともと夏のイタリアでは庭やテラス席での食事が好まれます。
というわけでコロナ禍の夏は、もっぱら畑やお庭でのホームパーティーをしていたのですが、お客さまの多い夏にはできなかったことなので楽しかったです。
湖水浴や海水浴にもよく行きました。
こちらも屋外でのんびりなので感染リスクは低いです。
知り合いのヨガ講師に頼んで湖畔でやるヨガを企画したのもこの夏です。
友人に声をかけて少人数での開催ですし、やはり屋外なので感染リスクも低く、なにより心身ともに癒されました。
こうした企画ものもお客さんのいる時だと、なかなかできないことです。
思えばこれが本来のイタリア「庶民」の夏の正しい過ごし方、1ヵ月も外国のビーチへ行くようなバカンスはみんなのものではありません。
遠くへ行かなくても、お金をかけなくても、ブラッチャーノでなら十分に楽しく豊かなイタリアの夏体験ができることを改めて実感しました。
日本に帰れず、日本からのお客さまも来られず、ひとりで寂しい夏を過ごすことになるかと思いきや、2020年の夏、もしかしたら日本にいるより自由度が高かったかもしれません。