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79.移住者としてイタリア地域社会になじむ方法

お客さまのいらっしゃらない時はものすごくヒマです。
ひと通りの家事をしますが一人暮らしなので手抜きし放題、そんなに大変じゃありません。
他にやることと言えば各種SNSへの投稿をするぐらい。
イタリア生活にも慣れてきたし、持て余した時間でいろいろなことを始めてみました。


スポーツクラブに通う

東京からひとりでブラッチャーノに来て住むことになり、最初は大家さんとお世話になった不動産屋さんぐらいしか知り合いがいませんでした。
時間が経つにつれ、タクシー運転手や湖畔の農園マンマやお店の人などと顔なじみになり、旧市街へ引っ越した4年目あたりから一気に知り合いが増えていきました。
旧市街は独特な雰囲気で住人同士の距離感が近いからです。

引っ越した先の家のもろもろが落ち着いたころ、前からずっと行ってみたいと思っていたスポーツクラブへ通うようになります。
柔軟体操やダンス、ウォーキング、ヨガなど好きな種目に参加できて、中でもピラティスクラスは人気で多くのイタリア人が来ていました。

外国からの移住者が地域に溶け込むのに、こうした活動はオススメかもしれません。
私が通っていたのは月、水、金の夕方のクラスです。
週に3回も顔を合わせることになるので、気の合う人がいればすぐに友だちになれます。

そこで私はあるイタリア女性から声をかけられました。
ホームパーティーのお誘いです。
イタリア人は好奇心旺盛なタイプが多く、ブラッチャーノに住む日本人なんて珍しいこと、この上ありません。

こうしてピラティスをきっかけに新しい交流の輪が広がっていきました。

アンティグラビティ、無重力ヨガですけどクラスのたびに写真を撮る不思議
イタリアあるある、7、8月はスポーツクラブも休業
持ち寄りで打ち上げ会。私は柿の種を持っていきました

みんなで家庭菜園を始める

ある日、新しくできたピラティス友だちがたくさんの苗をクルマに積んでレッスンにやってきました。
家まで送ってくれる道すがら、彼女は最近、家庭菜園を始めたのでそこに植えるための苗を買ったのだと言います。

そして、私も一緒にやらないかと誘うのです。
家庭菜園なんて日本でもやったことがありません。
しかし、私は食べることが大好きですし、中でもイタリア野菜には目がありません。
イタリア野菜の美味しさにほれ込んで移住を決めたようなものです。

それでもやるかどうか悩んでいたら、ある日、みんなで行った海の帰り道、今日はこれから菜園に行くと言っていきなりその場所へ連れていかれました。
しかしそこは、私の考えていたような家庭菜園ではなく、「畑」と言ったほうがふさわしいほどの規模で行われているものだったのです。

2019年の秋から始めた家庭菜園
土地をならし秋冬野菜の苗を植えているところ
5年目のいま、野菜と雑草の区別がつくようになりました

有機農法で育った苗や種を購入し、完全有機栽培をしようという試みです。
最初のころは雑草か苗かの区別もつきませんでしたが、今では見ただけで何の野菜の苗かまで分かるようになりました。
今年で5年目になりますが、イタリア野菜の育て方から食べ方までさまざまなことを学んでいます。

イタリアの野菜というのは、放っておいても意外とたくましく大きく育ちます。
トマトの苗も脇芽かきなどせず、そのまま育ち放題です。
それでもしっかり大きな実をつけるので、有機農法の効果ばかりでなく、土と水と太陽に恵まれているのだとしみじみと思います。

信徒じゃないけど教会へ

今からちょうど1年前、そんな畑友だちのひとりが、一緒に教会のボランティア活動をやらないかと誘ってきました。
彼女はすでに長い間、家族ぐるみでやっているとのことで、それは教会で施される日曜ランチの提供でした。

経済的に余裕のない人、一人暮らしだけれど誰かと食事をしたい人、そして移民としてイタリアにやってきた外国人など誰でも来て食べることができます。
驚いたのはイスラム教徒なのに来る人もいることです。
彼らは豚肉を食べないので、彼らのためだけに別メニューも作るなどの配慮もされています。

教会には立派な厨房と食堂があり、土曜の朝から仕込みをして、日曜の13時から提供して、終わったあとの片付けや掃除までなので、2日がかりのボランティア活動です。
3週間に1回、私の当番が回ってきます。
そろそろ1年になるので、ボランティア仲間ともすっかり仲良くなりました。

食材は近隣店舗から寄付してもらう
イタリア人ってあんまりまな板を使いません
ふざけて掲出した日本語メニュー
イタリア語で書き直しました
前菜から始まるイタリア料理のフルコース
プリモピアット、パスタのアマトリチャーナ
セコンドピアット、メインとコントルノ、副菜盛り合わせ
イスラム教徒用の牛肉100%ハンバーグ
デザートのチョコレートは復活祭の残りもの

ボランティアというと日本ではたいていの人が、他人のために何かをしてあげる「奉仕活動」を思い浮かべると思いますが、イタリア語の辞書を引くと……

[形]
1 自発的な
2 自由意志による, 任意の, 随意の
offerta volontaria|任意の献金
assistente ~|(大学の無報酬の)副手
[名](男)
1 志願兵
esercito di volontari|義勇軍.
2 [(女) -a]ボランティア, 篤志奉仕家.

コトバンク 伊和辞典 (kotobank.jp)

「自発的」とか「自由意志」ということです。

誰かのためにやっているのではなく、自分が好きでやってるというニュアンスが強まります。
私もまさにその通りで、主に自分のイタリア料理力を高めるために参加してるサークル活動という感覚です。
料理の好きなイタリア人が集まり、食材を集め、レシピのアイディアを出し合い、1回の昼食会を作り上げていく感じ。

勉強になるだけでなく地元情報も入ってきますし、そう言えば私も滞在許可証の件でこの教会の神父さまを通して移民弁護士を紹介してもらったのでした。
さまざまな地域の輪に入っていくことで、移住生活がより豊かに楽しく過ごしやすくなると思います。

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