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サユリ、ガチで神だった

白石晃士監督の最新作「サユリ」公開ということで、よだれ垂らしながら公開初日に飛びついたJホラーオタクの感想でございます。

初日に観ておいて今日まで感想を上げてなかったのは、普通にバカだからです。海とか行ってました。お箸でカツオノエボシ拾おうとして友達にめちゃくちゃ怒られました。

超絶長文なので、頼んだ唐揚げがいつまでも来ない時とかに貧乏ゆすりしながら読んでください。

原作となった押切蓮介先生の同名漫画は完結済みですが、なんかネタバレするのは悔しいのでストーリーの要点はぼかして書いていきます。

いや、やっぱ白石監督やべえ。色んな意味で。


独断と偏見に基づく見どころ

ここがよかったぜ!ポイントを紹介していきます。

・ジャンプスケアマシマシ、劇場仕様

白石監督の作品ってそんなにジャンプスケア(びっくりさせる演出)が多くないイメージを勝手に抱いてたんだけど、今回は普通にドカンドカン音鳴らしてビビらせてくるので楽しかったです。

・ばあちゃん、カッケェ〜!

何につけても、ばあちゃんがクッソカッコいい。

予告編でわかる通り、認知症の祖母が怨霊に家族をやられて覚醒!からの大暴れ!というストーリーなわけですが、いくらなんでもババアかっこよすぎる。

ババアが銭湯の前でヤニ吸ってるだけのシーンがこんなにスタイリッシュでいいのか。

タバコを吸う口元のクローズアップから始まり、煙を吐き出しながらご機嫌なカラーサングラスをスッとかける春枝(ばあちゃん)が映る。

このカット、謎の色気があってヤバい。熟女好きの気持ちが初めてわかった。おまえのようなババアがいるか!

原作だとひたすらババアつええ!!って感じだったけど、映画版のババアはなんかめっちゃおしゃれでした。

・白石作品屈指のゲロラッシュ。

文字通りのゲロラッシュだった。ノーマルゲロと血反吐、合わせて5ゲロ。

ご存知の通り、白石映画は登場人物がよく吐きます。ご存知ねえよ!って方は適当に二、三本見てほしい。多分どっかで誰か吐くから。

かわいい女の子だろうがオッサンだろうが情け容赦ご無用のゲロゲロりん。

ゲロあるかな〜ってワクワクしながら観に行ったら5回もやってくれたんで、ハッピーでした。

正確にカウントしたわけではないので、ぜひ劇場でゲロカウントを。

・交錯するバイオレンス。

終盤は暴力が止まらない。いろどり豊かなバイオレンスランチプレート。動脈スプリンクラー、血溜まりファウンテン。

こっちがあっちを暴行したと思ったらそっちがこっちを暴行して、あっちがこっちを暴行して……と暴力の三すくみが発生している。見てるだけで痛い。

白石作品のバイオレンス描写、わりとスッキリするタイプと胸焼けするタイプに分かれてると思うんですよね。

『コワすぎ!』シリーズとかはスッキリ系。ご飯食べながら見れる。ガパオライスみたいなひき肉系はなんとなくキツいけど。

『殺人ワークショップ』『グロテスク』あたりは胸焼け系。しわしわピグレットみたいな顔で見るやつ。ダイエットにおすすめ。

で、今回の『サユリ』はどっちでもないというか、どっちでもあるというか。

「やっちまえ!」と「やめてくれ!」が同時にくるので、感情が凪いじゃう。終盤もう何だかわかんなくて涙目で微笑んでましたからね、わたくし。

ばあちゃんもサユリへの復讐として凶行に走るわけですが、やり方がいかつすぎてあんまりヒロイックに見えない。

全員に非があって全員が自分のために暴力を振るっているという狂乱の展開でした。

ばあちゃんの苛烈極まるバイオレンスは原作にもあったけど、白石監督がうっかり九条一家の過去を掘り下げてしまったことによって原作になかった暴力が追加されている。

ここの改変も若干賛否分かれてる気がします。

原作サユリは自業自得で幽霊になったのに逆恨みで則雄一家を取り殺してるので、もはやただの人の形をした悪。

一方、映画版のサユリはちょっと状況が違うんですよね。

若干キャラクター性が変わった感じは否めません。

まあ、サダカヤの時も俊夫がすげーアクロバティックになってたので、こんなもんかなあって

・リアリティラインの調整

平成の漫画作品を令和に実写映画化する、となった時に、リアリティラインを調整するのは必須になるじゃないですか。サユリはそこが絶妙だった。

まず、サユリが太って肌荒れした姿になってたところ。サユリは引きこもりだったので、このビジュアルだとより説得力がある。

しかも、ちゃんと原作通りの少女形態も登場してたり、サユリが今の姿になってしまった残酷な原因も描かれてたりで、禍根を残さない原作改変でした。

住田ちゃんはミステリアスなヒロインからお腐れオタク女子になってたし。

実際、唐突に話しかけてきちゃう暗めの女の子ってああいう感じですよね。

でもただの付きまとってくる変な陰キャにならず、ちゃんと可愛かった。

住田役の女優さんがすごい可愛い方だったのもあると思う。

・セリフのインパクトは満点

白石作品、大体決めゼリフみたいなのがあるんですよね。それもネットミーム化するぐらい強烈なヤツ。

「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」とか、「運命に逆らえってな!」とか。

で、もちろん『サユリ』にも名言ありました。

やっぱり原作由来の「命を濃くしろ」は最強だなと思うけど、白石印の決めゼリフもちゃんとあるんですよ。そしてこれがひどかった。

「元気溌剌おま◯こまんまん!!!!」て。

映画館で吹き出しました。隣の人はジャンプスケアのたびにビクン!ってなっててそれどころじゃなさそうでしたけど。

サユリはぜひとも応援上映をしてほしい。「復讐じゃ!!!」と「元気溌剌!!!」をみんなで一緒に叫びたい。もういっそ喫煙もOKにしてほしい。春枝とタバコ吸いてえ。

あと、則雄と住田ちゃんにヤジを飛ばしたい。

・押切白石タッグ最強説

ほんとに、自分が押切先生と白石監督両方のファンだっていうのを差っ引いても名コンビだった気がしますね。怪異より生身の人間のほうがつええ!って信じてやまないところがほんとにベストマッチ。

押切先生のクセの強〜い作風と白石監督のアクの強〜い作風を一個の鍋で煮込んだらなんかちょっとまろやかでおいしくなった、みたいな映画だった。

白石節少なめではあった気がしますが、原作の強烈なセリフを点々と残してあるおかげで薄味感は皆無でした。

ただ、お二人のうちどちらか一方だけのファンだと、セリフに物足りなさを感じる人もいるかもしれない。

アーティスト二組のタイアップ曲特有の「なんかうっすら両方の味がする〜!」感って言ったら伝わると思う。

KICKBACK聴いたら米津玄師の曲にも常田大輝の曲にも聞こえてよくわかんなくなるアレ。

しかし、この二人はJホラーに新しい潮流を起こすんじゃないかって気さえしてます。

最近人気出てきてません?怪異殴る系とか因習ぶっ壊す系とか。

お二人には是非とも物理型ホラーの道を切り開いていただきたいです。

・散りばめられた白石エキス

物足りないとか言いつつ、ファンには嬉しい白石エキスがたくさん含有されてた。

コワすぎキャラにしか見えない人物がチラッと登場した時なんか一人で沸き散らかしました。

で、見間違いかなと思っていたら役名も演者さんもコワすぎのまんまだったので、エンドロールでもっかい沸きました。

映像業界に関わらなかった世界線のあいつなのかな。

そして白石作品ではお馴染み、胡散臭い霊能者もしっかり登場。

どうせ龍玄とか雲水みたいな名前だろ?って思ってたらほんとに「龍玄」だったからちょっと笑っちゃいました。どう見ても笑いどころではなかったので周りの人に申し訳なかった。

サユリ、マジで白石監督のファンサが鬼アツです。

ちなみに、龍玄とのエンカでばあちゃんの喧嘩の強さが垣間見えるのがよかったです。

一旦顔をぶん殴っておいて上段で構えさせ、不意打ちのローキックで一発KO。カーフ入ってない?龍玄立てる?

太極拳のみならず、チンピラみたいなストリートファイトも得意なフリースタイルババア。シビれる。

もうね、白石晃士ファンは全員見たほうがいいです。見たら幸せになれます。今ならたったの2000円。

同じスクリーンから出てきて、売店でサユリグッズを物色し始めた人が何人かいたんだけど、あやうく話しかけそうになりました。

賛否分かれそうなポイント

自分は好きだったぜ!ポイントです。

・原作改変

九条家の環境含め、映画版で改変された要素や無くなったシーンがいくつかありました。

個人的には、媒体が変わったことで内容もチューニングされただけのように感じます。

違和感や不快感なく楽しめたので、そこは白石監督の技量に感謝。

ただ、ところどころで押切先生の死生観が垣間見えるのは原作ならではの良さでした。あの雰囲気が味わえなかったのはちょっと寂しかったかも。

文字と絵だけで表現するからこそ作者の哲学が滲み出る漫画。

音声や映像で魅せるからこそ演出の巧拙が問われる映画。

媒体が変われば、表現方法の最適解も変わりますからね。

あくまでエンタメ色が強くなったというだけで、芯の部分は変わっていないと思います。

原作は生命力で倒してたけど映画は普通に殴ってんじゃねーか!みたいな感想をどっかで見たけど、映画版も普通に生命力で対抗してるような気がする。

個人的には、体内を巡る生命力を太極拳で発露させてるって解釈をしてました。

ちょっとメタ的な話ですけど、やっぱ映像としての見栄えを考えると、サユリとの戦いのシーンには体の動きかVFXがほしいですよね。

見ててかっこいい、かつ生命力を表現できるっていうと武術系に落ち着くのは必定かなって。

なんなら、実写映画になったことで光の表現や音の表現ができるようになって余計に怖くなってました。

・死人の扱いについて

死人の扱いが雑なのが嫌だった、みたいなのをいくつか見かけて。まあサユリかわいそうではあったよなと思いました。

でもサユリは何の罪もない則雄の家族をぶっ殺しまくってるんですよ。自分の家族に復讐するってんなら分かるけど、全然関係ない一家を惨殺するのはおかしくないですか?

女の子相手におま○こ連呼して太極拳でぶん殴ったのは確かにひでーけど、そんだけやられても仕方ないようなことをサユリはしたと思うので、自分は全然気にならなかったです。

結論

めっちゃおもしろかったです またみたいです

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