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『若い日』品川陽子詩抄 (No.2)

若 い 日

はやはらかに
なべてのものにこぼれ
かぎりなくれたあおい空
若草わかくさのうへにひとり
乙女おとめそらつめてゐる
いつまでもいつまでも
うしなはれたものをさがすやうに

そつとちかよるはゝかげ
乙女おとめそらつめることをやめて
さびしくほゝんだ
うつすらぬれてゐるなみだひとみ
母親はゝおやしづかにおも
どんなかなしみがちいさなむね
なやませてることだろう・・・・・・と

はるしづかにかたむいて
たつたひとりのはゝにもわか乙女おとめ
なやみはわからずにくれ

            「婦人之友」19(4)大正14年4月1日發行より


#品川陽子 #品川約百 #詩 #佐藤春夫



選 評
             佐 藤 春 夫

とり込んだ事があつてゆつくり選することが出來ませんでした。
「若い日」單純でもの柔かで美しい。かういう風に無雜作にすつきりと美が現れるといふ事は不思議なほどです。この人はいかにも女らしいいい詩人だと思ひます。[後略]

                      国立国会図書館 所蔵



品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百よぶ
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工

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