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【必見】リーダーが自問すべき4つの問い

日々仕事に追われる中で、こんな風に感じたことはありますか?

  • なぜこんなに忙しいのか?

  • 私はこの仕事のセンスがあるのだろうか?

  • なぜ仕事でこんなにイライラするのか?

  • 私は本当に人の話を聞いているか?

私もPM時代、あくせく働きながらこんな問いを持ちつつ、次々と降ってくる仕事を前に答えを出せぬまま月日が過ぎていきました。

以前「プロジェクトの失敗を防ぐ魔法の会議」でご紹介したPMアドバイザーのシュレイヤス・ドーシも、そうだったと言います。Google、Twitter、Stripeなど名だたる企業でプロダクト作りに携わったにも関わらず、これらの問いに対して一定の答えが出せたのはその晩年期だったそうです。

先日、サンフランシスコで開催されたカンファレンスで、彼がその4つの問いに対する考えを1,000人のPMリーダーの前で語りました。自分自身の習慣を改めて考えさせられる、興味深い内容だったので、私なりの解釈を共有したいと思います。

① なぜこんなに忙しいのか?

リーダーとして成長するにつれ、任されるスコープはどんどん増えるため、実務的な生産性の改善では限界が来ます。この状況を打破するには、組織単位での時間の使い方を見直す必要があります。

1/ 事業計画はなぜこんなに時間を食うのか?

PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成した会社の幹部が多くの時間を費やすのは、「来期」の方向性を統一するための事業計画です。

事業計画は組織の指針となるため、上手くやれば効果は大きいですが、いかんせん時間がかかります。関係者とブレストし、リサーチを重ね、ドラフトを展開し、予算や人員計画を詰め。。。とやっているうちにあっという間に1カ月は過ぎていきます。

ある年、Stripeにいたシュレイヤスは、新たなアプローチを思いつきます。一連のプロセスを無視して、いきなり筆を執って2~3日でプロダクト戦略を書いてしまったのです。内容は、これまで関係者と話したことに基づいていたため、回覧しても大きな異論はありませんでした。経験上、必要人員数を詰めてもどうせ後で変わると悟ったシュレイヤスは、そこには大して時間を割かず、他のリーダーが1~2カ月かかる工程を2~3日で終えました。

もちろん、一発OKの戦略を書くのは、熟練だからできることです。私が過去に書いた事業計画は、1~2カ月の工程がなければ書けませんでした。しかし、見方を変えると、それは事業計画のシーズンまで戦略作りを放置していたからだと気が付きました。

どんなに忙しくても、戦略を考える時間を定期的に作ることで、事業計画はもちろん、日々の仕事で「やらないこと」も決めやすくなる。すると、空いた時間でさらに先々のことも考えられるようになる。こんな良いサイクルを作れるようになりたいものです。

2/ 安易に「実験」しすぎている?

Amazonのジェフ・ベゾスが広めたコンセプトの1つに、One-way Door(一方向のドア) vs Two-way door(双方向のドア)というものがあります。やり直しがきくものはさっさと試して、後戻りできないものは慎重に考えようという意味で、意思決定のスピードと質を両立させるための考え方として広まりました。

しかし、やり直しがきくものにも、「時間」という機会損失があります。また、リリースした機能は一発でヒットになる可能性は低いため、「まだ機能が足りないから上手く行っていないんだろう」という結論に陥りがちです。一度始めると、諦めきれない。気が付いたら泥沼にはまり、最初からやらなければ良いものに何カ月も費やしてしまった、という経験は私もあります。

経営者にとってはTwo-way doorであっても、現場にとってほとんどの決断はTwo-way doorではありません。つまり、現場こそ、自分の時間を無駄にしないために、経営者より真剣にその実験をやるべきかを吟味しないといけないのです。

② 私はこの仕事のセンスがあるのか?

経営において良い「センス」とは、「結果を見る前にその価値を見抜く力」と定義できます。例えば、「NVIDIAのジェンスン・ファンは天才だ」と今言っても何の証明にもなりませんが、それを2010年に言えたなら、センスがあったと言えるでしょう。

2008年にGoogleに入社したシュレイヤスは、「戦略なんてMBAがやること。我々は実行あるのみ」という当時の同社のマントラに影響を受けたと言います。Googleは当時世界で最も先進的なテック企業であり、Googleがそう言うんだから、間違いない。そう信じて、誰かが戦略の話をしたがる度に、彼もこのマントラを繰り返していました。

これを信じ込んでいた彼は、2014年にTwitterに入社した時に、ショックを受けます。Twitterは素晴らしいプロダクト、強力なネットワーク、ブランド力、そして優秀な人材がないにも関わらず、停滞している。これは一体なぜなのか、考えた末、当時のTwitterにはプロダクト戦略がないことが理由だと気が付いたのです。

この経験を経て、彼は、巷のキャッチ―なフレーズ(例:Fail Fast!)や権威(例:著名CEOの金言)を鵜呑みにせず、自分で判断することが、良いセンスを持つには不可欠だと注意しています。

Googleは今もAI界の代表的企業ですが、私の過去を振り返ると、GEや日産など、当時もてはやされていた著名CEOの言葉を鵜呑みにしてしまっていたことがありました。その自戒も含めて、私自身気を付けなくてはと思います。

③ なぜ仕事でこんなにイライラするのか?

これは、PMや事業の幹部など、大きな組織を動かす役割の人ほど感じることかもしれません。チーム間の対立や、予定の変更、経営陣への報告など、あらゆる調整をしながら結果を出すのは容易ではありません。私も、200人規模の大型プロジェクトを率いていた頃は、帰宅すると妻に「頭から湯気出てるよ」と言われていました。

シュレイヤスは、仕事で苦悩するのは、「PMや幹部の仕事は3層構造であり、自分の本質的な強みと合致していない層の仕事もやらざるを得ないからだ」と言います。その3層の仕事とは:

  1. インパクトレベル:本質的な価値創造のこと。長期視点で適切な戦略を考え、それを表現する能力が問われる

  2. 実行レベル:日々の業務遂行のこと。関連メンバーと連携しながら、個々のプロジェクトを前に進める能力が問われる

  3. 見た目レベル:社内関係者への仕事の可視化や宣伝のこと。期待値を管理しつつ、自分の成果をアピールし、必要な予算や協力を得る力が求められる

人によって意識している「層」が違うと意見の対立が起きやすくなりますし、求められる「層」が自分の強みでないと、それを楽しいと思うのは難しくなります。

また、組織が大きくなるにつれて、必然的に「見た目レベル」の仕事の比重は増えていきます。大企業での肩書きは一見華やかですが、シュレイヤスは、「世間の期待に流されずに、自分の強みが活かせる場所を見つけることが重要だ」と言います。

「見た目レベル」の仕事が嫌いなシュレイヤスは、チームが50人規模になった時点で次を考え、より小規模な初期段階のプロダクトに携わるようになりました。

社会的な期待や「普通」のキャリアパスを捨て、自分が本当に力を発揮できる領域でトップを目指す。必要に応じて、一見後退に見える選択肢も恐れないことが重要です。

④ 私は人の話を本当に聞いているのか?

アクティブ・リスニングについては、「アイコンタクトを取る」、「相手の言葉を復唱する」、「理解を示すジェスチャーを取る」など、コツはよく知られています。

しかし、シュレイヤスは、そのようなうわべのコツでは、いつまで経っても良い聞き手にはなれないと言います。問題はそこではなく、「人の話を聞いている間に、他のことを考えている」ことにあるからです。

音楽プロデューサーのリック・ルービンは、「自分の意見を考えることは、聞くことではない。相手に対する回答の準備や、自分の立場の擁護も同じ。考えながら聞くのは、何も聞いていないのと同じだ。」と言います。思い返すと私も、次の自分の答えを探すあまり、相手の言葉が耳に入らなくなってしまったことは多々ありました。

シュレイヤスがおススメする、傾聴力を飛躍的に上げる方法は、以下の通りです:

  • 「人の考えや意見を聞けるのは、貴重な機会」だと心の底から思う

  • その上で、人の話を聞くことだけに専念する。そのためには、人の言葉が途切れる瞬間に意識を注ぐ。これだけで、その他のことに意識を奪われるとがなくなる

  • 相手の話を聞き終わった上で、言いづらいフィードバックなど、伝え方を少し考える必要がある時は、「少し考える時間をもらえますか?」と言えば良い

シュレイヤスは、不思議なことに、相手の言葉を深く理解すると、自分の返しも飛躍的に良くなったと言います。我々の脳は、良いインプットがあれば、それを咀嚼して瞬時に返す能力が既にあり、それを阻害しないことが大事だということなんですね。

おわりに

以上です。個人的には、自身の習慣を見直す機会になったので、これらの質問を定期的に振り返りたいなと思いました。また、改めて、「Thinking is cheap(考えることは、お金をかけずにできるのだから、もっとやるべき)」という言葉を思い返しました。

冒頭にお伝えしたカンファレンスでは、他にも示唆に富むトークがあったので、機会あればそれらも共有したいと思います。それではまた来週!


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