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No,269.「虐待による子どもへの影響について」



虐待による相談窓口

はじめに

「非行少年(子供)の心に扉があるとすれば、その取手は内側しかついていない」

少年少女がなぜ心を開かないのか?また犯罪に手を染めるのかについて記事にした。👇

この記事からわかるように、土台としてネグレクトを含む児童虐待が要因であることは自明である。

学力面のほかに虐待による心理的背景について考察してみる。

背景

児童虐待は一貫して増加を続け、その種類の一つであるネグレクトも増加し ている。特に市町村ではネグレクトへの対応は重要な課題となっている(安部、2012)。

児童相談所における児童虐待相談対応件数は、統計を取り始めた1990年度の1,101件から、2009年度は約40倍の44,211件に激増している(田中、2011)

このように統計を取り始めてから虐待件数は増えている。

虐待による症状

西澤(1999)は、親という保御者からの虐待により、子どもの成長や発達にさまざまな影響を与える可能性があると述べている。

① 火傷や骨折といった身体的外傷
② 成長障害
③ 知的発達の遅れ
また
④精神的な外傷、すなわちトラウマと呼ばれる心理的発達に深刻な影響。

実際に虐待を受けた子どもは「 身体的訴え」や「非行的行動 」総得点で有意に高い得点を示すことが明らかになっている(李・坪井、2003)。
つまり、虐待を受けた子ども本人が、身体的に何らかの問題を抱え非行行動を自覚しているといえるだろう。

子ども自身の自覚以外にも
児童養護施設職員からみた虐待を受けた子どもの特徴につ いて、「注意の問題 」「非行的行動 」「攻撃的行動 」で被虐待体験がある場合、上位5%に入 る人数が有意に多かったとの報告がある(杉 山・中村、2001)。

子ども自身の自覚と児童養護施設の職員においても虐待による影響がみられることが示されている。

心理的影響について

1.PTSD

① 思い出したくないといった意識に反して急に思い出す(侵入性想起)
② 大人から叱られる瞬間に虐待を受けているかのような反応(フラッシュバック)
③ 悪夢や夜驚(悪夢に反応して強い恐怖が生じ、激しく泣く)
④ 睡眠障害
⑤ 落ち着きがない(虐待を受けた子は周囲の刺激に反応しやすく、場合によってはADHD(注意欠陥多動性障害)の原因になることもある)

2.社会・対人との関わり

① 幼児期(反応性愛着障害):初めて会った大人に対してベタベタしてくる

② 就学時(注意欠陥多動性障害:ADHD):落ち着きがない

③ 思春期(行為障害):わがままで他者への思いやりがなく、罪悪感にさいなまされることなく、いじめたり、他者の持ち物に損害を与えたり、嘘をついたり、盗んだりする行為

④ 成人期(反社会的人格障害):自分や他者がどうなるかを考えることなく、また良心の呵責(かしゃく)や罪悪感を覚えることなく、自分の望むことを追い求める

これらの症状が現れる原因として、元来子どもは自分の感情調整がうまく出来ない。

幼少期に保護者の手によって適正に調整(あやすなど)されるという経験が乏しい場合、調整する力を養う機会を持てない。

故に、ほんの些細なことで感情的になり暴言や暴力を振るったり、自分の体を傷つける自傷行為によって調整をおこなうといわれる(調整障害)。

さいごに


筆者作成

子どもは限られた社会性の中にいる。
よって保護者の影響が大きいのは自明であるだろう。
子どもは社会の宝と言われていた時代と比べ、社会と家庭との壁が高くなっている。だからこそ保護者の影響は大きい。
そう考えると共助ではなく公助に頼らざる得ないのかもしれない。

西澤(2009)はこう述べている。

虐待は子どもの身体や、心理面(認知や情緒)、行動面にネガティブな影響を与えるだろう。
適切な保護やケアを提供せず放置した場合には、こうした影響が人格の一部として固定化する。

重大な犯罪の背景には、虐待をうけた子どもの姿が見え隠れするようにおもう。

虐待をうけた子供に適切なケアを提供することは、社会全体にとっても重要なことだろう。

虐待についてさまざま活動をおこなっている方の現状


参考文献

坪井裕子・李明憙(2007)「虐待を受けた子どもの自己評価と他者評価による行動と情緒の問題 -Child Behavior Checklist(CBCL)とYouthSelfReport(YSR)を 用いた児童養護施設における調査の検討-」『教育心理学研究』第55巻、pp335-346

西澤哲(2009)「虐待というトラウマ体験が子どもに及ぼす心理・心理的影響」『北海道医療大学看護福祉社会学部学会誌』第5巻、第1号 pp5-10

福井義・島義弘子(2013)「子ども時代の虐待養育環境と成人愛着スタイルが 情動コンピテンスに及ぼす影響」『感情心理学研究』第20巻、p20

坪井裕子・李明憙(2007)「虐待を受けた子どもの自己評価と他者評価による行動と情緒の問題 -Child Behavior Checklist(CBCL)とYouthSelfReport(YSR)を 用いた児童養護施設における調査の検討-」『教育心理学研究』第55巻、pp335-346



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