![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/161269132/rectangle_large_type_2_5a1df6e397d5b767fb822daedf4815e3.png?width=1200)
エッセイ「デンタルフロスを義務教育に!」
私は憎んでいますよ。何をかって?そりゃあ義務教育をですよ。私は人を憎むことなどしません。人は過ちを犯すものですし、それは私もおあいこのことです。憎むなら天気と制度と相場が決まっています。天気に悪態をついたって誰も気に病むことはない、だから怒りの吐口は天気が一番なんです。
何の話だって?そうですよ、天気が悪いと歯が痛くなるなんて人がいるでしょう。その原因が義務教育にあるって私は言いたいんです。話が見えないでしょう。ええ、そのように書いているんだから、話が見えなくて当然です。私が言いたいのはね、なんで義務教育でデンタルフロスの使い方を教えなかったんだってことですよ。あまつさえデンタルフロスの存在すら教えてはくれなかったじゃないですか。
私はこれからね、「デンタルフロスを義務教育に!」と叫んで衆院選を戦うつもりですよ。ええ、戦うわけありませんよ。今度いつあるかもわからないのに。
私はね、生まれてこの方35年間、虫歯に苦しむことはなかったんです。一度も歯医者にかかったことがなかった。痛快でしょう。毎日歯磨きを欠かさず、しっかりと丁寧に歯を慈しんでいたんです。一生歯医者様の厄介になることは無かろうと思って人生を謳歌していましたよ。ええ。それが間違いだったなんて誰が思いますか?
ほとんど一年くらい前ですよ。私は左の奥歯に痛みを感じました。これはもしやと。私はさすがに観念しました。いくら丹念に歯を磨いていたからと言って虫歯にならないという理屈はない、最近の不摂生が祟ったか、どこかに磨き残しと気の緩みがあったのか、生きていれば諦めもつきます。ええ、これも私の人生の過ちだろうと。
私はついに歯医者にかかりました。地元でも名医と評判の歯医者です。するとどうでしょう。虫歯はひとつもなかったんです。え、どういうことですか?この話って何の話ですか?って思いましたよね?ええ私も思いますよ、ここで終わればね。
歯医者様は言いました。「あらぁ?これはシセキですねぇ、すっごい大きいのが歯に挟まっていますぅ、ええ」オネエじゃありません、古畑ですぅ。あのしゃべり方は古畑任三郎でした。はい。それを踏まえてもう一度お読みください。
私は耳を疑いました。しせき?江戸城?本能寺?前方後円墳?あ、史跡じゃない。歯の石と書いて歯石。食事の屑が歯の間に挟まってできるのが歯垢、それが堆積して石のように固まったものが歯石。え、堆積した…石?…地層?ほな史跡やないかーい。
いい加減飽きてきましたよね。わかります。本題に戻しましょう。お医者様によるとですよ。歯と歯の間に隙間があると食事の屑が溜まりやすくて、しかも歯ブラシでは取れにくいんだそうです。これは私の想像ですが、この歯石が溜まってた奥歯って親知らずなんですね。親知らずが後から成長してきて隙間を作ったから最近になって歯垢が溜まるようになったんだと思うんですよ。
それで治療というのか処置というのか、歯医者様に歯垢やら歯石を取り除いてもらって、言われました。「あなた、フロスって使ってます?」c.v.古畑ね。
は、は?フロスって何ですか?ですよ。知りませんよ。普通に生きてきて、虫歯がなくて、義務教育で習ってなかったら、フロスなんて存在も知らなかったですよ。
曰くですよ。歯の隙間の歯垢や歯石を取り除くにはデンタルフロスを使わなきゃいけないんだそうです。早よ言えよ、ですよ。歯ブラシを使っていて、歯に異常がなかったら、デンタルフロスの存在に気付けないでしょって話ですよ。
だから私は義務教育を憎んでいるんです。ほらようやく来ましたよ。結論から始まって2回目の結論が来ましたから、もうすぐ終わりますよ。義務教育でデンタルフロスを学んでいたら!もっと快適でもっと美しい歯を保てていたはズなンだっ! もうしゃべりすぎて歯もボロボロですよ。
それからというもの、私は毎日の歯ブラシにデンタルフロスも欠かさずやるようになりましたよ。それはもう念入りにね。
それでついこの間、そこの奥歯に、
・・・虫歯ができました。・・・なンだこのオチ!