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春もうろう

くくったか くくったか くくったか
もうろうとした春のまひる
歯のある鳥が椎の葉うらで
それはきれいな声でなく

──── あれ なんの鳥なの?
──── あれはね かりょうびんが さ
──── 極楽鳥?
──── ううん そんな感じの鳥だってことさ

春の会話にあとさきはない
くくったか くくったか くくったか
歯のある鳥は鳴きしきっている
かげろう萌えてる 風は うらうら

くくったか くくったか くくったか
あの声は 野卑 いやらしい呪詛
空をとべないあのかたわどりの
くちばしのなかには黄色い歯がある

     詩誌『駱駝』5・6号別冊(1951年4月)
     詩集『浮燈台』(1951年11月*ユリイカ)
     (上記のテキストは『浮燈台』によっています)

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きれいな声で鳴く鳥は「くくったか」と聴こえてしまう。「いやらしい呪詛」とまでいうのは理由があるのでしょう----。


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