銀河を渡る時
──── 愛する者と生きるために ────
リルケは 薔薇に殺された
わたしたちは 海に殺されようとしている
薔薇は リルケに復讐した
しかしわたしたちが復讐されるにしては
わたしたちは 魚を歌っていない
貝をうたっていない 海藻を歌っていない
海にかこまれて 海を歌わず
大脳の皺ばかり気にして喉もとだけで歌っているから
魚たちはこぞって憤死したのだ
みろ 魚たちが先を越した
歌って 殺されて 薔薇になった詩人は
海を歌って 原生に帰れとさとしている
詩誌『駱駝』134号(1973年6月)
礒永秀雄選集(1977年*長周新聞社)