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駱駝38号「後記にかえて」(詩)

噛んでみろ 石を
ふてくされたその顔が
みじんに砕けるまで ガキリ と
骨の固さが骨身に沁みるまで

嚙んでみろ 石を
ホッチキスのように ガキリ と
嚙んでみろ 喰いとめてみろ
死ねるもんか死ねるもんか と

その時の顔のましら
久々の なあ 人間の顔
涙の火花を散らしてみろ
やってみろ 噛んでみろ

  石が眠っていると誰がいうのか
  ふところにした鏡がいうのか
  昨日すりかえた眼玉が言うのか
  重たい義眼こそ生きた石だと?

咲くのだ 舞うのだ 歌うのだ 毎日!
思考の壁の外側を往くのだ
石を見下ろしているダリアの大輪でさえ
いかほど石ほどに赤かろう!

燃えるのだ 骨を
燃えるのだ 死を
手を切れ耳を切れすべての属性を断って
舞うのだ 喰うのだ そうだ一切!

     詩誌『駱駝』38号(1955年6月)


1950年に詩誌『駱駝』を創刊しました。それから5年経て同人たちも詩集を出版したり活躍を広げていきます。しかしこの<後記にかえて>では「内容をもっともっと深めようではないか」と激しく同人に呼びかけています。
なお『駱駝』創刊の宣言も過去に投稿していますので、よろしければそちらもご覧ください。


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