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大人の博物館見学はめっちゃ楽しいぞ 〜横浜市歴史博物館〜

2023年3月8日。
天気は晴れで、4月中旬の気温だという。

突然だが私は、現在3人目の子の育休中で、来月には復職予定である。
育休が明ける前のお楽しみとしてこれまでも毎回平日の昼間におでかけをしていたのだが、今回は春の陽気に誘われて平日朝イチの博物館に行くことにした。

大人になってからの博物館は本当に面白い。
これまでの経験や学習の蓄積で、頭の中の年表や地図が子どもの時の何倍にもなっているからだと思う。
どうして博物館がこういう見せ方をするのか?
展示の見せ方はデザインの参考にもなる。

横浜市歴史博物館

横浜市歴史博物館に来た。
かつて横浜市民だった私は小学生の頃親に連れられてきたことがある。
夏休みの期間で、土器づくり体験をした。
そこで作ったハニワは長いこと実家に飾ってあった気がする。(今はもうない)

平日朝イチ開館直後の博物館は、来ているのはほぼ年配の方だった。
ご夫婦らしき何組かは大体片方が博物館ガチ勢で、もう片方に早口で解説していた。

だけど、博物館って展示を見ていると誰かに話したくてむずむずする。
なのでここでも早口のガチ勢よろしくレポートを書こうと思う。

図書閲覧室

チケットは一般400円。
購入するとレシートを渡されて、当日限りで何度でも入館できるそう。

受付を入ってすぐに体験学習室と図書閲覧室がある。

子どもの時であれば絶対に素通りしていた図書閲覧室。
それがどうにも気になって、今日は入ってみた。

小学校の1教室ほどの室内の3面が天井近くまでの本棚になっている。
中にはすでに先客がいて、熱心に蔵書のコピーをとっていた。

ワンテーマでまとめられた図書館の知識の凝集性はものすごい。
日本の歴史>県の歴史>市の歴史>区の歴史>町の歴史>遺跡とどんどん深掘りできるようになっていて、この並べ方は博物館ならではだなぁと感心する。

いろんな資料の背表紙を眺めていてぱっと気になって「値段の風俗史」という本を手に取る。
発行年は昭和。
いろいろなものの値段の変化についての本で、当時の気鋭の作家たちがそれぞれのものについてエッセイを書いている。
中でも目を引いたのは「時刻表」について松本清張が書いていた点。
思わず二度見した。
(※でも調べてみたら時刻表トリックといえば松本清張より西村京太郎の方が有名かもしれない)

……歴史関係ないな。

気を取り直して他の本にも目を移すと4年前の超大型台風で水没した川崎市民ミュージアムの企画展図録があった。近隣の博物館だから収蔵しているんだろうが「呪いと占い」展の図録は普通に魔導書みたいでほしくなった。
ちなみに川崎市民ミュージアムはまだ復旧できず閉館してるが、頑張って復活してほしい…。

……またしてもあんまり歴史関係ないな。

あ、横浜市内にある古代遺跡の発掘資料も豊富にある。市民であれば「えっあの町にも?」「えっこの町にも?」というレベルで大量にあった。
正直図書室の資料読むだけでいくらでも時間が潰れそうだったが、0歳児を抱っこしていたのと小学生の息子が四時間授業の日なので後ろ髪を引かれつつ図書閲覧室を後にした。

常設展示室

横浜市歴史博物館の常設展示室は、最初に「歴史ガイドウォール」という日本史の巨大年表があり、その先が原始Ⅰ、原始Ⅱ、古代、中世、近世、近現代の7つのブースに分かれている。

歴史ガイドウォール

昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ていたこともあって、鎌倉時代で足が止まった。「源頼朝征夷大将軍に任じられる」という一言を見るだけで大河ドラマのあんな場面やこんな場面がフラッシュバックしてきて見入ってしまった。
鎌倉時代自体の扱いは日本史の中では非常に小さくて、頼朝の死後には畠山氏の討伐しか年表に載っていなかった。鎌倉殿の13人では頼朝の死後から地獄が始まったので年表の余白を脳内で補完しながら体感10分くらい年表の前に佇んでいた。
しみじみ眺めていたら解説員の方に「お子さん大人しいですね」と声をかけられ「あ、いや、いや」と挙動不審になってしまった。
解説員の方は「こういうところに来たことは、この子はきっと覚えていないでしょうけど、良い体験になっていると思いますよ」と言っていた。
自分のために来ているとは言えない。


7つのブース

続いて歴史を区切った7つのブースに移動した。
それぞれに入る時代を見てみよう。

  • 原始Ⅰ …石器、縄文

  • 原始Ⅱ …弥生

  • 古代 …古墳、飛鳥、奈良、平安

  • 中世 …鎌倉、室町、戦国

  • 近世 …江戸

  • 近現代 …明治、大正、昭和、平成

古代に含まれる時代が多い割に、ブース一つしかないのは、おそらく横浜という土地柄だと思う。
都の近くにあった西日本の博物館であれば古代がもう少し分厚く紹介されていたんじゃないかと思う。

しかし、古代の当時、ど田舎だったこの辺りは語るべきものがないらしい。
「ない」ことがそれだけ政治の中心から離れていたことを示すのだと思うと非常に興味深い。

原始Ⅰ
ナウマンゾウの頭骨が展示されている。
今から20000年前の地球は気温が7-8度低くて海の水が氷河となっていたため東京湾も陸地になっていたらしい。
「えー東京湾なかったの!?」と心の中では衝撃を受ける。

原始Ⅱ
人面付き土器という瓢箪型の4-50cmくらいあるつぼ(?)の上の部分にキリッとした人の顔がついてる土器が展示されていて思わずニヤッとしてしまった。
「煮炊き用の土器を作ってる最中にどうしても顔つけたくなっちゃったのかな」とか想像すると笑えてこないだろうか。

縄文と弥生のムラの違いの説明もあった。
弥生時代になってくると隣村との争いが激しくなってきたので村の周りにはほぼかならず壕という堀のようなものがつくられていたらしい。「人」と「争い」の歴史の長さに暗澹たる気持ちになった。
最初は動物的な「縄張り争い」で相手を追い払って諦めさせるためにやってたと思う。
そのうちそれでも自分達を守りきれなくなるから相手を確実に潰すために武装をしていく。 弥生→古墳の展示にはもう鉄の剣、鎧があって。まだ「武士」とは言われないまでも、武装して戦うことは始まっている。うーむ。

古代
古代は前述した通り、あまり原始Ⅱと変わり映えしない。
ムラがつながって大きくなり有力者が生まれ、それによって古墳ができた。
それくらい。

中世
鎌倉時代。頼朝が幕府を開いたことで一躍関東のど田舎が歴史の中心に躍り出るわけでイケイケで紹介されている。(もしかしたら昨年の鎌倉殿の13人を受けて多少展示も変わっているのかもしれない)
鎌倉幕府のおかげで金沢と神奈川という横浜市内の港には中国からの貿易船も来ていたというのは純粋に驚いた。横浜市民でも意外と知らない。

各地の物資を鎌倉に送るための「鎌倉街道」や「鎌倉七切り通し」も詳しく解説されていた。
ちなみに、鎌倉時代にはまだ「横浜」はなく、室町時代になってはじめて「横浜」という地名が現れると紹介されていた。
「横浜」と言われている鎌倉時代には辺りは「石河(いしかわ)」という地名だった。今でも「石川町」という町名に名前を残していて、元町・中華街とかのあるあたりが該当する。

近世
横浜で小学校教育を受けた人は多分ほとんど習う、「吉田新田」の紹介がメインとなっている。

正直なところ、小学生の当時はその工事の規模感がわかってなかったが、結構な広さだと初めて知った。
京急の南太田駅と、JR桜木町駅、JR石川町駅を結ぶ三角地帯の入り海(横浜スタジアム100個くらい入りそうな広さ。)を人力で、埋め立てた。

吉田新田の「吉田」はこの大工事の責任者、吉田勘兵衛の名前が由来だがこの人はすごいと思う。
何がすごいって、この大工事、一回失敗してる。
完成の翌年に大嵐で堤防が決壊して水浸しになってしまったのだ。
でも2年後くらいに江戸幕府に再申請してやり直している。
最初の挑戦が45歳ぐらいなのでその次が47歳〜8歳くらい。その歳で人生賭けて失敗した事業を、挫けずに再挑戦できるって浪漫だなぁ…

ちなみにこれをすごいと思えるようになったのは、令和元年の超巨大台風を筆頭とした近年の水害を経験しているからだと思う。
吉田勘兵衛、絶対一回は絶望してる。それを「もう一回」って言えるのはすごい。

近現代
近現代は開港、戦争、そして発展。
割と全国どちらの方も想像するいわゆる「横浜」がつくられていきますよー…という内容だった。

博物館というもの

博物館の展示そのものについて。
ハコは立派なのだが、やはり予算がないのか展示内容は古さが目立つ…。

文字展示は所々擦れて消えていたり、モニターはブラウン管(そして調整中で見れない映像も多い) 古代の村の分布を発行ダイオードで色分けして表示したものは、青がない時代のものなので黄色と緑の色の区別がつきにくい。

展示の古さは、ああもっと予算があればいいのになぁと思いつつ、笑い飯の「奈良歴史民俗博物館」っていうコントを思い出してちょっとニヤニヤしてしまった。(youtubeなどで調べてみてください。おもしろいよ。)

横浜歴史博物館は、隣に古代の遺跡があって、多分遠足で来た小学生たちはそこでご飯を食べられるようになっている。
最後はそこまで見に行こうと思っていたのだが、古代の遺跡は小高い丘の上にあり、最近腰を痛めてしまったので次女抱っこしたまま登山するのは断念した。

博物館や美術館ってバーチャルだとやっぱり物足りないと思う。
これはやはりモノで残すことにこそ意味があるんだろう。
01のデータにしてしまったら消えてしまう部分が多すぎるのだ。

そんなことを考えて、博物館をあとにしたのだった。

横浜市歴史博物館

https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/

横浜市営地下鉄線ブルーライン・グリーンライン「センター北」駅より徒歩5分

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