日本一の振草川の鮎を求め大崎屋旅館に投宿 (愛知 北設楽郡)
わたし愛知県出身で、最後の晩餐は鮎の塩焼きを予約済みなのです。なのですが同じ愛知県に日本一の鮎があるという重要な話は全然知りませんでした。そもそも振草川という名前すら耳にしたことがありません。これは行くしかないわけですよ。
日本一の鮎というのは、高知県友釣連盟が主催する清流めぐり利き鮎会が決定しているようです。ただしWikiはありますが、会のサイトも連盟のサイトも確認できません。まあそんな状況、ではあります。
振草川は愛知県にあるそうです。しかし、Googleマップで探しても出てきません。いきなり計画頓挫の様相です。これは現地に行ってから判明するのですが、振草川という川は、国土交通省的には存在しないのです。
どういうことかと言うと、振草川は大千瀬川の愛知県北設楽郡東栄町部分の旧名称なのだそうです。昔からそう呼ばれてきたのですが、戦後だかに一河川一名称と定められたので、現在では大千瀬川がオフィシャルな河川名なのだそうです。
場所は愛知県の北東部分。豊橋や静岡県の浜松の北側あたりです。
19年愛知に住んでいたわたしは、このエリアには一度だけ行ったことがあります。すぐ近くの稲武町(ここはなぜか豊田市になるようです)に、名古屋市の野外教育センターがあって、名古屋の中学生は2年のときに2泊3日でキャンプをするのです。それは現在でも行われているようです。
このキャンプはいろいろ思い出深く、特に生まれて初めてヒグラシの声を聴いて、完全にその魅力に取り憑かれました。そのためこの30年間くらいは、東京都心にいた4年間の例外を除き、ヒグラシの声が聴こえる場所にしか住んでいません。人はヒグラシが聴こえない場所に住んではいけないくらいに思っています。
やっと宿の話です。
振草川の周辺で、鮎が食べられそうなところを探してみるのですが、情報があまりありません。確実そうなのが今回訪れた旅館、大崎屋旅館さんです。創業140年で現在5代目とのことです。
アクセスは豊橋から飯田線で東栄まで行き、そこから村営のバスで15分ほどです。まあ中くらいレベルの田舎です。
宿は個室という概念ではなく、襖で仕切られているだけです。鍵という概念もありません。
私の母方は、同じ愛知県の犬山市でかつて料理旅館を営んでいまして、建物はそこの感じにものすごく似ています。
ホテルニュージャパンの火災以降、消防法が厳しくなってスプリンクラーの設置が義務付けられ、江戸時代の建物のために改装工事費が非現実的でしたので宿泊部門は閉鎖しました。残念ですね。大崎屋さんはうちよりも小規模のために、スプリンクラーの設置義務がないのでこうして維持できているとのことでした。
この部屋はなかなか由緒あるお部屋なのです。柳田國男さんくらいなら歴史や文学の知識がゼロのわたしでも分かります。なんかよく入試問題とかで使われる人ですよね(マジでこの領域レベル低くて恥ずかしい)
大崎屋旅館さんは温泉ではありません。徒歩10分ほどのところに町営の温泉施設があり、大崎屋さんに泊まると半額の350円で入浴できます。源泉かけ流しの露天風呂やサウナもあってなかなかいいですよ。
いよいよ鮎三昧の夕食です。
供される鮎はすべて天然物です。正確に言うと稚魚を春先に放流したもののようで、それを釣人が友釣りで釣りあげたものを大崎屋さんが直接買い取って、生簀に入れてしばらく保管したものを出すのだそうです。完全養殖ではないためにサイズにバラツキがあります。
鮎はいうまでもなく、頭から尻尾まで、背骨も含めて全部食べます。まるごと食べられる状態に調理をするものです。振草川の鮎の印象は、ワタが美味いです。これは明確に苔の違いだと思います。
鮎を食する者から見たベストな苔のコンディションは、2週間毎くらいに生え変わることです。大雨による増水によって苔がほとんど流されてしまいます。しばらくして新しい苔が生育してくるのです。この繰り返しが新鮮な苔を育て、美味しい鮎になるのです。
完全養殖の鮎は合成餌を食べているので、大きくて型が安定しますが、透明な脂分が多くなります。こうなると本来の香ばしさを脂が勝ってしまうのです。スーパーで売っている鮎はそのタイプばかりです。それでもスーパーで簡単に変えることだけでわたしには感涙モノであります。
やっぱり塩焼きがストレートに鮎を感じられて、一番好きです。ほんとに最後の朝餉、昼餉、夕餉どれでもいいから最後は鮎で〆めたいものです。
全部で9匹分の鮎を胃の中の納めたところでおやすみなさい。
余談ですが、この夜は朝までずっととても不思議な夢を見ていました。何回か目が覚めましたが、また同じ夢の続きを見ていました。
中国の何処かと思われる街に私はいました。そしてそこは戦場でした。兵士が持っている武器や景色から現代ではなく、昔のことに見えました。私は一人ぼっちで街の中を逃げて、隠れまくっていました。話は特に決着することもなく朝を迎えました。
朝ご飯です。そうだ、大崎屋さんは食事は完全部屋食です。というのは最近のように効率化のために食堂を作る、という時代ではなかったままで、その後もそういったスペースを用意していないからです。うちの実家もそうでしたから。
これで13,500円という一泊2食では破格の設定です。鮎料理ではなく普通の料理は8,000円です。鮎好きでしたら堪らない宿です。また来年、18きっぷの時期に再訪することになると思います。
なお、私が予約した以降は暑さのせいなのか、鮎の入荷が少ないようで、鮎料理がいただけなくなっています・・・・秋に向けて復活するといいですね。
最後に、宿のすぐ近くにある奥三河のナイヤガラをご紹介しておきたいと思います。
大崎屋旅館さんの公式ページ