皐月晴花乱鯉幟千切飛

阿弥陀籤


梅も桜も菜の花も通り過ぎて空色困憊

はなのいろはうつりにけりなをおもいしり

躑躅塗れのアスファルトが黒く光る

懐かしい雨の音

引き裂かれてしまった

宙に浮くリボンの光を

潜れ

超えろ

目が覚めただろうこの空色に

超えろ

潜れ

征け!



影送


山笑う薄紫の化粧して

山の向こうの君へ影法師を送ろうか

心まで往ってしまえたらどんなにか

薄紫の化粧して

影は伸びる

伸びる

八十八夜

真夏の光線がもう

押し寄せている

あの空色を破って来ようと必死に

顔が見える

山笑う

轟音を立てて緑が迫る

風船割れた


甘茶蔓


幾重にも綺羅の夜風は棚引いて

騙しきれない澄んだ空気よ

この様を見よ

濃縮されたコンピューターの液晶が空へ放たれる

今だ


兜蟹


浜辺縫う稚児の足跡フと消えて

貝殻集めが趣味なんですよ

拉麺啜って今日は帰ろう楽しかったねピクニック

浜辺の唄を歌ったら

楽しかったねピクニック

あのパフォーマを起動して

書き留めておこうピクニック

2000年には機械が混乱

楽しかったねピクニック

虹色のリンゴのマークが禍々しく光りはじめたらもう遅い

雨音強くトタン打つなり

レベル20の強敵ですこんにちは



鯉墨絵


廃屋に靡け今年の鯉幟

嵐がもう来た

鯉を暴れさせる

さっき掠め飛んで行った燕が

どうにか止めて

探し疲れた映画の結末は如何したって見つからない

諦めが肝心

どうかここで隠れていて

どこにも連れて行かれないよう

騙し通せる筈が無い

緋色の鯉が飛んで行った

左様なら貴方

遠のく

笛の音

青空

でも


伽藍堂


逆さまに眺め眩暈が紙吹雪

毒を湛えた極彩色よ

不穏な花火の音で

祭りの始まりが知らされて

何も無いここまで来てしまう

ずっと隠れていても

見つかってしまう

あの翼の生えた猛獣達に

空を飛ぶ魚達に



千切雲


突風に風船飛んだ橋揺れた

川面空色雲は千切れて

赤い色空色に映えて最期を待って漂う

一人のスナイパーが狙っていた

それでも焦ることもなく只管に

赤い色光の強い方へ揺らぎ漂う

今のすごい音は何だい

鉄砲の音さ

いいえ2000年のあの時の混乱がコンピューターに今転送されてきた

その不穏な音さ

討ち取ったり文明

勝ち取ったり生命

散歩道大きく揺れる

アスファルトが溶ける

マゼンタと薄紫

目が眩む

クリーム色

葬送曲

橙色とペールピンクと

光線

濃紫

黙れ

緋色

スナイパー空から落ちてくる

観光バスの上に

静かに!


藤も躑躅も酢漿草も

芥子も菖蒲も木香薔薇も

夾竹桃まで皆咲いた

幼き頃を思い出す

我一輪の人の花なり







御終いに


一輪の菖蒲手折って我の勝

虚しい風が吹いてさよなら





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