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京から旅へ/インド仏跡巡礼(30)ブッダガヤ「マハーポデ寺院」②
大塔を見上げながら何枚もシャッターを切る。
ドピーカンの空を背景に、ド迫力の塔が、画面一杯に迫る。
頂上辺りを見ると、ストゥーパの傘蓋(さんがい)のようである。
また表面は全体に、美しい幾何学のパターン彫刻が施されている。
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所々に彫られた、半肉彫りの仏像も、優雅な姿で素晴らしい。
12世紀の、仏教が密教的な色彩を強めた頃の仏像が多いらしく、
できれば一日、様々な石彫刻をじっくり見たいが、そうもいかない。
東京の通勤ラッシュなみの混雑で、ボヤっとしてたら仲間と逸れる。
バタバタと暗い堂内に入り、金の“降魔成道”姿の仏像をチラ見し、
即、外に押しだされ、例のブッダが悟られた“菩提樹”へ移動する。
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塔を時計周りに歩くと、側面の壁一杯、仰ぎ見る高さに石仏が並ぶ。
石仏は夫々、左右の石柱に挟まれた御堂の中で、鎮座されている。
細かな半肉彫りの石仏は皆、巡拝者によって丁寧に金箔が貼られ、
首からは、オレンジ、黄、白の花を通した、レイが掛けられている。
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その石仏の前で多くの人々が、立っては座り、膝と額を地面につけ
両手の平を上にあげる、五体投地を繰り返し、祈りを捧げていた.
参拝の列は途切れることなく続き、さらに、その流れを囲むように
チベット僧と思われる集団が座り、経本を広げてお経を唱えている。
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人混みに揉まれ、大塔の裏へ進むと、中央に石柵で囲まれた大樹
が現れ、その周囲をさらに多くの人々が座り、祈りを捧げていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1663724222941-kJV1BG7BXv.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1663724227077-EK3EZ4iRTt.jpg)
大樹は伸びやかに枝を伸ばし、ぐるりと三方から響く、祈りの声を、
聞き入れるかのように、サラサラ、陽光に葉を輝かせ揺れている。
この大樹こそ、釈尊(ゴーダマ・シッダルータ)が、瞑想して“悟り”
を開いた菩提樹である。と、言いたいが、実は、当時の樹ではない。
初代の樹は、6世紀初めに起こった、廃仏の戦火の中で消失し、
この樹は1880年・ブッダガヤ復興工事の時に、移植されたものだ。
菩提樹は生命力が強く、挿し木でも他の場所に育つと云う。
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アショカ王の時代、仏教をスリランカに広める為、初代・菩提樹から
移植されて、新たな場所に、2代目が誕生した。
その菩提樹は、最古の移植された樹として、残っているらしいが、
今、ブッダガヤに立つのは、その2代目から、さらに別れ育った樹で、
正に、菩提樹界の3代目“ソウル・ブラザーズ”なのである。※
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ところで、菩提樹の豊かな枝葉の下に、置かれた「金剛宝座」だが、
ここで釈尊が瞑想して、悟りを開いたと云われるが、石の台は実際は、
紀元前2、3世紀に造られたものである。
この宝座の周りには、高い石囲いがされて、鍵のかけられた門に、
門番まで立っている。が、以前は、ここまで物々しくは無かったようだ。
何でも、日本の新興宗教で、幾つも、大きな事件をおこして拘留中の、
あの尊師がここに来て、宝座によじ登り、引き摺り降ろされると云う
ハプニングがあってから、用心して、造られたらしい。
なんとも残念で、恥ずかしい話である。
この後、我々は、釈尊(ブッダ)が沐浴をしたとされる、蓮華の池を見る。
大きな人造の池で、蓮華の咲く頃は素晴らしいようだが、今はただの
四角い水溜りだ。普段は洗濯場でもあり、水も綺麗でないらしい。
![](https://assets.st-note.com/img/1663724305581-hW1Ywr8i9H.jpg)
中央に、釈尊が悟りを開いた後、7日間の禅定をされた時に、暴風が
吹き続けていたのを守ったとされる、ムチリンダ竜王と釈尊(ブッダ)
の像が飾られていた。なんだか、テーマパークのようである。
その後、ぐるりと大塔を大きく外周りして、最初のゲートまで戻り、
かくして、仏教最高の聖地とされる、「ブッダガヤ」の見学は終った。
だが、自分としては、ブッダガヤと菩提樹について、勝手に抱いていた
イメージがあり、それと異なっていた為か、少し違和感が残った。
今まで見てきた大自然の中の聖地に比べ、街の真中にあった為か?
世界遺産とはいえ、あまりに、整備され過ぎている為か?
いや、やはり、釈尊が菩提樹の下で、悟りを開いた瞬間のイメージが
手塚治虫の漫画「ブッダ」で創られてしまった。からかも、しれない。
あの作品は過去、二度、熟読して、インドに来る直前もおさらいしてる。
手塚ワールドの強烈な副作用が、ここに来て、現れてしまったようだ。
良くも悪しくも、漫画で育った自分としては、如何ともしがたい事で、
とりあえず、未消化で、混乱した、アタマをふりふり、ゲートを出た。
![](https://assets.st-note.com/img/1663724345765-QyoNSQlzvf.jpg)
インド仏跡巡礼(30)へ、続く
※菩提樹→実は4代目とか6代目とか諸説あり、はっきり解りません。
(2015年1月5日 記)