情報社会を生き抜くための本5「第三の波」(アルビン・トフラー)
アルビン・トフラーは,『第三の波』で情報革命によるポスト産業化社会の到来を宣言した。マスメディアは崩壊しローカルなメディアが普及していくだろうと予測する。
その例として大阪生駒市で実験的に行われていたCATVを利用した双方向映像配信実験(Hi-OVIS実験)の例を紹介している。コンピュータを光ケーブルで接続し双方向での通信やコンテンツの配信を行う情報サービスである。非マスに細分化されたグループ同士が,互いに多量のイメージを交換し合うことで人々の意見が規格的でなくなり,個々の人間は,矛盾に満ちた関連ないイメージの断片に包囲され,集中攻撃を受け,古い考えに揺さぶられるだろうと予言している。予言通りにSNSがマスメディアを駆逐し,個々の人間が情報のもつ危険性にさらされる時代になった。
アルビン・トフラーはアメリカの未来学者。1980年に執筆した「第三の波」の中で情報社会の到来を予測した。人類はこれまで2回の大変革(波)をこえてきた。1つ目の波で農耕社会を築いた。2つ目の波は産業社会である。そして第3の波としてコンピュータによる情報社会がやってきて,家庭生活から政治経済の構造まで変えようとしているという趣旨だ。デジタル革命や技術的特異点も予測している。
特に注目すべきは、これからの時代は通信による共同体が形成されるという予測だ。人間関係をいっそう間接的にするというネガティブな発想ではなく、家庭や地域社会のきずなを深めるとポジティブにとらえている。コンピュータと通信機器の発達が地域共同体を作り出す大きな役割を担うとしている。またコミュニケーション革命によって、一人一人が自己像を複雑にしていく。より個人的になっていくと考えている。
政治や社会構造から人々の生活まで網羅的に未来予測している本だが、今読み返してみると荒唐無稽のように思えてくる内容もある。しかし、この時代にバードアイの視点で(未来)社会を考えた本としては貴重だ。
昭和57年に発行された中公文庫は分厚くて、なかなか読み進めるのに苦労した覚えがある。今見直すと、ところどころに鉛筆で線が引かれている。「第二の波は科学技術の没落である」と書かれている文にも線が引かれている。なんのために引いたのか、自分でもわからない。
さて、第三の波から第四の波へとうつるとするか。