情報社会を生き抜くための本44「ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?〜不便益という発想」(川上浩司)
川上浩司さんの不便益の本、三冊目の紹介。異様に長いタイトルには、ある会社でのエピソードがあり、このような長いタイトルの「不便益」を表すためのものとまえがきにある。この本では、さまざまな不便益のエピソードが展開される。筆者によれば「不便益」浴を楽しむということだ。
筆者は「弱いロボット」を推奨する。掃除の得意なロボットではなく、ゴミを見つけても拾わないで、ゴミの周りをうろうろして、人が拾ってくれるのを促すロボットだ。
セル生産方式を例として紹介している。ベルトコンベアを使った流れ作業によるライン生産方式と対比されるセル生産方式は、少人数のチームで製品を最後まで組み立てる。ライン生産方式は、次第にダルになり、効率がさがっていく。セル生産方式は、最初は効率的でないが、次第にスキルの向上やモチベーションが寄与して効率が上がっていく。複雑な工程という不便さを克服していく達成感が重要なキーになる。(これは、ドラッカーの経営学の本にも紹介されていたな)
あえてネガティブファクターを用いて、人々の日常的な知的活層を支援する技術の紹介もおもしろい。「ときどき偽の(実在しない)漢字が混入するワープロ」「微小遅延聴覚フォードバックのあるドラム演奏練習システム」「ときどき隣の音がでる鍵盤のあるピアノ」「掴むと自分の皿が閉じてしまうトング」など、クセモノぞろいだ。
固い発想を砕くにはグッドな本である。