立呑み カドクラ
この立ち飲み屋では毎度行儀よく、入口前で店員さんに気づいてもらえるまで待つ。
そして、こちらにどうぞ、と案内される壁際のカウンターや相席の丸テーブルに着くというのを自分に課したルールにしているのだけれど、待っているその横をスタッフの案内などおかまいなしにずかずかと割り込んで入店し、勝手にカウンターやテーブル席を占領する輩が少なからずいる。
どこの町にも見られる傍若無人の若者たちだけというわけでもなくて、いい年をしたオッサンまでそういう事をするのを見るにつけ、世も末だなぁと。
こういうマナーの悪い客は、上野駅の改札でSuicaが反応しなくて後ろの客に舌打ちされたり、エスカレーターで財布を落としたり、階段でつまずいたり、ホーム下の通路で低い天井に頭を打ったり、13番ホームのトイレでセクシャリティにおけるパラダイムシフト的恐怖体験をすればいいのに。
などと思いながらファースト・オーダーを取りに来てくれるのをおとなしく待つ。
文字通りキャッシュオンデリバリーの立ち呑み屋さんなので、最初は飲み物を注文し、千円札を用意して待ち構えるのが流儀。
上野から御徒町にかけては瓶ビールがとても安いので、ここで飲むのに慣れてしまうと、名古屋なんかの大瓶がとてつもなく高く感じてしまうのだ。
千円札を出すと前掛けのポケットからおつりを素早く返してくれる。この小銭をテーブルの上に並べておいて、最初に決めておいた分のお金が無くなったらおとなしく帰る、というのがキャッシュオンの作法。
飲みすぎることもないし、持ち合わせが足りなくなって焦ることもない。素晴らしく洗練されたシステムではないかと。
そういうわけで、名物のミルフィーユ的に重なったハムカツである。これにホッピーのセット。
カドクラは母体の経営は焼肉屋さんなので、串のお肉も、その値段からは想像もつかないようなクオリティのものが出てきて驚く。
そして更に鉄板料理。もちろんモツ、牛すじの煮込みをいただくのがルーチン。
コロナ禍で、いわゆる「新しい生活様式」なるものにシフトした日本だけれど、当然飲み屋の様式もWITHコロナで変化していくことは避けられないようで。
このお店も、注文方法をキャッシュオンデリバリーから変更してしまったと伝え聞いた。
言いしれぬ寂しさを感じるが、せめて良い時代、平和だった頃の店の有り様を記憶に残しておきたい。