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発想の回廊を探す旅

(日本創造学会の)理事の石井力重です。「石井さん、各地をふらふらしてますよね、どんな仕事なんですか?」とよく聞かれます。私はアイデアプラントの代表として、各地の企業さんの創造支援をしながら旅仕事をしているのですが、その旅の中で、まるで「発想の回廊」を探しているような心持ちになることがあります。今回はその「発想の回廊」について少しお話しさせてください。

昔、ある人が酒席でこんな話をしてくれました。「『発想の回廊』という場所があるらしい。そこを歩いて巡ると、アイデアが湧いてくる回廊だそうだ。」

彼は、生態信号を利用して植物にSNSの文章を書かせるなど、才気あふれる人物です。その言葉に私は強く惹かれ、すぐに調べてみたのですが、どれだけ探してもそれらしい情報は見つかりませんでした。

数年後、再び彼に会いその話題を持ち出すと、彼自身は「発想の回廊」という単語も、それを私に話してくれたこともすっかり忘れていたのです。こうして出典の辿れないコンセプトだけが、まるで幻のように宙に浮いたまま残されました。

それでも私は、この「発想の回廊」という考えに強く魅了され、「発想の回廊を探す旅」が私の旅仕事のサブテーマの一つになっています。「具体的な情報もないのに?」と思われるかもしれません。確かにそうです。
しかし、私は、人それぞれにとっての「発想の回廊」があるのではないかと考えています。例えば、「哲学の道」はある哲人にとってはそのような場所だったでしょうし、ある人は「川崎駅のある階段をダッシュで上り、隣のホームへ下ると、ふっとアイデアが湧く」と言います。

そこで提案です。旅雑誌のようなことを言い出しますが、あなたにとっての「発想の回廊」を探す旅に出てみませんか?「移動する距離と発想の量は比例する」とは、古今東西、多くの人々が述べてきました。

しかし、旅に出るきっかけがないとなかなか行動に移せないものです。そこで、出張があった際には、その場所から電車一本で行け、観光情報がほとんどない町を探してみるのはいかがでしょう?駅を出る。予想通り何もない。「観光に来たの?」と不思議な顔をされる。路地に入る。無名の記念館に足を踏み入れてみる。町外れまで歩いてみると、都会では見られない「町の終わりの先にある風景」が広がっている。
回廊という形をしていなくても、あなたにとっての「発想の回廊」的な場所が見つかるかもしれません。

少し抽象的すぎるので、私が旅の中で「ここを見た人が『発想の回廊』だと感じたのではないだろうか」と直感した場所をいくつか挙げておきます。

  • 永平寺(福井県)

  • 大石林山(沖縄県)

  • 養老天命反転地(岐阜県)

  • 室生山上公園芸術の森(奈良県)

  • 常滑やきもの散歩道(愛知県)

  • 清澄庭園(東京都)

  • 大塚国際美術館(徳島県)

これらの場所の魅力をあまり説明すると、本の結末を明かすようなものになるので控えますが、少なくとも私にとっては、アイデアに行き詰まった時にふらりと訪れたくなる場所です。

「発想の回廊って、もしかして...」と感じた場所やアイデアがある方は、ぜひ教えてください。もし「全国発想の回廊マップ」ができたら、きっと面白いものになるでしょう。次の旅では、あなた自身の「発想の回廊」を探しに出かけてみてください。新たなアイデアが、きっと湧いてくるはずです。

 

本原稿は、日本創造学会のニューズレターに寄稿した原稿を一部修正したものです。

掲載紙:Japan Creativity Society(日本創造学会)NEWSLETTER 2024.10.18 No3


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