韓国人に引き算の美学が伝わらないのは「韓国式トースト」が美味しいせいだ
韓国人の同僚になんど説明しても伝わりにくいのが、引き算の美学だ。
「こんなに大量の文章を一気に詰め込んだって、誰も読まないよ。」
「全部ド派手にしちゃったら、目立たせたいところが目立たないよ。」
そう意見しても、ぜんぜん伝わらない。
特に上司やクライアントが足し算しかできない韓国人の場合は、もうめちゃくちゃだ。(※愚痴じゃないです)
悪いこと言わない。引き算しようぜ、引き算。
でも、わかってる。韓国人に引き算の美学が伝わらないのは、韓国人のせいじゃない。
「韓国式トースト」が美味しいせいだ。
「韓国式トースト」は、おいしい
「韓国式トースト」をはじめて食べたのは、韓国にはじめて足を踏み入れた10年以上前のこと。
韓国ソウルの地下鉄の駅には、よくおばちゃんがひとりで切り盛りする、昔ながらのトースト屋台がある。
「トースト1つ」
とオーダーすると、おばちゃんが
「はいよー」
と答えて、トーストを焼いてくれるのだ。
韓国の一般的な食パンは、日本のそれよりひとまわり小さい。
真っ黒な四角い鉄板に四角いバターで、クレヨンのようにぐるぐると円を書いて、そこに2枚の食パンを投入。
じゅじゅじゅという、バターが溶けた音。
頭の中の時計を止めるほどの、クリーミーで濃厚なバターの香り。
両面にキレイな焼き色をつけたら、おばちゃんが「どれ?」ときいてくる。
「ミックス」
わたしがそう答えると、おばちゃんは笑顔で焼き色がついた食パンを鉄板から拾い上げた。「ミックス」とは、野菜とたまごとハムが全部入った、お店の定番メニューだ。
韓国で「トースト」と言えば、2枚の食パンの間に具をはさむ、サンドイッチタイプが一般的。
一方に、タマゴ、ハム、チーズ、キャベツをのせて、ケチャップとマヨネーズをたっぷりのせ、こんもり大きな山を作る。
そして、上にかぶせる方の食パンに、お砂糖をたっぷり振る。
もう、じょりじょりだ。
この2枚を合体させてはじめて完成する「韓国式トースト」は、究極のあまじょっぱ系。
最初は、食事系のサンドイッチにお砂糖を振るなんて…と違和感しかなかったが、いつの日かお砂糖が入っていないサンドイッチは物足りなくなるぐらい、とにかくハマった。
「韓国式トースト」は、おいしい。
引き算の美学なんてあったもんじゃないけど、やっぱり、おいしい。
「韓国式トースト」と「日本式トースト」の違い
例えるならば、「韓国式トースト」は足し算で、「日本式トースト」は引き算だ。
日本人は食事系のトーストに、さらにお砂糖を足し算しない。こだわるとすれば、上に乗せる具材よりも、原材料や製法だ。
小麦粉、マーガリン、塩、砂糖、酵母の質にこだわった高級食パンが定期的にブームになったり、低温で長時間発酵させた生地を蒸気で焼き上げるスチームブレッドが人気になるのは、やっぱり日本っぽい。
日本の変態的にも見える細部へのこだわりと引き算の美学は、今に始まったものではないのだ。
***
「古池や蛙飛び込む池の音」
これは、江戸時代に活躍した俳人、松尾芭蕉の一句。
耳がキーンと鳴るような静寂さ。この引き算があるからこそ、たった1匹でも波紋がすごい。もしこの句が韓国で生まれていたら、カエルは100匹ぐらい大量投入され、カエルは大合唱を始めていただろう。
日本庭園の様式「枯山水」も引き算の美学の例として有名だ。
水をいっさい利用せず、石や砂、地形を利用して水の流れを表現した日本の代表的な庭園の形式で、あえて水を抜くことで、見ている人の心により強く水の力を呼び起こす。
日本人はあえて引いて、強調させる引き算が好きだ。
日本人のほうが変態的だと言われれば、それまで。
でも、とはいえ、こんなに大量の文章を一気に詰め込んだって、誰も読まない。デザインだって、キラキラしてりゃいいってもんじゃない。日本人が顧客なら、なおさらだ。
伝われ、引き算の美学。
でも、やっぱり「韓国式トースト」は、おいしい。
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