卒業式を子供が創る(1)
卒業式の時期を迎えると、以前に実践した「子供と創る『卒業』」単元のことが思い出される。
今回と次回の二回に渡ってお伝えしたい。
「理念」と「方法論」に分けて説明するのがいいように思う。
この単元を開発する発想の原点は、「卒業していく主役は子供たちなのだから、『卒業するということ』の意味を子供たち自身が追求し、それを自分たちの手で実現していくことは、当然のことだ」とする考えであった。
これを、実践初期の頃の言葉で表現すると「権限委譲」がキー概念であったが、現在の教育において求められている「未来を生きる力」・「現代的な課題に取り組む人間の育成」とその目指す射程は全く変わらない。
こうした理念を学校全体で共有していくことのハードルは、当時は今以上に高かった。
子供たちの創る「卒業」の中心的な「学習活動」は、卒業証書授与式(以下、「卒業式」)であったが、職員会議等において、「卒業式は学校行事であるのだから、子供が『創る』なんておかしい」という声が聞かれることも少なくなかった。
そこで、子供たちの作った「卒業式実行計画案」の提案文書を職員会議に提出するんだして、ねらいと実行への熱い思い、つまり「本気度」を示して職員室の空気を変える工夫が必要だった。
同じ志をもった仲間の中には、子供たちを職員会議に出席させて提案させるという荒技を行う者もいた。
人によっては強引と感じるかもしれないようなこれらの「方略」の背景には、「卒業」単元学習に至るまでに、子供たちとともに学習や生活を創り出してきた日々の実践からの手応えがあった。
学級での話し合い活動や清掃、係活動、児童会・委員会活動などの特別活動はもちろん、学習や運動会、集団宿泊学習、修学旅行などの学校生活のかなりの部分を子供の目的意識、発想、計画を中心に据えて創ってくることが子供の向上的な変容をもたらすことへの確かな実感があったのである。
これらの創造的実践の方法原理は、「実行委員会制度」であった。
それは、例えば「係活動」を「実行委員会」と呼称するといった形式的な意味ではない。当該の活動に対する意欲を最大の原動力にし、さらに参加基準とすることによって集まったメンバーたちが自主的に活動・運営していく組織を母体とするという方法論的な意味での「実行委員会制度」である。
この「卒業」単元学習も、もちろん同様に「実行委員会制度」によって進められた。
設立された実行委員会は年度によって多少の違いはあったが、以下がその主なものであった。「卒業」単元において子供たちが取り組んだ学習活動の内容を概観していただけることと思う。
◯卒業アルバム実行委員会
◯卒業文集実行委員会
◯卒業制作実行委員会
◯卒業愛校活動実行委員会
◯卒業式実行委員会
*「卒業式実行委員会」は、「目的・式次第」を決定後、さらに概ね次の小実行委員会に分かれた。
・会場小実行委員会
・作法小実行委員会
・音楽、合唱小実行委員会
・送別の言葉小実行委員会
・卒業のしおり小実行委員会
これらの実行委員会は、原案の作成と議決された計画の具体的な実行の中心を担った。場面によっては指導的な役割も果たした。
議決の場は、以下の3つであった。
・実行委員会での話合い
・学級話合い活動
・学年集会
中でも、「学年集会」が最高の議決機関として位置付けられ、六年生の総意による決定が何よりも尊重された。
具体的な活動内容については、次回にお伝えしたい。