2年生活科 子供が創る探究型<野菜の栽培>「野菜を育てた~い!」1⃣
生活科ほど、子供を学校に適応させるのではなく、子供が学校で学びを創造するという子供観・教育観を具現化しやすい教科はありません。
ところが数年前、その生活科において教科書通りに進めようとする教師の多いことを知り、愕然した記憶があります。
そこで、「子供が創る探究型の生活科」の実践を今回と次回に分けてお伝えします。
単元名は、「やさいたんけん ~なつやさいづくりにちょうせん~」です。
今回は単元展開の過程をお伝えし、次回は活動場面での子供たちの様子を紹介する予定です。
1 「なつやさいをそだてる」ことを決める
まず、これが決まらないと学習活動がスタートしません。
子供たちと次のような活動をして、ほぼ全員が「やりたい!」「育てたい!」となって、活動開始です。(とは言っても、以下のような活動そのものが既に「学び」ですが)。
ちなみに、活動名の「やさいたんけん」とは、前単元で「学校たんけん(1年生に校内を案内して回りました)」をしたことを受けて、「今度は野菜作りに挑戦」という意味で名付けられました。
2 栽培したい野菜を決める
上記の調べた結果を活かし、栽培したい野菜を決めますが、「お金を払うのは家の人」なので、「家の人と相談する」「家の人にお願い・説得をする」ことが必要になることを教えました。
「相談」「お願い・説得」に自信がないという声を受けて、学校で練習しました。
3 苗を自分で買う
自分で栽培するのですから、苗も自分で買わせました。
地域の園芸店に学級・学年全員で買いに行く方法もありましたが、混雑を避けるなどの理由で、園芸店の方に学校に来ていただき、「小さなお店」を「開き」、そこで「買い物体験」をさせました。
事前に、「買い物」の仕方を練習しました。
「買い物」の後は、育て方を教えてもらい、苗を植えました。
4 図工で「こんな野菜ができるといいな」というテーマで絵を描く
数カ月後に対して夢を膨らませたのです。
5 野菜の観察をする
「自分の野菜の自慢をしたい」「自分の野菜のことをみんなに教えてあげたい」という思いを受けて、「野菜の何を教えてあげたいか」を考えさせながら観察しました。
「葉の大きさ」「背たけ」「色」「葉の数」など、子供たちは成長の様子が分かる観点を探しながら観察して、発表しました。理科の植物の観察につながる学習です。
ちなみに、私は、安易にICT端末のカメラで撮影して記録することには、生活科でも理科でも反対です。撮影したらそれで「終わり」という子もいるからです。葉の手ざわりや匂いなど、五感を使って記録をすることそのものに意味があると考えます。カメラ記録は、あくまでも備忘録であり、確認用です。
6 観察結果を振り返り、もっと大きく育てる方法を考える
子供たちと「今の育ち具合」や「困っていること」を出し合った結果、「『野菜の先生』に教えてもらおう」ということになりました。
家の人で「野菜の先生」になってくれる人はいないか探し、交渉しました。
最終的には、園芸店の方に再度来ていただくことになりました。
7 園芸店の方=「野菜の先生」に教えていただきたいことを考える
教えていただきたいことを詳しく考えました。同じ野菜を育てている子と一緒に考え合ったり、違う野菜の子の困っていることを参考にしたりしました。「対話的な学び」です。
8 園芸店の方=「野菜の先生」に教えていただく
教えていただいたことを基に、追肥をしたり、栽培の仕方を工夫したりしました。
害虫を寄せ付けない方法も取りました。
季節・気候の変化と水やりの量にも目を向けさせました。
9 観察➡野菜の先生・家の人や図鑑で調べる➡栽培の仕方の確認・見直し・改良の繰り返し
変化に着目させることを大切にしました。野菜の生育そのものの変化と育て方との関連性による変化に分けて捉えさせようとしました。
10 野菜の実った子から収穫し家庭で食べる
食べた感想は、学校で発表です。
11 振り返り
野菜を栽培して「分かったこと」「思ったこと」を出し合いました。
育てた野菜になって、自分に何と言っているかを考えさせることもしました。例えば、野菜の言葉として、「ありがとう」と言わせることで、達成感や自己有能感を育みたかったからです。
以上、5か月以上に渡る活動の流れですので、かなり省いたところがありますが、展開の概要はお伝えできたと思います。次回は、時々の子供たちの様子を示します。
なお、今、「5か月以上に渡る活動」と書きましたが、もちろん一定期間を空けながら続けた活動です。「まちたんけん」、「なつたんけん」、「いきものたんけん」を進めていく途中に、「点」として実施していたカリキュラムです。