レバノン映画「親愛なる7人の他人」(「おとなの事情」リメイク)
主演、( )内は役名:モナ・ザキ(マリアム)、イヤド・ナサール(シェリフ)、アデル・カラム(ジアッド)、ディアマンド・アブー・アブード(ジャナ)、フアド・ヤミーン(ラビ)、ジョルジュ・ハッバス(ワリード)、ナディーン・ラバキー(メイ)
2022年 99分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★☆
(写真=https://www.almasryalyoum.com/より)
待ってました〜、アラブリメイク!
ここのところ、ネトフリでは何も観ていないので、新作などもほとんどチェックしていなくて、気が付かなかったが、他のnoterさんの記事で発覚!
ギネスにも載っているイタリア映画のリメイクである↓
本作はアラブ首長国連邦ドバイ、エジプトとの協力で制作されたレバノン映画である。アジアの作品を中心としている私のnoteで、レバノンの作品を取り上げるのは異例であるが、上記の記事にも書いているよう、アジア圏でのリメイクが作られている関連作品なので、例外的に記事を書くことにした。
月食の晩のディナー会
舞台はウィルとメイの家。ベイルートと思われるが、閑静な場所にある一軒家。
以下、オリジナルや中韓リメイク同様の順番で登場人物を紹介。
(1)整形外科医のワリード(ウィル)と心理カウンセラーのメイ。17歳の娘ソフィがいる。ソフィは反抗期、彼氏がいるが、母親との仲が険悪。ウィルが料理担当でキッベ、羊肉のローストなどを作る。
(2)シェリフとマリアム。レバノンに移住してきたエジプト人夫婦。小さい子供が二人いるが、今夜は同居しているシェリフの母に子供を預け参加。自家製ウサギ肉入りムルキーヤ(モロヘイヤスープ)を持参。
(3)実業家のジアッドと獣医のジャナ。新婚ホヤホヤ。そろそろ子供が欲しいところ。40ドルのフランス製オーガニックワインを持っていく。
(4)求職中の教師ラビ。本当は新しい恋人ラシャを連れてくるはずだったが、急に体調が悪くなって来られないため、一人で参加。ワインボトルを二本持参。
赤ワインで乾杯し、近況を話し合いながら、テーブルに料理を並べていく。
皆が座ったところで、メイがスマホ開示ゲームを提案し、全員が全員、渋々ながらも参加することになり、スマホをテーブルの上に出し、ディナーが始まる。
あとはイタリアの原作と同じ流れとなる。
原作に忠実すぎるほどのリメイク
上記の人物紹介からもわかるように、名前はもちろん違うが、職業などの設定は原作に忠実。しかも、ビジュアル的というか雰囲気、イメージ的にも、かなりそっくりさんを出してきていて驚いた。
そしてそう、原作に忠実ということは。。。この記事を読んでくださっている方は、原作およびどこかの国のリメイクを視聴済み、またはあらすじを知っているという前提で書くと、スマホ開示ゲーム中に男性陣の一人がゲイであることが暴露される。そしてそれも本作では忠実に再現されているのだ。
イスラム教では同性愛というのは禁じられているため、アラブ圏リメイクが作られると聞いた時、どのようになるかととても興味を持っていた。中国版でも同性愛者の設定が無くなっているように、アラブ版もそうなると思っていたのだ。
しかし、まずレバノンと聞いた時点でありうるのかと考え直した次第である。
アラブ圏ではイスラム教がメインの宗教であるが、キリスト教徒も多い。レバノンはその中でも、もともとキリスト教の中心地として盛んになった地域でもあるので、「国民の54%がイスラム教、40.4%がキリスト教」(Wikipediaより)と、かなりキリスト教徒が多い国だと知って驚いた。
なので、同性愛の要素や、そして女性が普通にワインを飲んでいるシーンを取り入れたりするのは大丈夫だったようだ。17歳の娘も友達と出かけてしまって、帰ってこないし。
エジプトでは上映禁止を求める声も
メインキャストの一人、モナ・ザキがエジプト人ということもあるからか、本作はエジプトでもかなり話題になったようであった。エジプトもキリスト教徒が一定数いる国ではあるが、やはり同性愛の要素は受け入れられないと批判があったようで、とある著名な弁護士は、「同性愛を推進し、伝統的な家族の価値観を破壊しようとしている作品」だとして、本作の共同プロデューサーを訴えるとまで言っているらしい。
しかし、本作はNetflixオリジナル作品であり、映画館上映目的で制作されたものではない。それにアラブ圏のみでなく、日本やアメリカでも、Netflixにサブスク登録していなければ視聴することはできない。サブスクに登録していても、観たくなければ観なければいいのだ。
また、エジプトではワイワイ騒いでいるものの、原作のイタリア版はなんとカイロ映画祭で上映されたそうである。
その他の中東や北アフリカではあまり騒ぎになっていないようであるが、今後同性愛の要素を持つ作品がアラブ圏でどのように取り扱われていくようになるかは、興味のあるところである。(以上こちらの記事などを参考。)
どのリメイクがいいか?
本作では料理がとっても美味しそうであった。レバノンには残念ながらまだ行ったことがないが、ヨーロッパ各国で旅行した際には、レバノン料理は何度も食べに行ったことがあり、大好きなのである。あの韓国のお惣菜の様に何皿も出てくる前菜(なんていう名前だったか?)をまた食べたいし、キッベ(レバノンのミートボール)も食べたい!というわけで、飯テロ的にはこのリメイクが一番良かった。
ただ、本作と韓国版は、あまりにも原作に忠実なので、やはり原作の方がいいということになってしまう。
というわけで、現時点では自分が観た中では、オリジナル設定を取り入れた中国リメイクがベストかな。
なんと、2021年だけで日本、ルーマニア、オランダ、イスラエル、チェコ・スロバキアと5本ものリメイクが新規公開されたようである!ギネス更新中のことだろう。
こちらが予告編。
韓国リメイクはこちら↓ オリジナルとの比較をしています。
中国リメイクはこちら↓ オリジナルとの比較をしています。