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韓国BLドラマ「大都市の愛し方」

主演:ナム・ユンス、チン・ホウン、クォン・ヒョク、ナ・ヒョヌ、キム・ウォンジュン、イ・スギョン、オ・ヒョンギョン
2024年 全8話(1話約50分)
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=TVINGより)

今年視聴したドラマ、すべて吹っ飛んだ!
韓国は映画だとLGBTをテーマにしたものはいいものが多いが、ここ数年出ている短いBLドラマのシリーズは、商業BLとはわかっていても、もうちょっとちゃんとしたの作れない?なんて思う作品が多かった。

しかし、本作はそれらとは一線を画していた。
予告編をめぐって色々と騒動があったようで、ちょっと気になったので観始めたら、ほぼ一気見!

愛を探し続けるゲイの青年の10年間

ソウルに住むナム・ユンス演じるコ・ヨンはゲイの青年。カミングアウトはしておらず、母親からは病気だと思われており、実家にも帰る気にならない。
週末の夜は気の置けない仲間とクラブで飲んで踊り明かし、時にはそこで知り合った男性と付き合ったりして過ごしている。

2話ごとに4つの時期、ストーリーに分かれており、それぞれの時期に付き合った男性とのエピソードをベースにしながら、ヨンの大学生時代からの約10年間が、描かれていく。

1話〜2話 ミエ、そしてナムギュ

ヨンの大学生時代、ある晩、ゲイバーの外で男性とキスしているところを、イ・スギョン演じる同級生のミエに見られてしまう。彼女は男性とのセックス依存症で、大学では密かに「買春婦」と呼ばれていた。
彼女と気が合い、一緒に住み始めるヨン。同時期、アルバイトで知り合った、クォン・ヒョク演じるカメラマンのナムギュと付き合い始めるが。。。

二人は無二の親友に


3話〜4話 母親、そしてヨンス

ミエが結婚してしまい、寂しくなったヨンは哲学講座に通ってみる。そこで知り合ったのがナ・ヒョヌ演じるヨンス。彼のことが気になるものの、ゲイかどうかわからない。
同時期、母親が末期癌となり、介護をしながらのヨンスとの関係が描かれていく。

付き合うものの、食べ物の好みがあまり合わない二人


5話〜6話 ギュホ

ヨンスに振られ、母親が亡くなり、一人ぼっちになったヨン。葬儀の後に寄ったクラブで、チン・ホウン演じるバーテンダーのギュホと知り合う。付き合い始め、初めてヨンは彼と同棲を始める。

ヨンは初めて彼氏と同棲することで色々戸惑う


7話〜8話 “ハビービ” 、でも結局は一人

ギュホが上海に行ってしまい、また一人になったヨン。ある日マッチングアプリで、キム・ウォンジュン演じる日本人のビジネスマン”ハビービ”と出会う。彼とバンコクに行くものの、思い出すのはかつてここに一緒に来たギュホのことばかり。

それぞれに孤独な二人


都会で一人で生きていくには

本作は『大都会の愛し方』というパク・サンヨンの小説が原作。未読だが、タイトルの作品をはじめ、4作を収めた本で、それぞれの物語が、ドラマで4つのストーリーになっているらしい。
そして監督もそれぞれ違うようだが、違和感なく、とてもいいストーリーに仕上がっていた。

私は記事のタイトルに「BL」といれているが、最初はBL枠に入れるか、それともLGBTなのか、迷った。Redditなどをはじめディスカッショングループでも、大議論大会になっている。

カテゴリーとして「BL」にしたのは、やはり劇中には毎回男性同士のキスシーン、NCシーンがふんだんに出てくるため、そういうのに興味のない方や慣れていない方への注意を喚起するためでもある(日本人ではあまりいないが、海外では宗教上の理由で絶対に見たくないという人も多い)。

しかし、結局のところ、一人の青年が自分の恋愛を通して、「愛とは何か」を考えていく成長物語。広い都会で、さまざまな人と出会うものの、結局は自分はどうしたらいいのだろう、何を間違ったのだろう?そんな葛藤がとてもよく描かれていた。
これは何もゲイの青年に限ったことではないだろう。

原作小説の作家自身の自叙伝的な部分もあるようで、主人公のヨンも小説家になる。原作者が脚本も担当したようなので、ヨンの心の声のモノローグは、おそらく小説での言葉だろう。彼の考えや感じ方がとてもいい表現で言葉になっていた。と言っても、私は英語字幕で視聴したので、韓国語のニュアンスはわからない。私がいいと感じたのは、英訳が良かっただけなのかもしれないが(汗)。

視聴しながら、『腐女子、うっかりゲイに告る』を思い出していた。主人公の年齢層も違うし、つくりも異なるが、主人公のモノローグによる心の声の部分は結構共通点があったと思う(と言っても記憶も曖昧だけど、笑)。

音楽、そしてバンコクも良かった

劇中で使われていた曲も、少ないものの、原作者にとっては大切な思い出が関連しているのではないだろうか。私はK-POPは詳しくないので、全然知らない曲ばかりだったが、ヨンの彼氏たちの好きな古い韓国の歌謡曲や、クラブで男の子たちが一斉に踊るK-POPガールズグループの曲など、なかなか面白かった。韓国語がわかって、歌詞が理解できたら、より楽しめたのかもしれない。

そしてバンコク旅行。
タイドラマで様々なロケーションを見ているが、本作での観光客目線のバンコクも面白かった。私もバンコクは訪れているのだが、なんせ40年前なので、あまり覚えていないし(汗)、今行ってもゲイバーとかは行かないだろうし(笑)。


男性同士の性的描写や下ネタも多いので、苦手な人もいるかと思うが、ストーリーもキャストもとても良かったので、オススメはしたい。個人的にはおそらく今年のベストドラマの一本になったと思う。

ちなみに、同時期に同タイトルの映画版も出ている。こちらはキム・ゴウンとノ・サンヒョン主演で、原作小説の一作目『ジェヒ』のみの実写化のようである。本作での1・2話目に当たる。これも見てみたいかな。
それより原作もいつか読んでみようと思う。

こちらが削除されてない方の予告編。