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ベトナム映画「ソン・ランの響き」

主演:リエン・ビン・ファット、アイザック
2018年
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★☆
(写真=サイトMUBIより)

アジアBLドラマファンのグループで、ベトナム人の方からレビューとおすすめがあったこの作品、興味が湧いたので探したら、Amazon Primeでレンタルできたので視聴してみた(現時点でレンタル料100円!)。あらすじは公式サイトより。

80年代のサイゴン(現・ホーチミン市)。取り立て屋ユン(リエン・ベン・ファット演)は、ベトナムの伝統歌舞劇<カイルオン>の花形役者リン・フン(アイザック演)と出会う。ふたりは初めは反発し合っていたが、停電の夜ユンの家にリン・フンが泊まったのをきっかけに、心を通わせていく。実はユンはかつて民族楽器<ソン・ラン>の奏者を志した事があり、楽器を大切に持っていたのだった・・・。

ユンは劇団のオーナーの借金を取り立てに行き、衣装を燃やそうとして脅す。そこへ、借金を知らなかったリン・フンがやってきて、とりあえず自分の身につけている金目のものを渡し、公演が終わるまで待ってほしいとユンに頼む。仕方がないので、ユンはきちんとチケットを買い、劇を観ることにしたのであった。

ベトナムの大衆歌舞劇カイルオンと楽器ソン・ラン

見所はなんといっても、尺的にしっかり長く撮られている「カイルオン」という劇のシーンである。ベトナム南部で1930年代に流行したものだそうで、京劇をベースにしているが、音楽も微妙に違うし、楽器や歌の雰囲気もやはり違う。オーケストラ(と言えるのか?)も伝統楽器のみでなく、ドラムやエレキギターなども入っていて、なんだかモダン。一列に並んで演奏しているのであるが、もしかしたらスペースの関係かもしれないが、アラブ圏のテレビでよく見るような、おじさんたちが一列に並んで演奏する姿を思い出してしまった。
歌詞も翻訳が出ており、物語の一部となっている。
そして劇場。おそらくサイゴンにあるフランス植民地時代の建物なのだろうか。オペラ座のような雰囲気で、とてもよかった。

ちょっとリュート、琵琶のような弦楽器「ソン・ラン」を弾くユン、それに合わせて歌うリン・フンの歌の部分もこの作品のハイライトである。

BLなのか?

上記のようにBLファンのグループで紹介されていたが、レビューをしていた方も、また他のサイトでも「BLとかLGBT作品とカテゴリー化できない曖昧なもの」と感想を書いている人もいたが、私もこれは普通に”ベトナム映画”としたい。今流行りのBLものとは違い、このカイルオンとソン・ランというベトナム特有の文化、そして芸術への愛、家族愛というものがテーマになっていると感じたからである。
ただ、詳しくは公式サイトの解説にもあるが、「ソン・ラン」は「二人の男」という意味もあるそうなので、男性二人の淡い恋物語であることがほのめかされている。
また、Wikipediaによれば、元はプロデューサーから二人のラブシーンを入れるように要請があったらしいが、監督が断ったらしい。確かに、このストーリーにベッドシーンは要らない。

スーパーマリオみたいなビデオゲーム、缶や草履をおもちゃ代わりにして遊ぶ子供達、薄暗い路地、ラジオから流れる音など、80年代のノスタルジックの雰囲気も十分堪能できるが、撮影が行われたホーチミンの地区も実際にまだ昔のこんな雰囲気が残っているところらしい。
二人が食べていたフォーのようなのも美味しそうだったし、ストーリーのみならず、映像的にも美しいし、ベトナム文化を垣間見ることができる映画としてもオススメの作品である。

実はこの映画がオリジナル?

ユン役の彼は青木崇高に、リン・フン役の彼は塚本高史に、とそれぞれ日本のイケメン俳優たちにも似ていて、その点も気に入ったが、ちょっと待って。
先日視聴して書いた記事、韓国BLドラマ「You make me dance」は借金取りとダンサーという組み合わせで珍しいと思っていたが、もしかしてこちらの方がオリジナル?!
本作は公演が終わるまで、韓国ドラマもオーディションが終わるまでと、借金返済の期限が設定されているところも同じとか?!
残念ながら両作品の結末は全く違うが、殺伐とした職業の男が、美しく心に響くものに惹かれる過程を描いているのもとてもよかった。

こちらの方の記事でもより詳しく解説していらっしゃるので、是非合わせてどうぞ!

こちらが予告編。